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精神科医・樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」 エリザベス女王が健康で長寿だった7つの理由

ライフ・マネー 投稿日:2022.10.10 06:00FLASH編集部

精神科医・樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」 エリザベス女王が健康で長寿だった7つの理由

 

 さる9月8日、英国のエリザベス女王が96歳でお亡くなりになりました。心からご冥福をお祈り申し上げます。「人生100年時代」といわれますが、実際に女王のように健康で長生きできる人は、まだまだ少ないはずです。

 

 ではなぜ、エリザベス女王は、100歳近くまで健康寿命を保ち、生涯現役でいられたのか?

 

 その理由を、明らかになっている女王の生活習慣をもとに、精神科医の立場から分析してみます。

 

 

理由(1) 引退しない

 

 英国の君主として歴代最長となる70年にわたって在位してきたエリザベス女王は、亡くなる2日前まで笑顔で公務をこなしていたそうです。

 

 近年、資産運用などによって経済的に自立を果たし、早期リタイアを実現する「FIRE(ファイア)」という生き方に注目が集まっています。しかし、私は早期リタイアをまったく推奨しません。むしろ女王のように、生涯現役を目指すべきです。

 

 アメリカで100歳以上の長寿者を対象におこなわれた研究では、そのほとんどに当てはまる重大な共通点が発見されました。それは「現在働いている、あるいは最近まで働いていた」ということです。

 

 リタイアすると寿命が5年縮む、という研究結果もあります。つまり生涯現役こそが、長生きの重要な秘訣といえるのです。

 

理由(2) 人、動物、植物とのふれあい

 

 エリザベス女王は公務で多忙ななかでも家族と過ごす時間を大切にし、乗馬を楽しみ、愛犬との散歩を習慣にしていたそうです。愛犬家で知られる女王は、生涯に30匹以上のコーギーを飼育し、自身で繁殖もおこなっていました。

 

 人や動物との交流、ふれあい、コミュニケーションによって、オキシトシンが分泌されます。「愛・つながりのホルモン」であるオキシトシンは、セロトニン、ドーパミンと並ぶ三大幸福物質のひとつ。オキシトシンが分泌されると、幸せを感じるだけではなく、リラックス作用、免疫力アップ、ストレス解消、心筋梗塞や心臓疾患などの予防効果もあるといいます。

 

 また女王は、家庭菜園で野菜を育て、それらが食卓にのぼるのを楽しみにしていたそうです。植物とのふれあいでも、オキシトシンは分泌されます。

 

 人、動物、植物とふれあう時間を大切にすることで、幸福物質であるオキシトシンがたっぷりと分泌される。これは本当に大切なことです。

 

 さらに言うと、女王の趣味でもあった犬の散歩や乗馬が、いい運動になっていたことは間違いありません。

 

理由(3) 社会貢献

 

 9月19日におこなわれた女王の国葬の際、葬列が通るロンドンの中心部には、女王に別れを告げようと多くの英国市民が集まりました。彼らへのインタビュー映像を見ると、女王が英国民から愛され、心の支えとなっていたことがわかります。そして女王は、彼らのために人生を捧げたと言っても過言ではないでしょう。

 

 オキシトシンは、人に親切にするときにも分泌されます。ボランティア活動をする人は、しない人と比べて心臓血管系の病気リスクが低く、約5年長生きするという研究結果もあります。

 

 また「ボランティアハイ」という言葉があるように、ボランティア活動をする人は、しない人よりも元気で活動的であることが知られています。

 

 女王のように、他者貢献、社会貢献を中心に活動する人は、健康寿命を保ちやすいといえるのです。

 

理由(4) 「まいたの」精神

 

 朝起きてすぐのベッドティーにビスケット。そしてアフタヌーンにはチョコレート、ビスケット、ケーキなどのスイーツ。女王はこれらを忙しい日々のなかでもルーティンとして楽しまれていたようです。

 

「遊び」「楽しみ」の時間を確保したうえで、集中力を発揮して仕事をこなす。こうした在り方を、私は拙著『精神科医が教える 毎日を楽しめる人の考え方』(きずな出版)の中で、「遊びファースト」という言葉として紹介しています。おしゃれでユーモアにあふれていた女王は、まさに「遊びファースト」だったといえるでしょう。

 

 女王はファッションにもこだわりがありました。若いころはブルーやイエロー、グリーンなどの鮮やかな色彩が好みでしたが、年齢を重ねるとホワイトやシルバー中心のファッションに身を包んでいました。

 

 また、乗馬や愛犬の世話、ガーデニングなどにくわえて、写真や切手収集など、じつに多趣味でもありました。このような「旺盛な好奇心」や「新しいことへの関心」は、ひらめきや発想の脳内物質・アセチルコリンと関係しています。認知症になるとアセチルコリンが低下しますし、趣味を持たない人は認知症の発症リスクが高いという研究結果もあります。

 

 「毎日を楽しもう」という姿勢、つまり「まいたの」精神があれば、年齢を重ねても好奇心の火が消えることはありません。その結果、脳を若々しく保つことができるのです。

( 週刊FLASH 2022年10月18日・25日合併号 )

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