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樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」五輪メダリストは、なぜ感謝の言葉を口にするのか?
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.08.23 06:00 最終更新日:2021.08.23 06:00
東京オリンピックが終了して、早くも2週間たちました。日本人のメダル獲得数は史上最多の58個、金メダルも史上最多の27個となり、私たちに多くの感動を与えてくれました。
試合を終えた選手たちのインタビューで、メダルを獲得した選手たちがほぼ全員、同じ内容を口にしていたことに気づいたでしょうか。
「監督、コーチ、チームメイト、スタッフ、家族、応援してくださったファンの皆さんに心から感謝します」
「コロナ禍にもかかわらず、オリンピックが開催されたことに感謝します」
皆、感謝、感謝、感謝!
メダリストは、なぜ感謝の言葉を口にするのでしょうか? 世の中「人に感謝をする人」「感謝を忘れない人」がいる一方で「人に感謝をしない人」「感謝が足りない人」もいるはずです。
ところが、メダリストに関していえば、ほぼ100%感謝の言葉を口にしています。逆にいえば、感謝の言葉を口にしない人はメダリストになれない、といえます。「感謝は成功、成長の絶対法則」と断言していいくらいです。
(1)感謝する人は逆境に強い
なぜ人に感謝することが、自分を成長させ、圧倒的な成功と結果を自らにもたらすのでしょうか。
脳科学的に考えると非常に明解です。感謝をすると、脳の中では幸福物質のエンドルフィンが分泌されます。エンドルフィンにはモルヒネの6.5倍もの鎮痛効果があり、追いつめられた限界状況でも分泌されます。ボクシングの選手がパンチの応酬をしても痛みをあまり感じないのは、その効果のおかげです。
またランニングを続けていると、30分を過ぎたあたりで急に体が楽になり、恍惚とした気持ちになることがあります。この「ランナーズハイ」のときも、エンドルフィンが分泌されていることが知られています。
非常に苦しい限界状況においても、それを乗り越えられるように痛みや苦しみを緩和し、精神的・肉体的なパワーを与えてくれる。そんな物質が、感謝することによって分泌されるわけです。
オリンピックに出場するくらいのアスリートたちは、毎日信じられないほどの長い時間、厳しい練習をおこなっていることでしょう。通常の精神力では、そんな状態を何年も続けるのは不可能だと思います。
しかし、そのなかでも感謝の気持ちにあふれるアスリートはエンドルフィンを味方にしています。だから、苦しい状況に陥っても、充実感、満足感、達成感で乗り切ることができるのです。
当然、試合本番の追いつめられた状況においても、エンドルフィンによってふだん以上の集中力、パフォーマンスが発揮されるので、圧倒的な結果につながるのです。
(2)感謝と親切で緊張から解き放たれる
感謝と親切は、切っても切れない関係にあります。人に親切にすると、人は感謝します。そして、人は親切でお返ししたくなり、その結果、今度は自分が感謝する。このときに双方に分泌されるのが「つながり」の幸福物質・オキシトシンです。
オキシトシンは、ドーパミン、セロトニンと並ぶ三大幸福物質のひとつで、高いリラックス効果があることで知られています。犬や猫を抱っこしたときに「癒やされる〜」と感じるのは、オキシトシンの効果です。
大切な試合本番においては、ベテランの選手であっても、間違いなく「緊張」します。実際、今回の五輪でも、過度の緊張で実力を発揮できずに敗れた選手もいました。
緊張している状態では、脳の「扁桃体」が興奮し、不安や恐怖といった感情を生み出します。そして、肉体的な緊張をもたらし、力が入りすぎて、失敗につながるのです。
オキシトシンは、扁桃体の興奮を静める働きがあります。つまり、感謝の気持ちにあふれて試合に臨めば、分泌されたオキシトシンが張りつめた気持ちを抑えてくれます。つまり、緊張に負けることなく、本来の実力を発揮することができるのです。さらに、エンドルフィンとの相乗効果によって、本来以上の力を発揮することも可能なのです。
誰でも感謝の気持ちは持っているでしょう。大事なのは、それを思うだけでなく言葉にすること。そうすることで、脳はより明確に感謝や親切を認識し、エンドルフィンやオキシトシンの分泌を促すのです。
人に直接、感謝の気持ちを伝える。あるいは「人に対する感謝」や「人に自分がした親切」を毎日書き留める「感謝・親切日記」で、さまざまなポジティブな効果が得られることは、心理学的な実験で明らかにされています。