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藤井聡太王位・棋聖 将棋ファンでも信じられない「未成年で六冠」年度内達成へ!
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.08.21 06:00 最終更新日:2021.08.21 06:00
藤井聡太(19)の勢いがすさまじいことになってきた。
もちろん、藤井はここまでずっと勝ち続けてきた。史上最年少14歳でデビューして以来、4年度連続で勝率8割超え。近代の将棋界で、こんな記録は初めてだ。
今年度もここまで22勝4敗(勝率0.846)だから、そのペースは遅くも早くもなっていない。
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ただし戦うステージは変わった。フルシーズン初参戦の2017年度には、対戦相手の多くはルーキー藤井と同じクラスの下位棋士だった。
2021年度現在、藤井は将棋界八大タイトルのうち、王位・棋聖を保持する二冠の立場にある。対戦相手のほとんどは将棋界のトップクラスだ。そしてタイトル戦の番勝負という、棋士にとっての最高の舞台での対局が増えてきた。
今年度ここまでのタイトル戦の軌跡、および今後の展望をたどっていこう。
【棋聖戦五番勝負】防衛
藤井にとっては初の防衛戦。挑戦者は前棋聖にして将棋界序列1位の渡辺明名人・棋王・王将(37)。「現役最強」とも言える相手がリターンマッチに名乗りをあげてきた。
藤井にとっては試練の番勝負になるのではないか、とも思われた。しかし結果はなんと、藤井が3連勝。ストレートで渡辺を返り討ちにした。
【王位戦七番勝負】防衛まであと1勝
棋聖戦と並行して始まった王位戦。こちらは二冠を保持する将棋界序列2位の豊島将之竜王・叡王(31)が挑戦してきた。
藤井はそれまで豊島に対して1勝6敗と大きく負け越していた。やはりこちらの番勝負も、藤井にとって大きな試練になるのではないかと予想された。
第1局は豊島の勝ち。やはり藤井にとって豊島は大きな壁なのか……。そう思われたところで藤井は巻き返す。第2局、第3局は藤井の勝ち。
そして7月18日、19日におこなわれた第4局も藤井が勝った。藤井は3勝1敗で、防衛まであと1勝と迫っている。
【叡王戦五番勝負】奪取まであと1勝
叡王戦は近年、将棋界8番目のタイトル戦となった。現在のスポンサーは不二家。藤井はそのCMにも出演している。
藤井は今期初めて挑戦権を獲得し、豊島叡王に挑戦中だ。途中経過は藤井の2勝1敗。奪取まであと1勝と迫っている。
藤井がもし叡王位を獲得すれば、王位、棋聖とあわせて三冠となる。これまでの史上最年少三冠は22歳3カ月の羽生善治竜王・王座・棋王(1993年当時)。
藤井はまだ19歳1カ月。大幅な記録更新だ。
【王座戦五番勝負】本戦トーナメントで敗退
藤井は5月におこなわれた王座戦本戦トーナメント1回戦で深浦康市九段(49)に敗れ、挑戦権争いから姿を消した。藤井はこのとき、前年度から続く公式戦連勝記録も19で止められた。王座に挑戦、獲得できるのは、早くとも来年度だ。
現在王座に就いているのは永瀬拓矢(28)。9月に開幕する五番勝負では「中年の星」とも言われる木村一基九段(48)を挑戦者に迎えて戦う。
【竜王戦七番勝負】挑戦まであと1勝
藤井は竜王戦の挑戦者決定戦三番勝負にまで勝ち進んでいる。現在戦っている相手は永瀬王座で、第1局は藤井が勝った。あと1勝すれば豊島竜王への挑戦権を獲得できる。
七番勝負は10月から12月にかけておこなわれる。もしここまで制すれば四冠だ。
【王将戦七番勝負】これからリーグ戦開始
王将戦、藤井は2次予選を勝ち抜いて「将棋界最難関」とも呼ばれるリーグへの復帰を決めた。一騎当千のつわものがそろった7人のリーグで、藤井はこれから挑戦権を争う。
七番勝負は、通例では1月から3月におこなわれる。渡辺王将からタイトルを奪えば、五冠となる可能性がある。
【棋王戦五番勝負】これから本戦トーナメント開始
棋王戦の挑戦者を決めるトーナメントは現在進行中。藤井は2回戦から参加し、新鋭の斎藤明日斗四段と戦う(日程はまだ未公表)。棋王戦は途中から敗者復活があるのが特徴だが、最短で5勝できれば挑戦権を獲得できる。
五番勝負は通例では2月から3月にかけておこなわれる。渡辺棋王からタイトルを奪えば六冠の可能性まである。
「藤井はもしかしたら今年度中に六冠まで取ってしまうのではないか?」
将棋ファンの間からはそんな声も聞かれ始めている。現在の藤井の勢いをもってすれば、それも不可能ではないとも思わせられる。
なお将棋界の制度上、藤井はまだ名人戦に出ることはできない。
藤井は現在順位戦ではB級1組に所属している。今年度B級1組で上位2人に入れば昇級。次年度A級で最上位の成績をあげれば名人挑戦権を獲得する。最短で2023年の名人戦七番勝負に出場できる。
藤井が名人戦に出る頃には、はたして何冠になっているのか?
そして将棋界初の八冠制覇を達成することはあるのか?
私たちがここまで見てきた「藤井フィーバー」は、まだまだ序章に過ぎないのかもしれない。
文・松本博文
フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『あなたに指さる将棋の言葉』(セブン&アイ出版)など