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樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』職場の人間関係を深めない方がよいワケ
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ビジネスマンの悩み事でもある
■みんなと仲よくすることは時間の無駄
かくいう私も、精神科医になりたてのころは「職場のコミュニケーションは大切だ!」と思い、周りのみんなと仲よくすることを心がけていました。そうすると、半年くらいたつと、コミュニケーションも円滑になり、よい関係を築くことができたのです。
しかし、その矢先に、転勤の辞令……。せっかく多くの時間と精神エネルギーを費やして良好な人間関係を構築しても、その瞬間にゼロにリセットされ、転勤先でまた一からやり直さなければならなくなるわけです。そこから私が学んだ教訓は、職場の人間関係は深めるな! です。
職場の人間関係は、「マイナス」でなければよいのです。職場は「仲よし同好会」ではありませんから、仕事さえうまくいくならば、無理して全員と仲よくする必要は、まったくないのです。
しかし、多くの人は、ソリの合わない人が職場に1人いるだけでストレスを増幅させ、場合によっては「うつ」になったりします。転職を考える人もいますが、どこの職場にも「攻撃星人」が1割は存在するのですから、転職先にそういう人がいないという保証は全くないのです。
■特定の数名とつながりを深める
職場の人間関係は深めるな―これは、職場の誰とも仲よくする必要はない、という意味ではありません。好意の1対2対7の法則に従えば、あなたの職場にはあなたを嫌いな人もいますが、あなたを好きな人もいるはずです。あなたと気が合う人、心から本音を話せる人のことを、私は「応援者」または「相談者」と呼んでいます。
同じ部署に1人でも、応援者や相談者がいれば、人間関係におけるストレスは緩和されるし、互いに応援や相談をし合うことで、仕事もうまくいく可能性が高まります。
時間は有限です。その貴重な時間を、攻撃星人のために使うのか。それとも、応援者のために使うのか。どちらが、有効な時間活用といえるでしょう。後者であることは言うまでもありません。
とはいえ、攻撃星人から「悪口」や「嫌み」で日々攻撃されているとすれば、それはかなりのストレスです。その攻撃星人が自分の上司だとしたら、無下に受け流すわけにもいきません。
■「攻撃星人」は「親切」で撃破する!
ウルトラマンは必殺技「スペシウム光線」で怪獣を撃退します。同様に攻撃星人を撃退する必殺技もあります。それは、「親切」です。
最新の脳科学研究によると、人に親切にすると、親切にした人とされた人の両方で、オキシトシンが分泌します。オキシトシンは、本連載に何度も出てきたので、もうおわかりですね。そう、愛・つながりのホルモンです。つまり、オキシトシンが分泌するということは、あなたに対する相手の好意度がアップする、ということです。
あなたを攻撃する人にあえて親切にすることで、相手の「嫌い」を「好き」に変えることができるのです。
攻撃星人の最大の好物は、「ネガティブエネルギー」です。攻撃星人は、あなたが嫌な表情をしたり、真顔で反論したりすると、楽しくてしょうがありません。つまり、ネガティブにネガティブで返すと余計に攻撃を激化させる恐れがあるのです。
逆に、笑顔で「ありがとう」と返すと、攻撃星人は拍子抜けします。攻撃してもおもしろくないので、次第に攻撃をしかけてくることはなくなるでしょう。
攻撃星人にネガティブな反応をしてはいけません。親切と感謝の必殺技で、撃退しましょう。
かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計60万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動
イラスト・浜本ひろし