■緻密を極めるマスクは「3日に1枚が限度」
ちなみに、同じくマスクを制作している四代目タイガーマスクについてもこう明かす。
「僕以上に佐山先生を崇拝していると思います。そして几帳面ですね。マスクには後頭部に紐を通すパーツがありますが、最後の穴まできっちり締めないと気がすまないという感じで。ちょっとしたポイントにも細かいこだわりがあって、それをクリアしないと納得されないので、マスク職人として技術を磨かれます」
そんな中村氏のマスク作りのポイントは、パーツを配置する位置の精密さにあるという。
「1ミリどころか0・何ミリかの違いで、まったく違った顔になってしまうんです。細心の注意が必要なため、タイガーマスクのマスクは作れても、3日に1枚のペースです」
最近は、中村氏を困らせる粗悪なコピー品やプロが作った偽物品が出回っているという。タイガーマスクというブランド力があるからか、素人がマスクを作って、個人で楽しむことは昔から珍しくない。しかし、あたかもオフィシャル品のように装った代物が、オークションサイトなどで販売されているというのだ。
「やはり、タイガーマスクに憧れるのであれば、実際に本人が被った本物や公認のマスクを手に入れていただきたいですね」
タイガーマスクへの並々ならぬ敬意と愛情を注ぐ中村氏の今後の目標はなんなのか。
「ずっとタイガーマスクのマスクを作り続けることです。引退はありません」
リング上で輝くスーパーヒーローの “黄金のマスク” は、中村氏の手によって、これからも輝きを放つことだろう。
なかむらゆきひろ
1966年10月30日生まれ 三重県出身 2003年、三重県津市に「プロレス・マスク・ミュージアム」を開設し、’11年に東京・水道橋に移転した(現在は休館中、年内リニューアルオープン)。中村氏が手がける初代タイガーマスク公認マスクは「MASK BANK」(https://maskbank.shop-pro.jp/)にて購入可能
写真・大川 昇
取材&文・入江孝幸