■(1)「どう話すか」に力を入れる
結婚式でスピーチを頼まれた際、何を話そうか悩む人は多いと思います。本番でガチガチに緊張し、何を話しているのか、自分でも途中でわからなくなったという人もいるでしょう。
このように、どんなに事前に話す内容を準備しても、その結果、どんなにすばらしい話をしても、ガチガチに緊張してしまってはまったく伝わりません。
結婚式においては、笑顔で明るく話すことのほうが何倍も重要なのに、「何を話すか」ばかりに気を取られて、「どう話すか」については気が回らなくなっているのです。
このように、多くの人は言語にばかり注意を向けて、非言語には無頓着です。しかし「非言語コミュに注意しよう」と思うだけで、スピーチはすぐに上達します。
具体的には、外見、表情、ゼスチャーなどの非言語を意識して、本番さながらのリハーサルを2、3回おこなう。たったそれだけで、緊張せずに、楽しい雰囲気で、スラスラと話せるはずです。
仕事でプレゼンをする場合、「原稿を書く」「スライドを作る」作業に準備時間の9割以上を費やす人がほとんどだと思います。
その時間を多少削ってでも、非言語を意識したリハーサルをおこなうほうが、あなたの印象は何倍もよくなるでしょう。
■(2)「見た目」を重視する
心理学で有名な「メラビアンの法則」があります。言語、視覚、聴覚のそれぞれにおいて矛盾したメッセージが発せられたとき、どれを信用するかという実験に基づく法則です。この実験では、視覚情報が55%、聴覚情報が38%、言語情報が7%という結果となりました。
つまり、あなたが「最高の内容のプレゼン」をおこなったとしても、「ヨレヨレのスーツ」を着ていたなら、聞き手は「なんて信憑性のない話だ」という印象になってしまうのです。下向きでボソボソ小さな声でプレゼンした場合も同じです。
このように、話の内容がいくらよくても、「見た目」や「しゃべり方」しだいで台無しになってしまう。政治家の国会答弁がいい例です(笑)。
逆に、「たいしたことのない内容」でも、堂々と話す、笑顔で話すだけで、好印象になるのです。
もちろん「最高の内容(言語)」×「最高の非言語」でおこなえば、最高のプレゼンができます。ゼレンスキー大統領の演説が、それに当たるでしょう。彼の必死さは、言語以上に「目の輝き」や「全身の雰囲気」から伝わってくるのです。
どんなにすばらしい仕事をしても「見た目」が冴えなければ、まったく評価されない。「自分は見た目で損をしているのでは」という心当たりのある方は、まずは、ファッションや身だしなみから変えてみてはいかがでしょう。
■(3)「情熱」をこめる
非言語は、その人の内面から滲み出てくるもの。つまり「嘘」や「取りつくろい」をしても、すぐにバレてしまうのです。たとえば、入社試験の面接で、どれほど優等生的、模範的な回答をしても、自分の本心からのものでなければ、「事前に用意しておいた内容をしゃべっているだけ」と、面接官に見抜かれるはずです。
その人の内面は、非言語的に外面に表われるのです。これは、裏を返すと武器となります。あなたの内に秘めた「情熱」や「思い」。そうしたものをしっかりと持っていれば、非言語的に相手に伝わる! ということです。
自分はどういう人間なのか?
何を伝えたいのか?
うわべを飾った自分ではなく、本音の、あるいは本気の自分で、人とぶつかる。そうしてはじめて、あなたの非言語のパワーによって、相手は突き動かされるのです。
非言語は人を動かす。そして、世界 も動かす。ゼレンスキー大統領が、それを証明していますね。あなたも、プレゼンやスピーチで、見た目やしゃべり方を意識するだけで、 圧倒的に伝わる話し方に変わります。
かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計60万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動
写真・福田ヨシツグ
イラスト・浜本ひろし