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妻へのストレスで夫が帰宅恐怖、鬱状態に…『妻のトリセツ』黒川伊保子氏らが「妻源病」への対処法を伝授
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2023.09.30 06:00 最終更新日:2023.09.30 06:00
「『適当に、美味しそうなのを買ってきて』と、曖昧な指示で妻に買い物を頼まれることは、僕にとっては緊張感しかない恐怖のミッションです」
そう苦笑するのは、漫画家のニシムラマコジ氏(44)。小学生の子供2人と、2歳下の妻との日々を描いたWEB作品『おとーちゃんはへこたれまくり』の“恐妻家”エピソードは、世の夫たちの共感を呼んでいる。
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「そんなときの買い物は、今までの経験と知識をもとに、頭をフル回転させて妻が喜びそうな商品をチョイスするのですが、たいていは『今の気分じゃない』なんて言われて撃沈してしまうんです。神経をすり減らしますね」(ニシムラ氏)
今、ニシムラ氏の漫画のように、妻が原因でストレスを感じ、心身に不調をきたす夫が増えているという。くぼたクリニック松戸五香の窪田徹矢院長が語る。
「私の妻が缶詰バーを経営しているのですが、『奥さんと一緒にご飯を食べたくない』、『愚痴を聞くのが面倒くさい』などと言って、帰宅時間をずらしている男性客が増えているようです。かえってそのことが『また飲み歩いて』『自分ばかり、お金使って』などと、奥さんをイライラさせてしまう。真面目な人ほど悩みを抱え、『妻原病』というべき状態になってしまう傾向がありますね」
「妻源病」とは医学的な病名ではない。夫の言動や、夫の存在そのものに強いストレスを感じた妻に動悸、頭痛、不眠といった更年期のような症状が現われる「夫源病」の“男性版”だ。
「夫源病」は故・石蔵文信医師が命名し、かつて上沼恵美子(68)が長年連れ添った夫と別居した理由に挙げたことで、一般にもその名が知られるようになった。
「妻が怖いという夫が増えていますが、そもそも男性と女性の脳の仕組みが違うんです」
と話すのは、ベストセラー『妻のトリセツ』(講談社)などの著者で、脳科学・AI研究者の黒川伊保子氏だ。
「『女性脳』には、もともと異性を警戒するスイッチがあるのですが、生殖(恋愛・セックス)の間はそのスイッチが切れるんです。警戒機能が作動していないときは、男性の言動を『優しい』と感じていたのに、作動したとたん『なんて優柔不断なの?』となるわけです。一方の男性は、妻の“豹変”が理解不能で、恐怖を感じてしまうのです」
窪田医師が診断した事例を語る。
「鬱やめまい、頭痛のような症状が出ており、問診すると“奥さんといることでストレスを感じる”という方がいました。旦那さんが意気消沈し、やる気がない様子で受診されたご夫婦の場合は、まず男性更年期を疑いました。この方の場合、ED治療薬を処方したところ、後日、明るい表情でいらして、劇的によくなりました。EDが原因で、『妻源病』になっていたのかもしれません」
夫婦・家族問題コンサルタントの寺門美和子氏は、「男性からの相談案件が増えている」と話す。
「奥さんはご相談の際に、はっきりと『私、夫源病だと思うんです』とおっしゃいます。でも男性の場合、自覚はないことが多く、夫婦カウンセリングをしている間に、私が『妻源病』ではないかと気づくことがあります。実際に、もともと健康でバリバリ仕事をこなしている方なのに、妻の前だと声が出せなくなり、震えてしまう方がいました」
「妻源病」の男性側の特徴について、寺門氏が続ける。
「妻に責め立てられたり、ひどい言葉で罵られたりするうちに、すぐに謝ってしまうようになるんです。なかには妻を恐れて、クレジットカードで多額の買い物をされても問い質せない方もいます。こうなると、どんどん妻がモンスター化し、夫の心身は悪化してしまいます」
では、妻をモンスターにしないためにはどうすればいいのか。黒川氏が、理不尽な妻への対処法を説明する。
「『男性脳』は、どうしてもことの是非に白黒をつけたがりますが、とにかく妻が言ったことは“共感”で受け入れることです。すぐに反論したり、適当に謝って会話を終わらせたりしようとせず、まずは『いいね』『わかるよ』と返しましょう。奥さんに『ひどいと思わない?』と愚痴を聞かされて、『こいつ(妻)のほうが悪いよな』って思うことも多いじゃないですか(笑)。それでも、『そんなことがあったんだね』って、是非は保留して聞いてあげるんですよ。『女性脳』は共感型ですから、これで9割方ストレスは消えてしまいます」
妻は、「夫がわかってくれない」と感じたときに攻撃的になる。黒川氏が続ける。
「帰宅した夫が『階段の電気つけっぱなしだったぞ』のようにダメなことから話題にしたり、声をかけられるまで黙っていたりすることは、妻の“攻撃”の引き金になりかねません。今日の出来事や、ねぎらいの気持ちを自発的に口にすることで、夫は自分の身を守ることができるのです」
それでも心身の状態が改善しなければ、診察を受けるのも手段のひとつだ。
「『妻源病だから病院に行ってくる』とは言えないでしょうが(笑)、理由がわからないのに倦怠感や頭痛があるときは、とりあえず病院に行ったほうがいいと思います。自律神経の乱れや、男性更年期といった診断が下ることで、逆に気がラクになる方は多いですし、奥さんとの関係性が変わるきっかけになると思います」(窪田医師)
“恐妻家”漫画を描き続けてきた前出のニシムラ氏だが、意外にも夫婦関係は円満だという。その秘訣を聞いた。
「家事をやりすぎて怒られたときは衝撃を受けましたが、今では妻もその状況にすっかり慣れ、皿を洗う僕の近くで、延々とぼんやりスマホをいじったりしています……。夫婦円満に不可欠なのは、やっぱり『会話をたくさんすること』です。日ごろのさまざまな愚痴を聞いて、妻のストレスを軽くできるように努めることが、爆発を防ぐ最良の手だと思います。じつは、妻は僕の漫画を読んでいるはずなのに、ほとんど感想を言ってきません。妻は怒りを我慢できるタイプではないので(笑)、漫画も僕自身も、受け入れてくれているのだと思います」
“妻が怖い”という事実を恐れず、向き合うことから始まるのだ。
取材協力・吉澤恵理(医療ジャーナリスト)