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宗教学者・島田裕巳、93歳の母を直葬してわかった「やっぱり葬式は要らない!」
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.06.02 11:00 最終更新日:2021.06.02 11:00
「4月27日に妹と暮らしていた自宅で息を引き取った母を、“ほぼ直葬” で見送りました。93歳でした。外から見た印象では、最期も苦しんでいるようには見えませんでした。大往生でしたね」
宗教学者・島田裕巳氏(67)の母・俊子さんが亡くなった。島田氏は、2010年に著書『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)を上梓。14刷・30万部のベストセラーとなった。今回、実際に母を見送り、あらためて葬式について思うことがあったという。
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「母は4月に入って具合が悪くなり、診察ですい臓ガンが見つかり、もう手遅れでどうしようもない状態でした。
前から十分なコミュニケーションが取れない状態でしたが、2週間前に見舞ったときは、まだ私のことを認識していました。自分でトイレに行ったり、食事も少量ですが食べていました。
亡くなる当日の夕方、母のもとへ行ったら、私が着いてすぐに具合が悪くなりました。コロナ禍で立ち会えない、大阪に住むもう一人の妹にスマホのビデオ通話で様子を見せていると、母は口をパクパクさせる『下顎(かがく)呼吸』という状態になり、結局30分くらいで亡くなってしまいました」
■湯かんは高価だけど頼んでよかった
葬式は、島田氏がNPO法人「葬送の自由をすすめる会」の代表だったときからつき合いのある葬儀社に頼んだ。俊子さんは事前に葬式について希望はなく、島田氏は俊子さんが亡くなった後に、葬儀社の担当者と相談して決めた。
「葬儀費用は、税込み46万5830円。これが、見積書です(冒頭の写真)。非常にシンプルでしょう。棺桶の代金は、火葬式プランに含まれていました。
湯かんは、専用の浴槽を自宅まで運び込んでもらって、そこできれいにしてもらいました。価格は17万円で、頼まなかったら、もっと費用を抑えられたでしょう。
でも、頼んでよかったと思っています。葬儀社の方が、母にシャンプー、リンスをして、体をきれいにして、お化粧もしてくれました。
5月1日に火葬するまでの間、遺体が傷まないよう、母の布団にドライアイスを入れて、自宅のリビングに安置していました。4月28日から30日までは、親族が何人か訪れて、布団のまわりで食事をしたりしていました。
冒頭で、“ほぼ直葬” と述べたのは、その3日間は実質的にお通夜のようなものだったのかなと思うからです」
「直葬」とは、通夜や告別式をおこなわず、自宅や病院から火葬場に遺体を直接運ぶ方式のことだ。
「今回は、お坊さんは呼びませんでした。母の遺骨は、父が入っている曹洞宗のお寺さんの墓に納骨する予定ですが、戒名もありません。
うちは祖父母も、15年ほど前に亡くなった父にも戒名がないんです。とはいえ、普通は『戒名は要りません』とは言いづらいですよね。
これは、うちが檀家になっているお寺さんがすごく鷹揚(おうよう)で、『島田家は俗名で』と理解しているからできたことだと思っています。お布施を強要されたこともないんです。もちろん、気持ち程度のお布施はしていますけれど」
『葬式は、要らない』は、葬儀業界から大きな反発を呼んだ。島田氏は “葬式否定派” の代表的論者だとみなされるようになった。
「私は、著作の中で葬式すべてを否定したのではありません。故人が望まない葬式、身の丈に合わない葬式は『贅沢』であり、“要らない” と言いたかったのです。
亡父の場合は、大学の弓道部のOB会理事長を務めていたこともあって、斎場で葬式を執りおこないました。参列者も多く、葬儀費用は平均的なものだったと思います。
一方、母は交友範囲が狭く、近所の知人も引っ越すか、亡くなってしまっていました。そんな母の場合は、直葬がふさわしいと思ったのです」