鵜呑みにしてはいけない「がん治療の都市伝説」を医師が指摘…“野菜スープでがん予防”は嘘！

 

「私が、東京大学病院の放射線科で助教を務めていたときのことです。あるがん患者さんが突然うちを受診しなくなり、数年後、がんが進行した状態で再び相談に来られました。その間、サプリでがんが治るなどと謳う “詐欺医療” を受けていたそうです。あのときは、悔しかったです」

 

　と語るのは、放射線治療専門医で、つくし訪問クリニック早良院長の上松正和氏だ。

 

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　2人に1人ががんになるといわれる現代日本。健康志向も高まるにつれ、がんに関するさまざまな “都市伝説” が生まれている。だが、検証のとおり、上松氏によれば、そのほとんどがたんなるデマであることがわかった。

 

「患者さんの心の不安につけ込み、お金を儲けようという医師が非常に多いんです。言葉巧みに『効く』と主張することは簡単で、医学的に『効かない』と証明することは難しい。撲滅するには、法的規制も必要です」

 

　がんの都市伝説を鵜呑みにするな！

 

＜治療編＞

 

■サウナや温浴でがん細胞が死滅する（　×　）

 

「嘘ですね。ハイパーサーミアという治療法の曲解だろうと思われます。体細胞の温度を上げることで、がん細胞を死滅させることができるという理論自体は正しく、電磁波で局部を温めることで死滅させる効果は確かにあります。ただし、精密機器を使って厳密におこなわれる必要があるもので、似たような機器を持つ医療施設やクリニックであっても、効果のない詐欺的医療がおこなわれていることが多いです」

 

■がんは、丸山ワクチンなどのがんワクチンで治療できる（　×　）

 

　有名な丸山ワクチンをはじめ、ワクチンによって免疫の働きを強化することによって、間接的にがんの増殖、浸潤、転移を阻むといわれているが……。「嘘です。確かに一時期は治療効果が期待されましたが、結局示されませんでした」

 

■がんは、モズクや昆布に含まれるぬめり成分「フコイダン」で治療できる（　×　）

 

　モズクやコンブ、ワカメなどの褐藻類に含まれるぬめり成分が、がんに対する抑制効果があると一部でいわれている。「嘘ですね。そもそも人を対象にした研究結果がありません。今後きちんとした研究がおこなわれれば、万が一の可能性はあるかもしれませんが、その数十倍、有害性などのリスクがありそうです」

 

■ヒメマツタケだけに含まれる成分ががんの治療に効果がある（　×　）

 

　ヒメマツタケだけに含まれている、とあるタンパク複合体が腸内環境を整え、がんにも勝てるようになるという説がある。「嘘です。少ない研究ながら、口唇炎や肝機能障害などが報告されていて、使用するほうが害は多そうです」

 

■野菜スープを飲めばがん予防になる（　×　）

 

「野菜摂取により食道がんの発症が抑えられるデータは出ていますが、普通に野菜摂取をしている人がスープを飲んだからといって予防効果が高くなるものではありません。とくにやめる理由はありませんが、65度以下にしましょう」

 

■クエン酸・重曹を摂取すればがんが治る（　×　）

 

　クエン酸・重曹によって、がん細胞における酸塩基平衡の異常を正常化するという主張。「嘘です。仮にがん細胞の酸塩基平衡が傾いていたとして、クエン酸や重曹の内服や点滴で正常化するという理論には無理があるし、正常化するとがん細胞が死滅するという説明にも無理がある」

 

■にんじんジュースを大量に飲むとがんが治る（　×　）

 

　にんじんジュースを多く摂取し、そのほか摂取する食事に気をつけたり、コーヒー浣腸をすることで免疫力が高まるという説がある。「嘘です。免疫力が高まりそうなメニューを素人が適当に並べているだけですよ。コーヒー浣腸はやめてください」

 

■グルタチオンという抗酸化物質を点滴するとがんが治る（　×　）

 

「まったく根拠がない嘘です。しばしば美容クリニックでも売っていますが、がんはおろか美容効果においても根拠がありません。原価がきわめて安く、自由診療で高く売れるため、すすめる医師が多いんです」

 

■高濃度ビタミンC点滴でがん予防ができる（　×　）

 

「嘘ですね。がん患者さんの間では関心が高いようですが、がんには効かないことが示されつつあります。少なくとも1回に数万円を出す価値はないはずです。ただ限られた条件においては疲労感を軽減するなどの報告もあるので、副作用に気をつける環境にあり、お金が余っている人であれば止めるほどでもありませんが……」

 

取材／文・吉澤理恵（医療ジャーナリスト）

( 週刊FLASH 2023年2月7日号 )