6月25日現在、ビットコインの価格は「1BTC=280万円台」で推移し、2021年11月につけた最高値777万円の3分の1と、大暴落のなかにある。
もっとも、これまでもビットコインは、何度も大暴落しては急上昇を繰り返してきた。いまは底値で、買いどきなのか。
立場は違えど圧倒的な実績を持つ、4人の研究者に聞いた。
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東洋大学情報連携学部学部長の坂村健教授(70)が、今回の下落について語る。
「もともとビットコインが高値をつけていたのは、『暗号資産』分野の“先行者”として、もてはやされていたにすぎません。明らかにバブルでしたので、いま暴落しているのは当然だと思います」
1980年代からコンピュータ科学者として世界の先頭を走ってきた坂村氏は、ビットコインの特徴をこう語る。
「たとえば金や株式などの金融資産は、希少な製品の原料になったり、会社の支配権を得られたりといった“外部の価値”と結びついています。
それに対し、ビットコインは“外部の価値”と連動しない孤立した存在です。『複製不能』で『生成が困難』であるという機能そのものに希少価値が生まれ、買う人がいるわけです」
今後、ビットコインの価格はどうなっていくのか。
「個人的には、価格は『下がる』と思います。ビットコインに次ぐ存在である『イーサリアム』は、クラウド上でソフトウエアを利用できる権利を得られたり、一点もののデジタルアート(NFT)の知的財産権を保障したりしており、暗号資産でも“外部の価値”と結びつく機能を持っているものもあるのですが……」(坂村氏)
さらに今後は、国家が主導する「デジタル元」や「デジタル円」も登場してくる。
「それらと違い、“外部の価値”を持たないビットコインは、いかにも中途半端です。ブロックチェーン技術の利用がさらに広まっても、今後ビットコインからは徐々に人が離れていき“孤立した価値”を人が認めなくなった瞬間、価値はゼロになると思います」(坂村氏)
一橋ビジネススクールの楠木建教授(57)も坂村氏と同様、今後は“ビットコイン離れ”が起きると予想する。
「ビットコインに投資する人は、短期的な値上がりに期待している人がほとんどです。しかしボラティリティ(値動き)が大きいと、『交換可能性』や『価値の尺度』などの“通貨”としての機能が使いものにならなくなるというジレンマがあります。
でも、いまは金も急上昇し、高値をつけています。それなら金のほうがいいですよね(笑)。今後ビットコインは、株式や債券と比べて遥かにマイナーな金融商品として、ずるずる存続していくのだろうと思います」
ビットコインの基盤となるブロックチェーンの技術は堅牢だが、思わぬ落とし穴があると楠木氏は言う。
「ブロックチェーンは、中央銀行のような信用を担保とせずに経済取引ができる優れた技術で、『信用不要』という哲学で言い表わされます。しかし、この技術に引き寄せられてきたのが、暗号資産界でいちばん“信用できない奴ら”なんです(笑)」
5月には暗号資産「テラUSD」の姉妹通貨「ルナ」の価値が100万分の1に暴落し、6月には暗号資産の銀行である「セルシウス」が破綻状態になった。
たとえばビットコインをセルシウスの口座に預けると、ビットコインを元本として利息が得られたのだが、いまは引き出すことすらできなくなっているのだ。
これらはいずれも、暗号資産を貸し借りする金融サービス「DeFi」を標榜する「怪しげな金融業者」(楠木氏)だ。
「テラは『ドルの価格と連動して安定的』であることをウリにしていました。しかし、ちょっとした値動きでドルの価格と乖離してしまい、一直線に下落してしまいました。
こうしたドルとの連動が不可能であることは、金融の『いろはの“い”』です。一部のそういうインチキ商売は、もうすぐ化けの皮が剥がれると思います」(楠木氏)