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樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」非言語で「思い」を伝える3つの方法

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2022.04.18 06:00 最終更新日:2022.04.18 06:00

樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」非言語で「思い」を伝える3つの方法

非言語で「思い」を伝える3つの方法

 

 3月27日、米国アカデミー賞授賞式が開催され、村上春樹原作、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が、国際長編映画賞を受賞しました。

 

 これは、日本映画では『おくりびと』以来13年ぶりの快挙。私は映画ファンであり、村上春樹の大ファンでもあるので、この受賞はたいへん嬉しいことです。

 

 

『ドライブ・マイ・カー』は、妻を喪ったダメージを引きずる俳優で舞台演出家の家福(西島秀俊)が、女性ドライバー・みさき(三浦透子)との交流を通して希望を見いだしていく作品です。

 

 作品賞の呼び声も高かった『ドライブ・マイ・カー』ですが、惜しくも逃してしまい、同賞を受賞したのが『コーダ あいのうた』。助演男優賞、脚色賞と合わせて三冠受賞となった『コーダ~』は、聴覚障害者の家族の中で唯一の健聴者である少女が、「歌うこと」を夢みて自分の人生を歩きはじめる作品です。

 

 この2作品は、一見共通点がなさそうに思えるのですが、じつは両作品ともに「コミュニケーション」、特に「非言語コミュニケーション(以下、非言語コミュ)」というテーマを扱っているのです。

 

「言語的コミュニケーション」とは、早い話が、言葉の意味や内容のやり取りです。

 

 一方、非言語コミュとは、外見、表情、視線、姿勢、服装、身だしなみ、ゼスチャーなどの視覚的情報、声の調子、声の強弱、声質などの聴覚的情報、匂いや香りなどの嗅覚情報、料理などを介した味覚情報といった、言語的コミュニケーション以外の幅広いやり取りが含まれています。

 

■言葉を交わさなくても思いは伝わる

 

『ドライブ・マイ・カー』の家福とみさきは、非常に無口なタイプ。同じ車に何時間も一緒に乗っているのに、会話は二言三言しか交わしません。しかし、毎日の送り迎えをするなかで、本当に少ない言葉のやり取りでも、2人は心を通わせ、共感し合い、心理的に接近し、互いの心の傷を癒やす関係性へと深まっていくのです。

 

 家福が演出する演劇は、さまざまな国籍の俳優が出演し、それぞれの母国語で演じるという多言語劇。劇中劇というかたちで上演されるこの『ワーニャ伯父さん』が、非常に感動的です。それは、言語を超えた非言語で伝える力が強いからです。「思い」「情熱」「情念」などは、言語的に理解できなくとも、私たちの心を打つのです。

 

『コーダ あいのうた』では、「音」のない世界で生きる聴覚障害者の生活や仕事のたいへんさが丁寧に描かれます。

 

 手話ができない人とは、筆談でコミュニケーションを取るしかない。「話し言葉」なしで、自分の意見や考えを人に伝えるのがいかに困難であるかが理解できます。

 

 一方で、聴覚障害者は耳が聞こえないぶん、相手の表情や雰囲気を読む能力に長けています。そして、手話においても、たんに手の動作だけではなく、大きなゼスチャーや、緩急をつけたわかりやすい表情で伝えます。言語的に伝えられないもどかしさと、その逆の非言語の力というものが、対照的に描かれるのです。

 

 この2作品がアカデミー賞を受賞したという結果を見て、私は、ついに「非言語の時代が来た!」と思いました。一方で今回のアカデミー賞では、妻を “侮辱” されたウィル・スミスが、司会のクリス・ロックに平手打ちをくらわす “事件” も勃発。「言葉」は、誤解を招きやすく、ときに暴力にも発展しかねないという、言語コミュの難しさも感じました。

 

 非言語コミュを上手に使うことで、人間関係を改善したり、ビジネスに役立てることも可能です。というか、多くの人は非言語コミュを意識しないために、「人間関係のトラブル」や、コミュニケーション不全による「仕事のトラブル」を引き起こしているのではないかとさえ思うのです。

 

 そこで今回は、非言語コミュを使いこなし、コミュニケーション上手になる3つの方法をお伝えします。

 

( 週刊FLASH 2022年4月26日号 )

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