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樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』五月病に打ち勝つ方法~メンタル疾患は未病で食い止めろ
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2022.05.02 06:00 最終更新日:2022.05.02 08:46
■3つの対処法
次に、五月病の対処法についてお伝えします。
(1)睡眠と規則的な生活
先日居酒屋で飲んでいると、私の後ろの席から新入社員と思われる人の声が聞こえてきました。「俺は会社で絶対に成功する! 同期入社で1位になる! だから4時間睡眠も辞さない!」と情熱たっぷりに話しているのです。
こういう人が、五月病や「燃え尽き症候群」になりやすいので、とても心配になりました。
「睡眠を削る」というのが、メンタルにとって最もよくない生活習慣です。睡眠時間が6時間以下の人は、十分な睡眠をとっている人に比べて、うつ病が5.8倍、認知症が5倍、自殺が4.3倍と、リスクが跳ね上がります。
眠りにつく時間が不規則になるのも、体内時計がズレるのでよくありません。特にゴールデンウイークの間は夜型の生活になりやすいので要注意。睡眠不足と昼夜逆転のダブルパンチで、メンタル疾患に向けて新幹線並みに加速します。
心身の不調を感じる人は、夜更かしをやめて、なるべく7時間半以上の睡眠をとることをおすすめします。
(2)禁酒
ストレスを抱えている人ほど、「お酒でストレス発散だ!」と飲酒量が増えます。しかし、飲酒によってうつ症状は、間違いなく悪化します。
また飲酒は、睡眠の質を悪化させます。お酒はストレス発散にはならないどころか、メンタルを悪化させるということが、多くの研究で示されているのです。
(3)ガス抜き
まわりに五月病が疑われる人がいたら、まずは話を聞いてあげてください。「相談」というと「アドバイスをしなければ」と思い、ハードルが高くなります。ただ話を聞くだけの「ガス抜き」でいいのです。そうして、ざっくばらんに思っていることを話してもらうだけでも、相手のストレスの大部分は発散されます。
自分は五月病かもしれないと思う人は、とにかく誰かに「今の悩み」を話してください。孤独は、メンタルを悪化させます。
同期入社の人は、話し相手としては最適です。あなたと同じ悩みを抱えていることが多いからです。
生活習慣の改善(睡眠、運動、朝散歩、休息、禁酒)、ガス抜きなどを1週間ほどおこない、気分や体調の改善が見られるのならよし。もし、心身の不調が次第に悪化していくようであれば、精神科を受診するべきです。
繰り返しになりますが、五月病の段階であれば、多くの場合は「未病」なので、すぐに治ります。しかし、一度「病気のステージ」まで悪化させてしまうと、治るのに、場合によっては半年、1年かかることもあります。それでも治ればいいのですが、寛解しないまま休職、離職に至る人も少なくありません。
五月病はたいしたことはない、と甘く見ないほうがいいです。メンタル疾患への「第一堤防」として、しっかりと対処することを心がけてください。
かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計60万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動
イラスト・浜本ひろし