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樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」食欲の秋、暴走する食欲をコントロールする方法は?
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.11.15 06:00 最終更新日:2021.11.15 06:00
■原因2 ドーパミンの暴走とセロトニンの低下
ストレスがかかると、脳の大脳辺縁系が興奮し、ドーパミンという脳内物質が過剰に分泌されます。ドーパミンは「幸福物質」と呼ばれ、ストレスによる「つらい」「苦しい」を緩和するために、ドーパミンが分泌されるのです。
ドーパミン自体は幸福の源ですから、べつに悪いものではありませんが、それが常習的な状態になると「もっと」「もっと」という依存症の原因になります。あなたが「もっと欲しい」「もっと食べたい」という衝動にとらわれたなら、それはドーパミンが過剰に分泌されている証拠です。ドーパミンには、食欲増進作用があります。
しかし、人間の脳にはドーパミンの暴走を止めるブレーキがあります。それがセロトニンです。セロトニンは「脳の指揮者」と呼ばれるように、ドーパミンやその他の脳内物質の分泌を調整し、怒りやイライラなどの感情をコントロールする。食欲についても適切に調整する働きがあります。
しかし、ストレスが持続的に続くと、セロトニンの指揮が乱れてきて、うまくブレーキを踏めなくなってしまう。そうすると、食欲のコントロールも利かなくなり、食欲が暴走するのです。
ちなみに、そうした脳疲労の状態を放置すると、「うつ病」へと進行していきます。うつ病とは、セロトニン神経が疲弊し、セロトニンが枯渇してしまった状態です。うつ病の状態では、「摂食中枢」自体の働きが異常をきたすので、逆に「食欲低下」に転じます。
食欲が暴走していたのが、一転して減退し、体重が減り始めたら、それはうつ病の徴候です。
■対処法2 朝さんぽ
セロトニンは、食欲を適切にコントロールしてくれます。つまり、セロトニンを活性化することで、暴走する食欲を抑えることができるのです。
その最も効果的な方法が、「朝さんぽ」です。朝さんぽについては本連載で何度もふれてきましたが、起床後1時間以内に、5〜15分程度のさんぽを速足でおこなうことです。太陽の光を浴びることと、リズム運動の効果によって、セロトニンが活性化します。
毎日できなければ、週に数回でもいいでしょう。また、通勤時に「速足」と「太陽の光」を意識して、姿勢を正し、リズムよく歩くことで「朝さんぽ」と同じ効果が得られます。
■原因3 睡眠不足
あなたは、一日何時間寝ていますか? 睡眠時間が6時間を切っている人は、脳の「食欲スイッチ」がオンの状態になっていますので、ご注意ください。
食欲が暴走する最大の原因はストレスですが、特にストレスフルな状態ではないにもかかわらず、食欲が旺盛すぎる人は「睡眠不足」が原因として強く疑われます。
コロンビア大学の研究によると、7時間睡眠で肥満の人の割合を「1」とした場合、5時間睡眠だとその割合が50%アップ、4時間睡眠だと73%アップという結果となりました。
チューリッヒ大学の研究によると、睡眠5時間以下の人は、睡眠6〜7時間の人に比べて、年間のBMI(ボディ・マス・インデックス)の上昇率が約4倍。つまり、4倍も太りやすいのです。
睡眠時間を削ると、なぜ太るのでしょう?
それは睡眠不足になると、食欲増進ホルモン「グレリン」が増え、食欲抑制ホルモン「レプチン」が減るからです。食欲のダブルパンチ。このホルモンの変化は「食欲25%アップ」に匹敵します。
また、ロンドン大学の研究によると、睡眠が6時間以下の人は、1日に約385kcal、よけいに摂取しているそうです。
■対処法3 7時間以上の睡眠
ざっくりいうと、睡眠5時間の人が、睡眠7時間以上に切り替えただけで、約385kcalのダイエット効果が得られるということ。このカロリー消費は、ジョギング45分に相当します。ジョギング45分はきわめてハード。「睡眠を増やす」は、最も簡単にできて継続しやすい、究極のダイエット法といえます。
この連載で、心も体も健康になる最強の健康習慣として「睡眠、運動、朝さんぽ」を何度もお伝えしてきましたが、暴走する食欲を抑える最も効果的な方法も、「睡眠、運動、朝さんぽ」だったのです。
かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計60万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動
イラスト・浜本ひろし