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医師が実名で語った「私のがん体験」手術は12時間に及んだ/行田泰明医師
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.11.06 11:00 最終更新日:2022.09.16 20:27
自身の病巣を冷静に診る医師としての顔、ショックで怯える “患者” としての顔――。がんになった医師たちが、その体験を赤裸々に語った。病院や治療法をどう選んだのか、苦しみをどう乗り越えたのか。そして、どんな “がん名医” が彼らを治療したのか!?
52歳で食道がん(ステージ3)になった、わたクリニック船堀院長の行田泰明医師(61)。
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5年生存率が40%といわれた食道がんの手術から7年半が過ぎた。行田泰明医師は、在宅医療を専門とするクリニックで緩和ケアに取り組む。
「臓器をひとつ失うことがどういうことか。よく『共感が大事だ』といわれますが、がんにならないとできない共感もあるのだと知りました」
2014年、内視鏡検査で食道がんが見つかった。行田医師は、以前勤めていたがん研有明病院を受診した。
「手術をおまかせしたのは、消化器外科部長の渡邊雅之先生でした。リンパ節に転移していたものの、希望していた鏡視下手術を受けられました」
手術は12時間に及んだという。抗がん剤のあと、行田医師は自ら望み、痛みを和らげる医療用の麻薬を鎮痛剤に代替してもらった。
「これまで私は、医療用麻薬を多くの患者さんに使ってきました。効果について疑いはありませんでしたが、いざ自分が使う側になると、抵抗があり、患者さんの気持ちが初めてわかりました」
前に進む原動力となったのは、家族や友人の存在だ。
「私がいなくなったら、妻や子供たちはどうする……そう考え、闘病への意欲を奮い立たせました。友人、知人からの励ましや、ニーバーの『祈り』という詩が支えとなりました」
後遺症はあるが再発はない。食道がんは “根治” といえる。
「治療中は、医師としては否定してきた自費診療も受けました。そんな経験からいま思うのは、化学療法、放射線療法、免疫学的療法は、手術療法にとって代わるほどの力はまだないということです」
患者に共感する医師は、実感をこめて語った。
【私を救ったがん名医】
がん研有明病院 食道外科 渡邊雅之医師
取材/文・吉澤恵理(医療ジャーナリスト)