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精神科医・樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」コロナ禍の「うつ」「自殺」を避けるには
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.02.08 06:00 最終更新日:2021.02.08 06:00
コロナ禍によるさまざまなストレスは、私たちのメンタルに深刻な影響を与えています。
2020年10月の自殺者数は2153人、前年同月比で約40%も増え、前月からは309人の増加。こんなニュースが出た2020年11月27日の時点での新型コロナウイルス感染症による死亡者数は2087人だったので、たった1カ月の自殺者数が、全コロナ死亡者数を上回ったのです。
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このニュースは、テレビ、新聞、雑誌、ネットニュースなどで、「日本の10月の自殺者、年間の新型コロナ死者上回る」「先月の自殺者 去年より40%増加 コロナの影響も」のような見出しでセンセーショナルに報道されました。
さて、その後11月の自殺者数はどうなったでしょう。この勢いで自殺者数が増えるとしたら、本当に危機的な事態になるのではないかと、精神科医の私としてはたいへん心配しながら、1カ月後の警察庁のデータ発表を待ちました。
そして、1カ月後に発表された自殺者数は……1798人。前月から355人(16.5%)減少しました。2019年6月以降で自殺者数が1800人を超えたのは2020年の7月からなので、6月までの水準に戻ったということになります。
前年同月比で「11.3%増」ですから、大きい数字ではあるものの、10月の「前年同月比40%増」と比べると、かなり下がったと言うべきでしょう。このニュースを、マスコミはどう報道するのか? 大きな関心を持ってメディアを注視していましたが、残念ながら一度も目にすることはありませんでした。
ネットで検索すると、これを取り上げているニュースが何件かはありましたが、いずれも「11月の自殺者1798人ー警察庁速報:5カ月連続で前年比増」のように、悲観的なイメージを連想させる見出しがつけられていました。
つまり、「爆発的に増えた自殺者が、減少に転じた」という事実を報じたメディアは、私の知る限り存在しなかったのです。これはメディアの無責任さの表われと言わざるを得ません。
■映像ニュースが精神に与える重大な影響
私たちは「悪いニュース」をたくさん見ると、気分が落ち込みます。「良いニュース」をたくさん見ると、気分が明るくなります。今のテレビのニュース番組は、7~8割は「悪いニュース」なので、見るほど気分は落ち込みます。
今回の「自殺者数の報道」からもわかるように、「良いニュース」は無視して、「悪いニュース」だけをセンセーショナルに報じるメディアは、私たちのメンタルを痛めつけ、「コロナ疲れ」「コロナうつ」の原因を作っている、と言っても過言ではないでしょう。
ある研究によると、「絵を使いながら口頭で説明」した場合、「口頭だけの説明」と比べて6.5倍記憶に残ることがわかりました。「視覚」を使うと、口頭だけで説明するのと比べ、何倍も記憶に残りやすい。つまり、それだけ精神に大きな影響を与えるということです。
たとえば、「玉突き事故で5名死亡」という記事を、ネットニュースで見た場合と、テレビのニュースで映像つきで見た場合とでは、後者のほうがより強く悲しい気持ちになるはずです。「文字だけのニュース」と比べて「映像のニュース」は、私たちに何倍もの大きな「心の傷」を与えているのです。
■テレビのニュースを見すぎない
「コロナ疲れ」「コロナうつ」の予防法を教えてほしいという質問が、私のところにたくさん来ます。それに対する回答のひとつが、「テレビは見ない」ということです。
コロナ関連のニュース、情報を報道する「ニュース番組」「情報番組」は、コロナの危険性を過度に煽るばかりで、仮にグッドニュースがあっても、めったに取り上げることはありません。昨今の、コロナ不安を煽りまくるテレビ番組を見ていれば、「コロナは怖い」と洗脳され、情報や現状を正しく判断することはできなくなります。
ニュースを見ないと不安を感じるという人でも、インターネットのニュースで十分だと思います。実際、私はテレビのニュースを見ず、ニュースはインターネットだけという生活を何年も続けていますが、困ることはまったくありません。
「お笑い番組」「ドラマ」「アニメ」などを気分転換に見るのはいいと思います。つまりビジュアルで「楽しい」体験をすれば、それは何倍も記憶に残るということ。あなたの気分を明るくするのに役立ちます。
コロナが不安だと、毎日ニュースや情報番組を見たくなりますが、それらを見るほどに不安は強まり、気分は「うつ」に偏っていく。コロナの不安を減らすどころか、より増やしている可能性が大きいのです。テレビのニュース、情報番組は見すぎないことです。