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バスの運転手と車掌どちらが健康か…“ちょっとの運動” が体に効く理由

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.04.26 16:00 最終更新日:2021.04.26 16:00

バスの運転手と車掌どちらが健康か…“ちょっとの運動” が体に効く理由

 

 座りがちで、体をあまり動かさずとも、食べものがいつでもどこでも手に入る現代の生活。こうした体を動かさない生活を送っていると、体が冬眠中と勘違いするという説があります。

 

 この説は、クリス・クロウリー、ヘンリー・ロッジ著『若返る人──50歳のまま、80歳、それ以上を迎える』(エクスナレッジ刊、沢田博、佐野恵美子訳)に記されています。ヘンリー・ロッジ博士は「60代でも70代でも若い肉体のままいることは可能」と述べ、そのためにもっとも重要なのは「運動」としています。

 

 

 運動不足でいると、人間の脳は今が「冬」であると判断し、体は代謝を低下させ、余分な栄養としてすべて脂肪を蓄えます。そうして脳と肉体を衰弱モードに切り替える、というのです。体が衰弱すれば免疫力も低下して、病気になりやすくもなります。

 

 反対に、大昔、狩猟採集をやっていたころのように適度に体を動かせば、脳は「春」と判断し、代謝が活発になって、細胞の修復や成長が進むとのことです。

 

 したがって、若返りのためには何よりも運動が重要とロッジ博士は主張しているのです。

 

 ただし、運動も「やりすぎ」はよくないのです。適度な運動なら血管の内皮細胞から抗酸化物質が出てきて、がん予防によいことがわかっています。ところが、激しく動きすぎると、活性酸素が大量に出てしまい、それが抗酸化物質の効果を上回り、がん細胞を増やすリスクを高め、免疫力を低下させることにもなってしまうのです。

 

 実際、広島大学の東幸仁教授らは、20代男性に固定式自転車を1回30分、強い負荷で週に5〜7回こいでもらう実験をしています。結果、12週間後に体内に酸化ストレスで壊れたDNAの断片などがたくさん見つかったとのことです。

 

 スポーツクラブへ行くと、死にそうな表情でがんばっている人たちがいます。がんばればがんばるほど健康によいと信じているのかもしれませんが、そうではありません。

 

 活性酸素の発生量を増やせば、がん細胞の発生数も多くなってしまいます。ですから、心地よいと感じる程度に体を動かすこと。これこそが「がんをつくらないための運動」としては最適なのです。

 

■「激しくきつい」運動はいけない

 

 では、適度な運動とはどのようなものでしょうか。
 これは、人によっても違いますし、同じ人であっても年齢で変えていく必要があります。はっきりしているのは、「激しくきつい」運動はいけないということです。

 

 アスリートは、日々体を鍛えていて、さぞ健康な体をしているのだろうと思ってしまいます。しかし実は、日々、体をいじめ抜いているため、活性酸素の発生量も多く、免疫力も落ちやすくなっています。風邪などの感染症にかかりやすいのです。ですから、大事な試合前などには、厳重な体調管理が必要とされます。

 

 反対に、あまりに楽な運動でも効果がありません。安静時より1.5倍ほど心拍数が増えるくらいの運動がよいといえます。具体的にいうと、運動をして「気持ちがよい」「ちょっとキツイけれども楽しい」と感じる程度です。

 

 まとめますと、運動しても苦しいばかりでつらいと感じるのは「やりすぎ」。一方、運動して「ラク」「簡単」と感じるのは、「強度がたりない」という状態です。こうした感覚は、人によっても年齢によっても異なります。自分の体のコンディションに応じて変化させていきましょう。

 

 ただし大事なのは、難しく考えず、とにかく体を動かすことです。歩くだけでもがんの予防にはよいのです。

 

 実際、歩くことが健康によいという調査結果は、昔から知られています。有名なのが、1950年代に発表された、職種と心臓病との関係です。

 

 その一つは、ロンドンの2階建てのバスの運転手と車掌を比較したものです。車内の階段を上がったり下りたりして動きまわる車掌のほうが、あまり体を動かさない運転手よりも、心臓病の発症が少なかったという報告です。

 

 もう一つは、郵便局内の事務職の人と外で郵便物を配達している人との比較です。事務職にある人のほうが心臓病の発症が明らかに多いという結果でした。

 

 歩くだけならば、心拍数を大きく上げてしまう心配もなく、ほどよい運動を簡単に実践できます。週に数回、30分から40分歩くだけで生活習慣病の予防になり、健康や体力を増進できることは間違いありません。

 

 また、最近まで「少なくとも1時間持続した運動でなければ体脂肪がエネルギーとして使われない」と、比較的長時間の運動がすすめられていました。

 

 しかし、これは正しい情報ではありませんでした。運動療法による肥満の減量の効果は、1日1回60分間行う運動と、1回10分ほどの運動を数回にわけて合計60分行う運動との間に、ほとんど差がないことが実証されています。

 

 

 以上、藤田紘一郎氏の新刊『もしも、私が「がん」になったら。~81歳、現役医師の準備と決意~』(光文社新書)をもとに再構成しました。がんになったらどうするか? がんを寄せつけないためにできることはないか? 81歳、後期高齢者の元気な医師、藤田紘一郎先生と一緒に考えてみましょう。

 

●『もしも、私が「がん」になったら。』詳細はこちら

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