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樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」コロナより怖い孤独のリスク
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.04.26 06:00 最終更新日:2022.02.14 17:37
●コロナで亡くなる人は0.25%
新型コロナウイルスの変異株が増え、患者数の増加が懸念されています。テレビを見ると「変異株が増加中!」「変異株は感染力が強い!」と、恐怖心を煽る報道が朝から晩まで続いています。
高齢者のなかには「コロナが怖い!」という理由で、ほとんど外出しない、誰とも会わない、と家にこもっている方も多いようです。 精神科医の私としては、コロナ以上に「運動不足」と「孤独」の問題が深刻化していることが心配です。
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2020年、日本で新型コロナ感染症のために亡くなった方は3414人。 すべての死亡者数は138万4544人ですから、コロナ感染を原因とする死亡者数の割合は、わずかに0.25%です。
つまり亡くなった人の99.75%は、コロナ以外の原因で亡くなっているのです。
コロナ感染を防ぐのはとても大切なことです。しかし、「コロナが怖い」と家から一歩も出ないために、「運動不足」と「孤独」に陥り、別の病気のリスクを何倍にも増やしている。
その結果、寿命を縮めてしまっては、本末転倒の結果になってしまいます。
●運動不足の危険性
運動不足は、「ガン」「心臓疾患」「糖尿病」などの生活習慣病、そして、「うつ病」や「認知症」などのメンタル疾患のリスクを飛躍的に高めます。「1日15分の運動で、死亡率が半分になる」という研究結果もあります。
では、「運動不足」の基準はどの程度のものなのかというと、「1日15〜20分の早歩き」で、最低限の運動量はクリアできると考えられています。
実際、「1日に20分の早歩きで、寿命が4年半延びる」という研究結果もあります。
「1日15〜20分の早歩き」は、普通に通勤しているサラリーマンであれば十分にクリアしているのですが、高齢者やリモートワークで「家から一歩も出ない人」は、間違いなく運動不足に陥っています。
また運動不足によって、基礎体力が低下すると、免疫力も低下して、感染症にもかかりやすくなります。運動不足の人がコロナに感染すると、重症化する危険性が高いのです。
●コロナ禍で激増する認知症
高齢者の場合、運動不足によってすぐに影響が出るのは「認知症」と「寝たきり」のリスクです。
知人の精神科医から、「コロナ禍になって物忘れが進んだ」と訴える認知症の患者さんがすごく増えたという話を聞きました。
認知症の予防法は、なんといっても「運動」と「コミュニケーション(人と会う)」。
「1日20分の散歩で、アルツハイマー病のリスクを2分の1以下に減らせる」という研究結果もあります。運動は認知症を予防します。また、人と会う、人と話すことで、脳が刺激されます。
逆に「人と会わない」生活は、認知症を一気に進行させる原因となります。「人と会わない」というのは、メンタル的に非常に危険なことなのです。
●コロナで寝たきりの高齢者が増える!?
また「家から出ない」生活は、ごく短期間でも「筋力が衰える」原因となります。毎日20分、散歩や買い物に出かけている人は、「寝たきり」になる危険性が少ない。
しかし、1カ月以上ほとんど外出も運動もしないという人は、間違いなく筋力が衰えます。とりわけ高齢者の場合、一度衰えた筋力を元に戻すのは、簡単ではありません。
筋力が衰えてからあわてて運動しても、転倒の原因となるだけ。転倒すると骨折する可能性があります。骨折して入院すると、さらに筋力低下が進む……。入院をきっかけに「寝たきり」になる人も多いのです。
コロナに感染する確率よりも、「寝たきり」や「認知症」になる確率のほうがうんと高いのに、それを心配する人がほとんどいないのは不思議ですね。