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医師が実名で語った「私のがん体験」麻酔が切れると予想以上の痛み/中川恵一医師
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.11.02 20:00 最終更新日:2022.09.16 20:28
自身の病巣を冷静に診る医師としての顔、ショックで怯える “患者” としての顔――。がんになった医師たちが、その体験を赤裸々に語った。病院や治療法をどう選んだのか、苦しみをどう乗り越えたのか。そして、どんな “がん名医” が彼らを治療したのか!?
58歳で膀胱がん(ステージ1)になった東京大学医学部附属病院 放射線科特任教授の中川恵一医師(61)。
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「2018年に膀胱がんと診断されたとき、『手術は(評価の高い)がん研でお願いしよう』と思っていました。しかし、東大病院の教授が私のところに来て、『全力で治療させていただきます』と言うのです。とても『がん研に行く』とは言えず(苦笑)、川合剛人先生におまかせしました。結果にはとても満足していますよ」
中川恵一医師は、自分でエコーを当てて、脂肪肝を検査する習慣があった。このときついでに膀胱もチェックしたところ、白い突起を発見した。
「慌てて画像を川合先生に送ると、『正常細胞である可能性もあるが、がんへの疑いを第一に考えます』と返事がありました。しかし、前年に撮影した画像を見ると、その時点で膀胱に異変があったのです。がん専門医の私でも『まさか自分が』という思いがあり、異変を見落としてしまったのです」
手術は下半身だけに麻酔を施す、腰椎麻酔でおこなわれた。中川医師も、約40分間の内視鏡手術をモニターで見ることができた。
「短時間で手術はうまくいきました。本来は研修医がおこなうような教科書どおりの手術ですが、川合先生自ら執刀してくれました。下半身には感覚がなく、“悟りの境地” でモニターを見ていました」
しかし、術後に麻酔が切れると予想以上の痛みがあった。
「手術は川合先生にまかせましたが、BCG治療(弱毒化した結核菌を用いたワクチン)をしないことは自分で決めました。私にとっては、副作用が厳しいと判断したのです。抗がん剤の投与も、手術直後に膀胱内に注入しただけでした」
それでも、12月28日に手術し、大晦日に退院。1月4日から仕事に復帰した。
「私の膀胱がんは、尿管口近くに15mmほど、進達度もハイグレードなもので、発見がもう少し遅れていれば、膀胱全体の切除の可能性もありました。
今思えば、川合先生の『正常細胞である可能性』はリップサービスだったのでしょう(笑)。自分でエコーをすることは難しいと思いますが、リンパ節などの腫れやしこりは日ごろさわっていればわかります。皆さんも、自分の体の異変に敏感でいてください」
【私を救ったがん名医】
東京大学医学部附属病院泌尿器科・川合剛人医師
取材/文・吉澤恵理(医療ジャーナリスト)