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【食堂のおばちゃんの人生相談】55歳・会社員のお悩み

ライフ・マネー 投稿日:2021.03.22 11:00FLASH編集部

「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!

 

【お悩み/青い鳥さん(55)会社員】
 先日父が亡くなり、実家を片づけていたら偶然、小学生時代の【宝箱】が見つかった。その中に、同じ学習塾に通っていた初恋の女性の写真が入っていた。猛烈に会いたくて、夢にまで出てくる。しかし連絡先がわからない。妻にも娘にも秘密にしているが、どうしたら会えるだろう?

 

 

【山口先生のお答え】
 いやあ、今の季節に相応しい、素晴らしく爽やかなお悩みです。小説の発端に使えそうなエピソードでもありますね。恋愛小説もありですが、ミステリー小説にもピッタリです。彼女の足跡をたどるうちに思わぬ事件に巻き込まれたりとか、思い出とはまるで違う彼女の顔が明らかになったりとか。

 

 松本清張に『絵はがきの少女』という短編があって、絵はがきに描かれた愛らしい少女に興味を持った新聞記者が消息をたどるうちに、転落の一途をたどっていった女の悲惨な人生が浮かび上がるという、叙情豊かで哀しい物語です。

 

 そう言えば、関西には初恋の人を探してくれるTV番組があると聞きました。結ばれなかった初恋の人というのは、それほど強い吸引力を持つものなのですね。私としては、青い鳥さんがそれほどまでに初恋の人に会いたいなら、努力してみるのが良いと思います。

 

 当時の塾仲間で連絡の取れる人に聞き回って、何とか彼女の同級生を探しましょう。通っていた小学校が分かれば、卒業生名簿から実家の住所も分かります。卒業生に頼んで学校にお願いしてもらえば、閲覧出来るのでは?

 

 あとは実家に連絡して、「塾の同窓会をやりたい」とか言って、今の連絡先を教えてもらうとか? どうしてもダメなら、専門の調査機関に頼む方法もあります。

 

 そして、彼女と再会を果たしたとします。問題はその先です。彼女に幻滅した場合、あるいは懐かしさだけで女性としての魅力を感じない場合は問題ありませんが、昔の恋心が復活してしまった場合は大変です。

 

 彼女もあなたと同じように恋の炎を燃やしてくれるなら、これはこれで大人の恋の始まりですから、それからのことは2人で相談して下さい。しかし、あなたの一方的な片思いで彼女にまったくその気がなかったら?

 

 再会出来たことに満足して、以後彼女のことは諦め、想い出だけを大切にして元の生活に戻っていけたら、これはもうご立派。でも、なかなかそうはならないみたいです。

 

 初恋には魔力があって、再会した彼女はただの中年女ではありません。少女の頃の面影が重なって、ありのままの姿ではなく幻想が見えるのですね。それは相手だけではなく、自分自身もまた、今の姿ではなく昔の姿が二重写しで見えてしまう。だから執着が断ち切れないわけです。

 

 何を隠そう、私には高校二年生から15年間、ず~っと片想いしていた初恋の人がいます。15年も想い続けたので、完全に燃え尽きて今は何も残っていません。

 

 だから青い鳥さん、もし再会後、叶わぬ恋と知ったなら、彼女を想って燃え尽きましょう。ストーカーになっちゃダメですよ。

 

やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中

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