ライフ・マネーライフ・マネー

樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」なぜ謝罪会見はいつも炎上するのか?

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.09.06 06:00 最終更新日:2021.09.06 06:00

樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」なぜ謝罪会見はいつも炎上するのか?

心の中で思っていることは「非言語的」に相手に伝わる

 

 自身のYouTube動画でホームレスや生活保護受給者に対する差別的発言をしたメンタリストのDaiGo氏が、大きな批判を受けました。問題の動画は8月7日に公開され、13日夜には謝罪のための生配信をおこないました。

 

 しかし、批判の声は収まるどころか、さらに強い批判を浴びることになったため、翌14日、スーツ姿のDaiGo氏が再度動画に登場し、深い謝罪と反省の意を述べました。

 

 

 涙ぐむ場面も見られましたが、「泣き落としで相手に罪悪感を」という内容の過去のツイートが掘り起こされ、今回の謝罪も心理テクニックを使った表面的なものと否定的にとらえる人も少なくありません。

 

 DaiGo氏は、「謝罪の心理学」「ダメな謝罪とイイ謝罪の違い」など、上手な謝罪の方法についての動画を10本以上もアップしています。謝罪について心理的に研究しつくしていたはずの彼が、なぜ今回、これほどの炎上を引き起こす「ダメな謝罪」をしてしまったのでしょうか?

 

 今回の謝罪会見に限らず、謝罪が逆に騒動を大きくさせたり、人々の反感を増大させてしまうケースは、今までに何度も繰り返されてきました。なぜ、このようなことが起きてしまうのか、今回はそれを心理学的に考えてみたいと思います。

 

■言葉以外の9割が印象を決める

 

 人とのコミュニケーションにおいて、私が最も重要と考えるのが「非言語コミュニケーション」です。人が何かを「話す」場合、そこには「言語情報」と「非言語情報」の2つが含まれます。

 

「言語情報」とは、話される言葉の意味内容、文字列です。

 

「非言語情報」は、視覚情報と聴覚情報の2つからなります。

 

「視覚情報」は外見、表情、視線、姿勢、動作、ゼスチャー、服装、身だしなみなど、「聴覚情報」は声の調子、声の強弱、声質などです。「笑顔で相手と視線を合わせ、やさしい口調で話す」というのは、非言語を意識したコミュニケーションとなります。

 

 心理学に有名な「メラビアンの法則」があります。

 

 これは、言語、視覚、聴覚の3つで矛盾したメッセージが発せられたとき、どれを信用するかという実験から導かれた法則で、結果は、視覚情報が55%、聴覚情報が38%、言語情報が7%というものです。つまり、私たちは、言葉の意味内容そのものよりも視覚情報や聴覚情報に影響を受けてしまうのです。

 

 ですから、「丁寧な言葉で謝罪の意を述べ」(言語情報)ても、「Tシャツを着てヘラヘラとした話し方」(視覚情報、聴覚情報)だったら、人は非言語情報(視覚聴覚情報)のほうを優先してしまいます。

 

 しかも、非言語情報というのは、非常にやっかいです。私たちの心の中にある「感情」や「思い」は、多かれ少なかれ非言語的に外に出て、相手に伝わってしまうからです。つまり「言葉ではもっともらしいことを言っているけど、心から謝罪するつもりはないな」と判断されてしまうのです。

 

■「自分は悪くない」その気持ちが伝わる

 

 炎上を鎮めるための謝罪会見がさらなる炎上を招いてしまうのは、謝罪をする側に、「自分は悪くない」「なんで自分だけが責められる」「ほかの人も同じようなことをやってるじゃないか」といった気持ちが、心のどこかにあるからでしょう。それが、言葉の端々、態度、雰囲気などに、非言語的に表われてしまうのです。

 

 それを隠すことはできないのでしょうか?

 

 じつは、人間の非言語メッセージを受け取る力は恐ろしいほど強く、「形式的に謝罪しているだけだな」と簡単に見透かされてしまいます。

 

 演技の練習を積んでいる俳優、あるいは天性の詐欺師であれば本心を隠し通せるかもしれませんが、普通の人間には、非言語コミュニケーションを意識的にすべてコントロールするのは無理な話です。

 

■心から「申し訳ない」と思えるか?

 

 では、「炎上しない謝罪」「反感を買わない謝罪」は、不可能なことなのでしょうか。

 

 けっして不可能ではありません。自分の言動に非があることを100%認め、心から「本当に申し訳ない」「謝罪したい」「お詫びしたい」という気持ちになる。そうすると、その気持ちが非言語的に相手に伝わり、炎上を招いたり、反感を買ったりする恐れはとても小さくなるはずです。

 

 ただ、それにはひとつ “時間の関門” があります。

 

 自分の言動が、相手を傷つけてしまった、不愉快な思いをさせてしまった、社会的に間違っていた。あるいは無知や無神経から誤解を招くことを言ってしまった……。

 

 このように何か過ちを犯した場合、「自分の言動」に対して「反省」の気持ちが湧いてくるものです。しかし、それには “時間” も必要です。

 

 自分の感情を整理し、自分の言葉や行動をくわしく振り返り、何が問題だったのかを分析、検証する。しかし、炎上の真っ只中でパニックに陥っている人が、そうした冷静な自己分析をすることは困難です。

 

 とはいえ、謝罪は一日も早くするに越したことはない。だから問題が起きて、2、3日以内に謝罪会見を開いたりするのですが、その時点で心から「申し訳ない」と100%思うようになっているでしょうか? よほどの人格者でないと難しいでしょうし、そもそも人格者であればそんな不祥事は起こさないはずです。

 

 結果として、自分の中で事実関係や感情が整理されていない状態で謝罪会見に臨むことになります。そうすると、整理されていないわけですから、そこでさらに不本意な発言、矛盾した発言をしてしまうのです。

続きを見る
12

今、あなたにおすすめの記事

ライフ・マネー一覧をもっと見る