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樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』糖尿病の新常識/喫煙・睡眠不足・ストレスも大きな要因

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.11.22 06:00 最終更新日:2022.09.16 20:33

樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』糖尿病の新常識/喫煙・睡眠不足・ストレスも大きな要因

糖尿病の原因は食事だけではない!

 

 さる11月14日は世界糖尿病デーでした。日本人の糖尿病患者数は約1000万人、さらに糖尿病の予備軍も約1000万人いますので、なんと日本人の約6人に1人が糖尿病とその予備軍になります。

 

 糖尿病といっても、「自分とは関係ない」と思う人が多いですが、まったく人ごとではない、誰もがなりうる病気であり、そうならないように予防すべき病気なのです。

 

 

 新型コロナウイルス感染症においては、糖尿病と肥満が重症化や死亡率を高める重大な危険因子となることが、テレビなどでも再三報じられました。

 

 糖尿病といえば内科の病気だから精神科とは関係ないだろう、と思う人もいるでしょうが、それは間違いです。うつ病患者の糖尿病発症率は、そうでない人の1.4倍。また、糖尿病になると、うつ病の発症率は2〜3倍に増えます。

 

 つまり精神科の患者さんで糖尿病の人は非常に多く、結果として私もたくさんの糖尿病患者さんを見てきました。

 

 結論から言えば、ほとんどの人が「糖尿病について間違った常識」を持っているせいで、なめてかかっています。実際に糖尿病が悪化して、「もうすぐ失明します!」と宣告されてパニックになる人を何人も見てきました。

 

 今回は「糖尿病の間違った常識」と「正しい対処法」についてお伝えします。

 

■間違った常識1/しょせん血糖値が上がる病気

 

 糖尿病とは「血糖値が上がる病気」と理解している人は多いでしょう。ですから、「まあ、べつに痛みもないし、たいしたことないんじゃないの」と思うのです。それが、大きな間違いです。

 

 糖尿病の怖さは、「血糖値が上がる」ことだけではなく、合併症にあります。糖尿病が進行すると糖が徐々に血管を攻撃するので、動脈硬化が進み、血管がボロボロになります。それによってさまざまな合併症を引き起こすのです。

 

 心臓の血管がボロボロになると心筋梗塞に、脳の血管がボロボロになると脳卒中になります。腎臓の血管が傷むと糖尿病性腎症が起こり、それが進むと透析導入となります。

 

 さらに足の血流が悪くなると、やがて足が腐ってしまいます。足壊疽(えそ)になると、足を切断することになります。さらに網膜の血管に障害が起きると、糖尿病性網膜症となり、失明します。これが糖尿病の最悪のシナリオです。

 

 いや、「そこまではならないだろう」と思うでしょうが、糖尿病による失明は年間に3000人以上、人工透析導入患者は年間1万6000人以上、下肢切断患者は年間に3000人以上いて、それらが毎年、新規に発生し続けているのです。

 

 また糖尿病になると厳しい食事制限をしなければいけません。つまり、美味しいものを好きなように食べることができなくなる。私はグルメなので、食事内容が大きく制限されるとなると、それは地獄としか言いようがない。私にとって糖尿病は「最もなりたくない病気」であり「最も恐ろしい病気」です。

 

■間違った常識2/治癒可能な病気

 

「仮に糖尿病になったとしても、インスリンや経口薬があるから、治るでしょ」と思っている人は多いと思います。糖尿病はコントロール可能な病気ではありますが、一度発症すると、完全に健康な状態に戻ることは困難です。つまり、ざっくり言うと、糖尿病は治らないのです。

 

 インスリンや経口薬は、血糖値を下げるための薬。つまり、血糖値をコントロールするだけの「対症療法」でしかない。現時点で糖尿病を完治させる薬はありません。

 

 ただし、糖尿病の前段階である「糖尿病予備軍」の状態であれば、「健康」な状態へと戻ることが可能です。

 

 食事をして血糖値が上がると、血糖値を下げるために膵臓からインスリンが分泌されます。間食などをして一日に何度も血糖値が上昇すると、インスリンが大量に分泌されます。そうすると、膵臓が徐々に疲弊していきます。最終的にはインスリンを自分で分泌できなくなる。それが糖尿病です。

 

 糖尿病予備軍は、「膵臓が疲弊した状態」なので、まだ元に戻すことができます。しかし、糖尿病を発症すると、「膵臓のインスリン生成機能が破綻した状態」になるので、元には戻りません。

 

 定期健診で「血糖値高め」と指摘されているのに、それを放置していると、何年か後に「糖尿病が進行していますので、インスリンが必要です」と突然言われます。

 

 そこで「糖尿病は治らない。インスリンを今後、ずっと打ち続けなければならない」と初めて聞いて衝撃を受けます。「聞いてないよ!」と言う人も多いですが、すでに手遅れです。

 

 糖尿病は完治できない病気です。しかし、十分に予防可能な病気なのです。

( 週刊FLASH 2021年11月30日・12月7日合併号 )

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