「朝日新聞」で将棋を担当する村瀬信也記者も、藤井五冠の影響力に驚かされた一人だ。
「『朝日新聞』は、ツイッターで各対局の様子を呟いているのですが、これまででもっとも見られたものは、藤井さんが2021年10月の竜王戦第2局で選んだ『いと達』のもなかのツイートでした。商品写真とともに投稿すると、リツイートは1200回を超え、いいねも2500回以上。
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ふだんはそれぞれ1000回にも達しません。やはり、かわいいくまの見た目のインパクトが大きかったのでしょう。
また、2021年9月の叡王戦第5局で食べたのが、『コロコロしばちゃん』。対戦相手の豊島将之叡王(当時)と2勝2敗で迎え、藤井さんが勝てばタイトル奪取、豊島さんが勝てば防衛という最終局です。将棋も一進一退の展開でした。そのなかで注文したのがこのスイーツで、緊迫した雰囲気とのギャップで場が和んだように感じました。
藤井さんは好奇心旺盛で、未知のスイーツを試してみようという気持ちで注文しているようにみえます。これは将棋で、かつて誰も指したことがない独創的な新手を指す姿勢に通じていると思いますね」
これまで藤井五冠との戦績は2勝2敗の、若手強豪・佐々木大地七段(26)が解説する。
「対局中は常に頭を使っているので、どこかでオンとオフを切り替える必要がある。甘いものを口にするということは、気持ちをリフレッシュする意味もあります。わずかな時間でも、気分転換して再び盤を見ると、その前と景色が違って見えたりすることがある。すると、違う手が浮かんでくるもの。なので、棋士にとっておやつは非常に重要です」
往年の名棋士たちも、この“おやつタイム”を大切にした。たとえば相手がミカンを3個食べたら、自分は4個と、目の前で競っていたという。
ネット中継が盛んな現在、棋士たちの“将棋めし”や“おやつ”の中身は、リアルタイムで必ず紹介される。観る将はじめ熱狂的なファンは、それが報じられるやいなや店へ急行したり、ネット注文して楽しむのだ。
藤井五冠の“新手”で、次にヒットするのはどこのスイーツだ?