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38歳で起業も失敗続き「デザイナー」を志した男の人生の転機

ライフ・マネー 投稿日:2017.08.24 11:00FLASH編集部

38歳で起業も失敗続き「デザイナー」を志した男の人生の転機

写真:AFLO

 

 現在のメインの仕事はウェブ上の「グッズストアドットネット」によるノベルティグッズの卸販売である。この仕事にたどり着くまで、筑波了治さん(45)は大きな回り道をしてきた。2011年、38歳のときに起業するまでに4回の転職を重ね、起業してからもグッズストアに本格的に取り組んだのは3年後だった。

 

 そもそも筑波さんは多摩美術大学の出身で、デザイナー志望だった。ところがちょうど就職氷河期に当たってしまい、学校には大手企業から求人が来ない。救いはミサワホームが芸術系専攻の学生の採用に重点を置いたため、求人が来たことである。それに応募し、受かって入社した。

 

「インテリアデザインを専攻していたので商品開発や意匠設計、そういう部署に行くつもりでいるじゃないですか。そうしたら全然違って、いきなり、当時グループ会社だったイマジニアというゲームメーカーへ出向。3Dの時代だから、そういうことができるデザイナーが必要ということで行ったら、ゲームしかない。『インテリアデザインは忘れてくれ』と出向先でも言われまして。それが、最初の転機ですね」

 

 ゲーム会社といっても、海外のいろいろなゲームの版権を取得して発売する仕事がメインで、そのディレクションをおこなった。皮肉なことに自分が志望したデザイナーやプログラマー、映像制作者たちと仕事をすることになった。住宅のデザインという狭い世界ではなく、いろいろな仕事の世界を見ることでそちらのほうが楽しいと思い始め、その後の人生の出発点となった。

 

「3年たったところでミサワホームに戻って来ないかと言われたのですが、ブランクがあるので断わりました。ゲーム会社には約6年間在籍し、同じようなコンテンツ業界に転職しました。ファミレスに占いやゲームができる端末を置くビジネスを始めたベンチャー企業です。すごくニッチなマーケットで、オーダーした食べ物が来るまでの間、楽しんでもらおうという考えがおもしろいと思って参画し、コンテンツを統括しました」

 

 しかし、先行投資に資金を使いすぎた。売り上げが伸び始めたときに倒産となった。筑波さんはその事業に対する思い入れと責任を感じ、会社に残って再生計画を作り、スポンサーを募った。そして、手を挙げた企業に、事業部に残った社員とともに移った。2005年のことで3社めの転職となったが、そこでは力を発揮することができなかった。

 

 その企業で上司だった役員が辞め、有名アーティストが経営する企業に移った。しばらくして声をかけられ、2008年に執行役員として入った。4社めの転職。そこでは3年間、ファンクラブの新たな仕組み作りやウェブ、グッズなどの制作、販売などをおこなった。

 

「38歳のときに先のことを考えて起業したいと思いました。そのとき、知人から『今いる周りの人たちとの関係を生かして、どんな商売ができるかを考えたほうがいい』と言われました。サラリーマン時代は転職するたびに、そこで築いた関係を捨ててしまうという感覚がありましたので、当時は目からうろこが落ちるアドバイスで、前の仕事の延長線上での起業を決意しました」

 

 一方で筑波さんは、起業をするからには人がやらないことをしなければ、という使命感に近いものも持っていた。それで、新奇なアプリの開発に資金を投入した。人のやらないことは儲からない、うまくいかないという面を併せ持つ。失敗を繰り返し、人にも騙された結果、ごく普通のノベルティグッズの卸販売に活路を見出した。

 

 グッズの制作や販売をしていた前職の関係者から、あるアーティストのグッズを作ってほしいという依頼があった。小ロットだったので、ノベルティグッズにプリントすることにした。それがきっかけとなった。

 

「販売促進のためのノベルティグッズは、人がやらないような商売ではなく昔からあるものですから需要もあります。こういうことをコツコツやっていくべきだなと思いました。300万円の仕事をするより、3万円の仕事を100件取るほうがどれだけ嬉しいことかという考えになりました。グッズは現在うちの売り上げのメインになっていますが、初期投資はいちばん少ないですね」

 

 ノベルティグッズ業界のアマゾンになるという大きな夢を持つ。しかし、この業界は競争が激しい。

 

「絵を描くのが好きで美大に入ったが、今はこれからの商売をどうするかの絵ばかり描いている。そっちの絵描きになってしまった」と苦笑する筑波さん。大作の完成を期待したい。
(週刊FLASH 2017年9月5日号)

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