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精神科医・樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」コロナ禍の「うつ」「自殺」を避けるには
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.02.08 06:00 最終更新日:2021.02.08 06:00
■ストレスは3カ月後にあなたを苦しめる
自殺者数の推移に話を戻すと、昨年の緊急事態宣言以降増加傾向で推移して10月にピークを迎え、その後は減少に転じました(12月は、11月よりもさらに減少)。
では、10月にいったい、何が起きたのでしょうか?
10月の自殺者数の増加は、女性の自殺者数の増加が顕著であったため、「非正規雇用者の解雇」との関連を示唆する報道が多かったのですが、私は違うと思いました。失業者数は、10月以降大きな改善はないので、11月の自殺者数の急激な減少を説明できません。
私の予想では、4月、5月の「第1波」の緊急事態宣言による外出自粛、その後の「自粛警察」や「テレワーク」でのストレス、女性の場合は、保育所の休所や学校の休校にともない子供の世話のストレスが増えた、あるいは、テレワークで夫が常に家にいることでのストレス増。それらによる影響が「3~6カ月遅れで現われた」と考えています。
何か甚大なストレスにさらされると、私たちは精神的にダメージを受けて、「うつ」や「自殺」が起きる。これが世間の常識ですが、じつは間違っています。
人間は、短期間のストレスにはけっこう耐えられるのです。
たとえば、「決算」や「納期」前の1カ月は猛烈に忙しくなって、毎日、終電間際で帰宅する、という人もいるはず。その場合、1カ月で「うつ」や「自殺」が起きるかというと、ふつうは起きないのです。
しかし、そうした「猛烈なストレス」が3カ月、そして6カ月以上続くとどうなるでしょう。調子が悪くなる人、うつになる人も増えてくるはずです。
「うつ」というのは、脳科学的には、脳内物質・セロトニンの量が低下・枯渇して起こります。わかりやすく説明すると、私たちの脳はセロトニンの貯金を持っていて、それは1カ月で枯渇することはないけれども、3カ月を超えると不足に陥る。それが、「うつ」や「自殺」につながる。そんなイメージです。つまり、ストレス症状は時間差で現われるのです。
うつ病の患者さんに、「最近、何かストレスはありませんか」と質問しても、ほとんどの患者さんは驚くことに「ない」と答えます。今度は、「半年くらい前に、何かストレスはありませんでしたか?」と質問すると、「人事異動で配置換えがありました」とストレスになりそうな出来事を語りはじめます。
ストレス症状が出る直前の出来事であれば、原因との関連性に誰でも気づきますが、数カ月後や半年後など時間差で現われるために、なぜ調子が悪いのかに、自分でも、あるいは周囲の人も気づかないということになるのです。
つまり、現在のコロナ「第3波」、そして2度めの緊急事態宣言のメンタルへの影響もまた、数カ月後に時間差で現われるということが十分考えられます。ですから油断は禁物です。ストレスをためずに、上手にガス抜きをしてください。
「ストレス症状は時間差で現われる」ということは、自分自身そして家族や友人、職場の人たちの健康を観察し、守るうえでとても重要な知見です。ぜひ、覚えておいて、活用していただきたいです。
かばさわしおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動
イラスト・浜本ひろし
(週刊FLASH 2021年2月16日号)