■反対星人を仲間にする方法
会社や組織で新しい提案をしても、一蹴される。厳しく批判されて、バッシングされる。「会社のため」と思って提案しているのに、まったく相手にされない……。
こんなとき、どうすれば自らのチャレンジを反対星人に認めさせることができるのか? 言い換えれば、反対星人を仲間にすることができるのでしょう?
今回、視察をした生産者の方に、「どのような方法で地域に溶け込み、地域の応援が得られるようになったのか?」という質問をぶつけたところ、返ってきたのが、「情報提供」と「他者(地域)貢献」という答えでした。
新しい農法を取り入れた場合、そのノウハウを独占するのではなく、ほかの農家にも教えてあげる。これが「情報提供」です。
実際、今回訪れた農家の方たちは、「教えてほしい」という人には、そのノウハウをすべて無償で教えていて、それがとても印象的でした。こうして、新しい農法を取り入れた結果、収益増や効率化に成功し、仲間が少しずつ増えてきたのです。
たとえば地域に10戸の農家があるとしたら、最初は1対9で圧倒的にチャレンジ星人が劣勢です。しかし、反対星人に対しても惜しみなく情報を提供することによって、チャレンジ星人陣営が1人ずつ増えていく。両者が4対6くらいの割合になると、「新しいことをやらないと損」というムーブメントが生まれて、一気に形勢が逆転するのです。
また反対星人は、年配の人や経験豊富な人が多い傾向にあります。今までの自分の経験や方法が「新しいやり方」によって否定されると、自分の人間性まで否定されるように感じてしまうのでしょう。そう思われないためにも、彼らへのリスペクトを忘れないこと。ときには、ヨイショしたり、持ち上げたりすることも必要です。
■ギブの精神で仲間が増える
地域のコミュニティに順応する方法は、ギブの精神です。うまくいった情報を地域に還元する。収益が増えたら、その一部を地域に還元する。これが「他者(地域)貢献」です。
チャレンジによって「地域全体に大きな利益をもたらす」「労働時間が減って楽ができる」というメリットを、何度も何度も説明し理解してもらう。たとえ、全員に100%納得してもらえなくても「反対はしない」という中立派の人を増やすことにはつながる。それが、既存のコミュニティのなかで新しいことを始めるコツだと私は理解しました。
会社で新しい企画などを提案する際にも、同じことがいえるでしょう。新入社員でも、仲間を増やして、「同期10人による連名での提案です」と言えば、反対星人の上司も無視できなくなるはずです。
その場でYESの返事を引き出せないとしても、すぐにあきらめるのではなく、チャレンジによるメリットを粘り強く伝えていくべきです。
誰でも会社や組織に属していれば、多かれ少なかれ反対星人からの攻撃を受けることはあるでしょう。それをかわすカギは「情報提供」と「他者貢献」。非常に学びの多い北海道視察となりました。
かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計60万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動
イラスト・浜本ひろし