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樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』プーチン大統領の “異変” を読み解く…無表情、おちょぼ口の意味は?

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2022.03.21 06:00 最終更新日:2022.03.21 06:00

樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』プーチン大統領の “異変” を読み解く…無表情、おちょぼ口の意味は?

焦りや不安が止まらない

 

■プーチンは病気なのか?

 

 私の見立てを整理すると、無表情、動作が少ないなど、メンタル疾患や脳疲労の際に見られる徴候が、プーチンにも見られます。セロトニンが低下し、活動性が低下した状態。精神的に疲労がたまり、不安や焦燥が強まっていると推測されます。

 

 重要なのは、メンタルが弱っている人のほとんどに「取りつくろい」が見られることです。自分が精神的に弱っていることを他人に悟られないようにするため、元気に振る舞おうとするわけです。

 

 自分の演説は、全世界の数億人が見るに違いない。そんななかで「自分の弱さ」を露呈し、さらし者になるような事態は絶対避けなければならない。つまり、このプーチンの演説は、彼なりにベストに取りつくろった状態で臨んだはずです。

 

 しかし、それでも隠し通すことのできないおかしな徴候が山ほど見られる。となると、実際の精神状態は、この動画で見るよりも相当に悪いと推測されます。

 

 ただ演説中、プーチンの姿勢が比較的しっかりしている点も印象的でした。セロトニンが低下すると、姿勢が悪くなり、前屈み、猫背になります。プーチンの姿勢は、やや背筋が丸みを帯びているものの、そこまではひどくないことも観察されます。

 

 ネットには、パーキンソン病を疑う記事も出ています。2020年、英大衆紙「サン」が「プーチンはパーキンソン病に罹っている」と報じ、ロシア政府がその報道を否定しました。

 

 しかし、「仮面様顔貌(かめんようがんぼう=仮面のような無表情)」、動きが乏しいなどの現在のプーチンの状態は、パーキンソン病の症候ともかなり合致します。

 

 また、パーキンソン病では病初期から認知機能や遂行機能の障害が生じます。具体的には、計画を立てて実行できない、問題解決能力の低下、思考転換できないなど、現在のプーチンに見事に一致します。

 

 ナチス・ドイツの独裁者、アドルフ・ヒトラーがパーキンソン病だったという説があり(小長谷正明著『ヒトラーの震え 毛沢東の摺り足』中公新書)、プーチンが同じ病気だとすれば精神科医としても関心が高まります。ただ、動画を見るだけでは、これ以上なんとも言えません。

 

 少なくとも1年前の会見と比べると、明らかに表情が乏しく、覇気、エネルギーも感じられず、「正常」「元気」とは言いがたいということです。

 

 そこに、ウクライナ侵攻が思いどおりに進まない焦り・心理的プレッシャー・疲労が加わり、精神的に不安定な状態になっている。結果として、正常な判断がしにくくなっているのではないか。現時点で、私はこのように考えます。

 

■人は追い込まれるとどうなる?

 

 プーチンの精神状態以上に、皆さんが注目するのは今後のプーチンの行動でしょう。人は追い込まれると「O−100思考」と「自暴自棄」の傾向が強まります。つまり、行動が「イチかバチか」になって、「自分はどうなってもいい」と投げやりになるのです。これは、とても恐ろしいことです。

 

 余裕のないプーチンの精神状態からは、冷静かつ政治的に正しい判断を下すのは難しい状況だと思われます。自暴自棄となり、「どうにでもなれ」と大量殺戮兵器を使用するという最悪の結末だけは絶対に避けねばならないーー。緊張はまだ続きそうです。

 

 

かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計60万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動

 

イラスト・浜本ひろし

 

( 週刊FLASH 2022年3月29日・4月5日号 )

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