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イノベーションを日本から! 依頼が集まるソニー発スタートアップ支援の中身

ライフ・マネー 投稿日:2022.06.05 20:00FLASH編集部

イノベーションを日本から! 依頼が集まるソニー発スタートアップ支援の中身

きっかけは平井一夫前社長だった(写真:ロイター/アフロ)

 

 ソニーグループが運営する「ソニー・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム(SSAP)」は、日本ではかなりユニークである。

 

 発端はソニー前社長の平井一夫(2012~2018年社長在任)が、ランチミーティングで聞いた社員の声から始まる。平井は、赤字のエレキ事業に大鉈を振るうなど大胆な事業再構築を進めた。

 

 

 しかし当然、リストラは社員のモチベーションをガタガタにした。ランチミーティングでは、ソニーに夢を持って入ってきたのに、新しいアイデアを出しても赤字だからと誰も取り合ってくれない、という声が多かった。

 

 平井は、暗いムードの中で社員の挑戦への情熱が溜まっているのを知り、何とかしたいと感じていた。そんな折、30歳代の若手から、社内の新規事業のアイデアを集めて事業化する支援システムを作りたいという提案が上がってくる。平井は、提案者の小田島伸至に実行案の具体的な取りまとめを依頼した。

 

 やがて小田島が社内の声を徹底して拾い、案をまとめてきた。それには「社長直轄の位置づけ」「アイデアは社内だけでなく外部の起業も交えたオーディションの実施」「事業の実現を加速する支援の仕組み」など、プログラムの骨子が練られていた。

 

 社長直轄を条件にしたのは、従来のソニーでは新規プロジェクトが動き出しても、トップの関与度が低く、いつの間にか自然消滅したケースが多かったためだ。ましてプロトタイプの試作一つをとっても、社内のいろいろな部門の協力が必要になる。トップの強力な支援なくして軋轢や抵抗を超えることはできない。

 

 本社1階に作られた社内外のコラボレーションのためのスペース「クリエイティブラウンジ」には、試作のための3Dプリンタなど機材も置かれている。

 

 平井はここに努めて顔を出し、「平井が力を入れている」というメッセージを送り続けた。こうして立ち上がった「シード・アクセラレーション・プログラム(SAP)」に、平井はもう一つ注文をつける。

 

「SAPで新しいビジネスを作るだけではなく、SAPという仕組みそのものをビジネスとして売り込んでいけ」(※1)

 

 SAPは様々な仕組みを織り込んで現在のSSAPになるが、ここには様々なサービスの選択肢が用意されている。

 

 例えば、起業志望の学生向けにインターンシップ制度があり、起業に必要なトレーニングを実施している。参加者がソニーに入社することがあれば、経験を積んだうえで社内起業家として支援する道もある。その際に「副業としてソニーで週2日働き、あとは自分の事業に集中する」といった働き方も可能だという。「若者へのリスペクト」が感じられる取り組みだ。

 

 起業のトレーニングは、大学とのコラボでも進められた。東大や東工大、東京芸大、立命館大などの学生向けにソニーが起業講座をシリーズで提供し、事業化案が出てくれば、他大学とのヨコ連携も含めてサポートする。

 

 メニューも事業アイデアの創出支援から、事業化のプロセスすべてに関わり、組織作りやマネジャー育成の支援まで幅広くサポートするプログラムになっている。

 

 SSAPのサイトによれば、2022年3月時点で、19件が事業化に結実した。その中にはソニー社内で事業化したもの、LIXILや京セラなど他社で事業化されたもの、さらに上場に成功した例も出ている。

 

 2019年にマザーズ上場(1年後に東証1部へ)に成功したSREホールディングス(旧ソニー不動産)である。SREはAIテックを使った不動産の会社であり、最初は「えっ、ソニーが不動産?」と訝しく見られたが、ソニーらしいユニークさを持つ会社になっている。

 

 ソニーの事業は、エンタテインメントからエレキまで幅広い。したがって開発や生産に至る広いアセットでサポートできる。必要に応じて他社との連携もコーディネートする。さらにソニーという日本を代表するブランド力も魅力的な要素だろう。

 

 新規事業のサポートをしてほしいという他企業からの依頼も多くなり、2018年からは外部への有料サービスを始めた。平井のリクエストを現実にして、ノウハウをパッケージ化して提供しているのだ。この契約実績はNPOも含めて広く20業種、事業化に結びついた件数は140超に及ぶという(※2)。

 

 SSAPの取り組みは途上であり、まだ規模も大きいとはいえない。ただ、このプログラムがソニーグループにもたらす有形・無形の効果は計り知れないかもしれない。

 

 ソニーグループには多くの金融機関や企業、大学と組んで投資ファンドを組成する「ソニーベンチャーズ」という組織もある。ベンチャーのハブを目指すソニーグループのチャレンジに拍手を送りたい。

 

 日本企業の中には、ソニーグループと似た取り組みを進める企業が、リクルートやDeNA、サイバーエージェントなど少しずつ出てきている。イノベーションへのトライは多産多死である。こうした試みを「ソニーだからできること」と片付けずに、多くの日本企業がベンチマークすべきではないか。

 

※1:平井一夫『ソニー再生:変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」』(日本経済新聞社、2021年)より。
※2:SSAPのホームページより(https://sony-startup-acceleration-program.com/)。数字は2022年3月末までの実績値。

 

 

 以上、山根節氏、牟田陽子氏の新刊『なぜ日本からGAFAは生まれないのか』(光文社新書)をもとに再構成しました。アップル、グーグル(アルファベット)、フェイスブック(メタ)、アマゾン各社の成長の軌跡から、日本の希望の灯を探します。

 

●『なぜ日本からGAFAは生まれないのか』詳細はこちら

 


( SmartFLASH )

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