1954年4月28日、明治製菓(現・明治)から、「明治天然オレンジジュース」という日本初の缶ジュースが、東京地区限定で発売された。
オレンジジュースは、戦後にアメリカから瓶入り商品が輸入され、日本に広まった。容器が瓶入り主流だったなかで、なぜ缶ジュースを作るに至ったのか。明治の広報担当者に話を聞いた。
【関連記事:日野原重明の独自健康法は「ジュースにオリーブオイル」】
「缶ジュースを発売する2年前から、瓶入りの『天然オレンジジュース』を発売しておりましたが、ジュースに含まれるビタミンCは熱や紫外線で壊れやすく、短期間で色や味が変化してしまう欠点がありました。
缶入りであれば、缶内の空気が除かれて真空状態を作れ、紫外線も遮断されることから、色味やビタミンCなどの栄養分が保護されるメリットがありました。
1936年からみかんの缶詰を販売していたこともあり、そういったノウハウが活かされた商品であったと思います」
200ml入りの缶ジュースは、1缶40円で発売された。そばが1杯30円の時代だから、当時としては高級品だ。缶を開けるプルトップはまだなく、缶詰と同じく缶切りで空ける必要があった。それもあってか、発売当初はあまり売れ行きがよくなかったという。
「瓶と缶は同じ200mlだったのですが、目の錯覚で缶の方が少なく見えてしまうことから、それまでと変わらず瓶を選ぶ方も多かったようです。
そのため、同じ大きさのコップに双方のジュースを注いで、同じ量であることを示すスライドや映画を作って全国的な説明会をおこない、缶ジュースの普及に努めたと聞いております」(広報担当者)
その甲斐あってか、1957年1月には全国発売されるに至っている。飲みやすさにも配慮し、全国発売時からは、缶の上に専用オープナーをつけて売り出す方法を取った。
それからしばらくした1965年、ビール缶にプルトップがついたことで、ようやく現在と同じような形状となったのだ。
※写真提供:明治