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【食堂のおばちゃんの人生相談】46歳・会社員のお悩み

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.01.15 11:00 最終更新日:2021.01.17 11:09

「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!

 

【お悩み/鉄人さん(46)会社員】

 物忘れが激しくなり、上司や部下の名前はおろか、自分の携帯番号まで思い出せない。CT検査の結果は問題なかったが、検査を受けたことまで忘れそうで怖い(笑)。

 

 

【山口先生のお答え】

 鉄人さん、何も心配することはありません。記憶力は青年期から徐々に衰え始め、40歳を過ぎたら坂を転がり落ちるように、猛スピードで衰弱するものなのです。

 

 私なんか、嫌なことはすぐ忘れる主義なので、高校を卒業した時点で因数分解を忘れました。三角関数なんて、何のことだか意味不明です。職場を変わった途端に元同僚の名前を忘れました。ワープロに切り替えてから、漢字もどんどん書けなくなりました。

 

 そうそう、記憶力だけじゃなく、最近は理解力や判断力のスピードもてきめんに落ちました。某クイズ番組に出していただいたときは、早押しだったので全然ダメでした。目で見たものを脳が認識するまで、時間が掛かるのです。

 

 かのビートたけしさんも「年を取ったら反射神経が衰えてきたから、もう漫才は出来ない。これから俺の出来るお笑いジャンルは落語だ」と仰っていたくらいです。でも、それで良いのです。だって、それでちゃんと生活出来るんだもの。鉄人さんだって、なんの不自由もないでしょう?

 

 反対に、どんどん記憶力が良くなったら、頭がパンクしちゃうんじゃないですか? きっと、私たちの脳みそもメモリー許容量が決まってるんですよ。生きてる途中でいっぱいになるから、新しいことを覚えるために、古い記憶は追い出されるんです。

 

 でも、追い出した記憶は必要なときに呼び戻せます。催眠療法なんて、そうでしょう? そして、古い記憶を片っ端から追い出すわけじゃありません。大事な記憶は残るんです。どんなに年を取っても、子供の頃の楽しい思い出や初恋の人を忘れないのは、それがその人の人生にとって大切な記憶だからです。

 

 だから鉄人さん、安心して、どんどん忘れて大丈夫ですよ。


やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中

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