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【世界最悪の旅】タイのゲリラ豪雨でバンガロー水没の危機

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2017.04.17 17:00 最終更新日:2017.04.17 17:00

【世界最悪の旅】タイのゲリラ豪雨でバンガロー水没の危機

写真:AFLO

 

 最近の異常気象で、日本でもゲリラ豪雨や洪水が頻繁に起こるようになったが、筆者も一度タイで経験したことがある。
チャン島で2人で泊まった宿は、ビーチからさらに道を挟んだ反対側の、山の方にあるバンガローであった。

 

 一般にビーチに面したバンガローやレストランと比べて、そうでないものは3割程度安い。とは言っても設備は同じで、部屋は清潔で水回りも悪くない。

 

 滞在3日目くらいに、出稼ぎと思われるタイ人4人組が隣室に入った。なぜ仕事だと思ったかというと、全員が30代以降の男性で、自炊道具を持ち込んでいたからだ。しばらくすると彼らとは会うと挨拶するくらいの仲になった。

 

 午後の遅い時間になると決まって激しいスコールが来た。雨はすぐに止むことは珍しく、たいがいは夜の8時くらいまでは降り続いた。夕食に出かける頃、我々は決まって憂鬱に空を見上げたものだ。

 

 その日は普段よりもずいぶん激しい雨が降った。午後から降り始めた雨はそのまま止むこともなく、勢いが衰えることもなかった。夕食の時間になったが、その激しい雨の中を出かける気にもならず、小降りになるのを待った。となりのタイ人は雨がひどくなる前に連れ立って食事に出かけていたので、あのとき出かければよかったと、内心後悔した。

 

 そうしているうちに、受付のお姉ちゃんがずぶ濡れになってやってきて、「バンガローを変わってほしい」と言い始めた。この大雨の中を荷物を持って引っ越せというのか。我々は内心ムッとした。どんな上客が来たのか知らないが、せめて雨が上がってからにしろよ。

 

 お姉ちゃんはなにか言いたそうな顔をしたが、それでもニコッと笑って行ってしまった。お姉ちゃんのそのときの表情の意味がわかったのは、それから30分ほどしてからである。

 

 雨はさらに降り続いた。トタンを叩く雨足はまったく衰えることがなく、ひんやりと湿った空気がだんだん肌寒く感じてきた頃、同宿者が頓狂な声をあげた。

 

「水が逆流してる!」

 

 なんと、排水口から、ごぼごぼと水があふれ出しているのだ。筆者はあわててバンガローの外に出てみた。そして飛び上がるほど驚いた。バンガローの前に濁流が出現していたのだ。そのときになって初めて我々は事態の深刻さに気がつき、そこらへんに放り出してある荷物を猛然とカバンに詰め込んだ。こりゃあ、間違いなく床上まで浸水するぞ。

 

 雨はさらに激しく降り続き、水位は刻一刻と上がっていった。荷物がほぼまとまったところで、ドアからの浸水が始まり、排水口から逆流した水と合流して、部屋の床が水びだしになった。母屋からスタッフのおじさんが助けに来てくれて、我々は濁流と土砂降りの中を荷物を担いで部屋を飛び出した。

 

 ずぶ濡れになったまま、反対側の高床式のバンガローから振り返ると、濁流はものすごい勢いで海に向かって流れ落ちていた。そしてそのときになって初めて、筆者はとなりのタイ人が食事に行ったまま帰ってきていないことを思い出した。彼らの部屋はベッドの足がほぼ隠れるくらいまで水没しており、彼らが持ち込んだ鍋釜がプカプカと浮いていた――。
(旅行ライター・中山茂大)

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