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樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』五月病に打ち勝つ方法~メンタル疾患は未病で食い止めろ
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2022.05.02 06:00 最終更新日:2022.05.02 08:46
5月のゴールデンウイーク明けあたりから、体調不良、気分がすぐれない、やる気が出ない、会社に行きたくないなどの症状を呈する人が急増します。それらを総称して「五月病」と呼びます。
新入社員がなるイメージが強い五月病ですが、転勤、転属などで環境に大きな変化があったベテラン社員などにも起こります。人間というのは、環境の変化に弱いもの。
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新しい仕事、新しい人間関係に対応できない。あるいはそれに対応しようと、精神的なエネルギーを消耗する。ストレスや疲れの影響が、ちょうど1カ月後くらいに現われるというわけです。
■4人に1人が経験
五月病など他人事と思う人がいるかもしれませんが、それは完全に間違いです。チューリッヒ生命が2018年4月にビジネスパーソン1000人を対象におこなった調査によると、「これまでに五月病になったことがあるか」との質問に、23.3%が「ある」と回答しました。
つまり、約4人に1人が経験しているのです。仮にあなたがならなかったとしても、あなたの会社の誰かがなる可能性は非常に高いのです。
また、厚生労働省の調査によると、「新入社員の3人に1人が、入社後3年以内に離職」「そのうち、4割~5割が就職して1年以内に離職」「新入社員の半数以上がストレスを感じ、その7割が入社後1カ月以内の早い段階でストレスを感じている」といいます。心身の不調が、新入社員の離職の大きな原因のひとつになっているのです。
入社後1カ月以内のストレス状態、つまり、五月病を放置すると、うつ病、適応障害、パニック障害などを発症して、離職の原因につながります。
■五月病は「うつ病」の前段階
五月病を放置すると、うつ病になるケースが多いので、ここではうつ病を例に挙げて話します。
心身ともに健康な人が、ある日、突然に「うつ病」を発症するということはありません。仕事や人間関係の問題に悩み、ストレスを抱えつづけた結果、体がだるい、気分がさえない、眠れない、食欲がないなどの徴候が現われ、徐々に悪化していく。
やがて、何もしたくない、何もできない、会社にも行けない状態になると、うつ病を発症していることになります。ストレスに直面してから発症までは1カ月から3カ月以上かかる場合もあります。
このように「健康」と「病気」の間には、「前段階」の状態があり、それを東洋医学では「未病」と呼びます。うつ病の場合は、「うつ病予備軍」「前うつ」「軽うつ」「脳疲労」などと呼ばれます。
「未病」と「病気」の最大の違いは、未病は「可逆的」であり、「病気」は「不可逆的」であるということ。つまり、いったん病気になると、簡単には治らないという状態に陥ります。
五月病というのは、軽度の心身の不調、つまり、メンタル疾患の前段階の状態です。その段階では、生活習慣の改善をきちんとおこなえば、1~2週間で治ることも多いです。しかし、いったん「うつ病」になってしまうと、寛解(症状の大部分が消失する)まで、半年から1年以上かかる場合も多くあります。
「うつ病は心の風邪」といいますが、これは製薬会社が抗うつ薬を販売するために作ったプロパガンダで、私はまったく賛同できません。
うつ病の寛解率は90%、再発率50%といわれます。寛解率90%なら「ほとんどの人が治る」と思うかもしれませんが、10人に1人は難治化、遷延(まんえん)化する。つまり、なかなか治らない状態となります。そして、仮に寛解したとしても、2人に1人が再発するのです。
■五月病は絶好のチャンス!?
うつ病は一度かかると、非常に治りづらい病気です。だから、未病、すなわち「前うつ」「軽うつ」の段階で発見して、早期に治療する。可逆的な「未病」の段階で治すというわけです。これこそが、究極の予防戦術です。
職場でのメンタルヘルスにおいては、五月病の段階で対応、対処して、それ以上悪化させないことがきわめて重要です。メンタルの不調というのは、本人自身ではなかなか気づきづらいものなので、上司や先輩などがいち早く気づいてあげる必要があります。
視点を変えれば、重大なメンタル疾患に至る前の早期発見、早期治療のうえで、「五月病は絶好のチャンス!」というわけです。
■5つの徴候
五月病の徴候ですが、前うつ、軽うつの徴候とほぼ同じで、以下のような症状が認められます。
(1)体の調子が悪い。全身の倦怠感。疲れがとれない、疲れやすい。肩こり、頭痛がひどい
(2)睡眠の質が悪い。食欲低下
(3)不注意、ミス、忘れ物が多い
(4)人と会いたくない。遊びに行くのがめんどう。人と会っても楽しくない、むしろ苦痛
(5)不安、心配、ネガティブな考えばかりが浮かんでくる
これらに加えて、気分の落ち込み、気分が憂うつ、何もしたくない、会社に行きたくないといった症状が加わると、すでに「うつ病」を発症している可能性が高まります。