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精神科医・樺沢紫苑の「読む! エナジードリンク」夫婦間のストレスを減らすテレワーク術
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.02.22 06:00 最終更新日:2021.02.22 06:00
日本の新型コロナウイルス感染者もようやく減少の兆しが見えてきましたが、緊急事態宣言はもうしばらく続きますね。
ただ解除された後も、「いきなり出勤する」のではなく、今後もテレワークを続ける会社は少なくないようです。
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テレワークの導入によって、満員電車、通勤地獄から解放されるという大きなメリットがある一方で、「なかなか慣れなくてストレスがたまる」「直接、顔を合わせないので、コミュニケーションがとりづらい」という声もあります。
なかには、一日中、家にいることで、「妻とのコミュニケーションがうまくいかなくなった」「夫婦喧嘩が増えた」という人もいるでしょう。
2020年4月〜11月の期間に、全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられたDV(ドメスティック・バイオレンス=配偶者や恋人からの暴力)に関する相談件数は、前年度1年間の総数より1万3000件余り増えて13万2355件となり、過去最多を記録したそうです。
コロナ禍のストレスによって、身内への暴力が増えている。それは、親しい間でのストレスが増えている証拠です。
そこまでではないけれども、夫婦の間がギクシャクしたり、夫婦喧嘩が増えたという家庭は、かなり多いのではないでしょうか。
今回は、そんな夫婦間の問題を上手に解消する、「ストレスフリーのテレワーク術」についてお伝えします。
(1)「ヤマアラシのジレンマ」を理解する
夫婦が家に長く一緒にいると、なぜギクシャクするのでしょう。コミュニケーションの時間が増えるわけですから、単純に考えれば仲がよくなりそうなものです。
しかし、心理学の「ヤマアラシのジレンマ」を知っていると、その理由が腑に落ちるはずです。
寒い環境にいる2匹のヤマアラシが、体を温め合うために近づくと、お互いの針が刺さって痛みを感じます。
でも、離れてしまうと寒い。互いの距離が近すぎると傷つけ合うことになるけど、遠すぎると今度は寒さを感じる。
こうして近づいたり離れたりを繰り返しながら、お互いに傷つかない、ちょうどいい距離を見つけます。
これを人間の夫婦にあてはめると、夫婦がずっと一緒にいる場合、互いの心理的距離が近くなりすぎて、相手の悪いところが見えやすくなる。
会話の際のひと言ひと言がウザく感じられ、「放っておいてほしい」という気持ちになってくるのです。これが「ヤマアラシのジレンマ」です。
このジレンマを解消するには、「相手と心理的に距離をとる」、これに尽きます。
(2)「不可侵時間」「不可侵領域」を設定
「心理的に距離をとる」には、具体的にどうすればいいのでしょうか。
たとえば、午前中は互いに「家事の時間」「仕事のコアタイム」と決め、どうしても必要なこと以外は相手に話しかけない。
あるいは、リビングの一角に仕事スペースを作り、そこで相手が作業をしているときはそっとしておく。こうしたルールを決めて、互いに相手の領域を侵さないよう心がけるのです。
私は書籍の執筆がおもな仕事で、多くの場合、午前中に自宅で作業をしています。
執筆には集中力を要するので、それが途切れないよう、午前中に妻と互いに連絡したいことがあるときは、「フェイスブックのメッセンジャーを使う」というルールを作っています。
たとえば、仕事が一段落して「おなかがすいたな」と思ったときは、「ランチでも行く?」と妻にメッセージを送り、一緒に食べに行ったりしています。
また、自分の個室がなく、家族が集まるリビングで仕事をせざるを得ないという場合は、「ついたて」がひとつあるだけで、まったく違います。
ついたてのこちら側は仕事場、向こう側は家族のコミュニティスペース。会社のパーテーションと同じく、「心理的な切り替え」には想像以上に大きな効果を発揮してくれるのです。
このように、互いに干渉しない「不可侵時間」を作る。自分の領域、相手の領域をパーテーションで仕切って「不可侵領域」を作る。たったこれだけのことでも、気分的にとても楽になります。