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樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」コロナより怖い孤独のリスク

ライフ・マネー 投稿日:2021.04.26 06:00FLASH編集部

樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」コロナより怖い孤独のリスク

運動不足はコロナ以上に問題


●対策は「1日5分の朝散歩」

 

 運動不足の解消法として、私がおすすめするのは、「1日5分の朝散歩」です。「15分」できればベストですが、いきなり15分というと「無理です」という人が多いので、まずは「5分」でOKです。

 

 同じ長さの散歩でも、朝におこなうと、「セロトニン分泌の活性化」「体内時計のリセット」の効果があるため、気分が安定し、意欲も湧いてきて元気になる、夜にぐっすりと眠ることができ、ストレス発散効果が得られる、さらに、太陽の光を浴びることで、ビタミンDの効果が得られ、骨粗鬆症の予防や免疫力アップにつながる、と、まさにいいことずくめなのです。

 

「外に出るとコロナの危険が……」と心配な人は、公園や河川敷、緑の多い広々とした場所を歩き、誰とも会話しなければ、コロナ感染のリスクはほぼないと言っていいでしょう。

 

 高齢者の場合、体力がないので5分の散歩でも息が切れるのですが、若い世代の10分、15分に相当する運動効果が得られます。

 

 体力的に散歩が無理という方は、公園のベンチに座る、あるいは日の当たる縁側やベランダに座る。つまり、「日向ぼっこ」だけでも、「セロトニン分泌の活性化」「体内時計のリセット」の効果は十分に得られます。 

 

●孤独は「孤毒」

「孤独」が健康と関係があるの? そう思った人も多いかもしれません。じつは近年の研究から、孤独が心と体の健康にきわめて悪い影響を与えていることがわかっています。

 

 米ブリガムヤング大学の研究によると、「社会的なつながりを持つ人は、持たない人に比べて、早期死亡リスクが50%低下する」そうです。

 

 社会的なつながりを持たない人の早期死亡リスクは、1日15本の喫煙習慣がある人のそれに匹敵します。

 

 また、これらの習慣は「運動不足」の3倍も健康に悪いという研究結果が出ています。

 

 また、孤独を感じる人は、そうでない人と比べて、死亡率が1.3〜2.8倍、心疾患のリスクが1.3倍、アルツハイマー病のリスクが2.1倍、認知機能の衰えが1.2倍高まります。

 

 また、うつ病のリスクが2.7倍高まり、自殺念慮を抱える人が3.9倍になるなど、メンタルに対しても甚大な悪影響を及ぼすという結果も出ているのです。

 

●「脱孤独」の対策は「お互いの気配り」

「脱孤独」の対策は、親きょうだい、友人、知り合いにとにかく「まめに連絡を取る」ことに尽きます。

 

 コロナ禍で直接会うのが難しいのであれば、電話やSNSを活用する。LINE、フェイスブックのメッセージやメール、ビデオ通話などで、定期的に連絡をとることです。

 

 テキスト(文字)<音声<動画の順に情報量は多くなります。情報量が多くなるということは、コミュニケーション効果が高いということ。ですから、メールのやり取りだけでなく、なるべく電話やビデオ通話などを活用したいものです。

 

 最近は、大学の授業がオンライン化されたことで一人暮らしの大学生が「孤立」「孤独」の問題を抱えやすくなり、精神科や心療内科に通うケースが劇的に増えています。

 

 またテレワーク化が進んでいる会社では、一人暮らしの社員などがやはり「孤独」を強めている可能性もあります。高齢者に限らず、「孤独」の問題は誰にでも起き得ることです。

 

 孤立する人を出さないためには、互いに声をかけ合う、SNSなどで連絡を密に取り合う、話を聞いてあげる(ガス抜き)など、コロナ以前よりも意識的にコミュニケーションを強めていく配慮が必要になってきているのです。

 

●「コロナ明け」に困らぬために

「コロナ明け」になったときに、「認知症」や「寝たきり」の高齢者が、何十万人も増えていた、という悲惨なことが起きるかもしれない。その事態はなんとしても避けたいとの気持ちから、今回の記事を書きました。

 

 コロナの危機というのは「一過性」ですが、「認知症」や「寝たきり」は一度なってしまうと「ずっと続く」ことです。

 

 それを避けるために、「1日5分の朝散歩」を試してほしいし、高齢の親と同居している人は、手を取りながら一緒に散歩してほしいのです。

 

 それが「介護地獄」を防ぐのはもちろん、自分自身の健康のために役立つことは間違いありません。

 

かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動

 

イラスト・浜本ひろし

 

(週刊FLASH 2021年5月4日号)

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