ライフ・マネー
史上 “最怖” の厄災ゴジラ、襲来!!誕生から約70年ーー令和の日本を覆う社会不安が生んだ “祟り神” が上陸
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2023.11.09 06:00 最終更新日:2023.11.09 06:00
平成最後の国産実写ゴジラ映画となった『シン・ゴジラ』(2016年)から7年の月日を経て、ゴジラが復活。終戦直後の東京を舞台に、戦争ですべてを失った人たちを恐怖のどん底に陥れる。
なぜ、いまゴジラなのか? “令和ゴジラ” 生みの親・山崎貴監督が明かした。
「漠然とした恐怖や不安が集まって形をなしたものが “ゴジラ” 」
なぜいつもゴジラが日本を襲うのかーー。
11月3日に公開された映画『ゴジラ-1.0』で監督・脚本・VFXを担当した山崎貴氏は、いつもこう考えていた。
「でも自分たちで作ってみて、すごく腑に落ちたんです。ゴジラって “祟り神” だなと」
本作でゴジラは1940年代後半の戦後の日本に姿を現わす。
「初代ゴジラの誕生はビキニ環礁での米国の核実験が背景にあるんですが、その初代と同じく今作のゴジラも日本を襲います。これって映画『もののけ姫』(1997年)のオープニングによく似ているなと思って。別の場所で傷つけられたイノシシガミが、憎しみや恨みをほかの村にぶつけるじゃないですか。ゴジラが日本を襲うのは、西洋的なシナリオでは理不尽な筋書きだけど、日本では受け入れられる。もとから文化的な土壌があるのだと思います」
山崎監督はまた「ゴジラ映画は神事だ」と表現する。
「初代『ゴジラ』は原爆投下や第五福竜丸の事件から間もない時期に制作されました。
また、1971年の『ゴジラ対ヘドラ』は公害問題が深刻だった時期に、1984年の『ゴジラ』は東西冷戦中に公開されています。2016年の『シン・ゴジラ』は東日本大震災を背負っていますよね。つまり、日本に漠然とした不安や恐怖が集まると、形をなして襲ってくるのがゴジラなのかなと。日本では穢れを祓ったり、厄災を鎮めたりするために、神楽を奉納しますよね。制作中に、ゴジラ映画を作ることは神楽のような神事なのではと思ったんです。
後付けですが、本作の公開までにはコロナ禍、世界情勢を揺るがすような戦争が起きてしまいましたし」
映画『ALWAYS 続・三丁目の夕日』(2007年)のオープニングや、西武園ゆうえんちの「ゴジラ・ザ・ライド 大怪獣頂上決戦」でもゴジラを作ってきた山崎監督。神事ゆえに造形にもこだわった。
「今回映画の話をいただき、『究極のゴジラを作ろう』と思いました。『ライド』の造形をもとにして、変なところから手や牙が生えているゴジラも考えたんですが……やっぱり『ライド』をブラッシュアップして王道のゴジラを作ろう、となりました。
遠回りしましたが、究極のゴジラを再認識できたので、必要なプロセスだったと考えています。
ただ、ディテールは変えています。特に背ビレは放射熱線を吐くときに変化するんです。前段階の儀式として背ビレの変化を取り入れました。
戦後の荒廃した日本に、追い打ちをかける厄災として描かれたゴジラですが、彼もまた核兵器によって暴走してしまった被害者なのかもしれません」
かわいい系からワイルド系まで登場歴代「ゴジラ」集合!
<『ゴジラ』/1954年>
同年に起こった第五福竜丸の事件に大きな影響を受けている。ビキニ環礁の水爆実験ですみかを追われたゴジラは東京を破壊。表情からは感情を感じ取りづらく不気味だが、どこか愛嬌もある。身長は50m
<『ゴジラ対ヘドラ』/1971年>
二代目で身長は50m。当時日本で深刻な社会問題だった公害を受けて制作された。1955~1975年のゴジラが二代目と呼ばれるが、作品によって造形が異なる。目がクリッとしていて、表情は人間的でかわいらしい
<『ゴジラ』/1984年>
ゴジラ誕生30周年記念作品。ソ連とアメリカの冷戦時代に作られたこともあり、両国の対立も描かれている。三代目で身長は80m。目の形などから、人間的だがかなり怒りに満ちた表情が読み取れる
<『ゴジラVSメカゴジラ』/1993年>
20作めで、ゴジラ生誕40周年記念作品。メカゴジラは前々作『ゴジラVSキングギドラ』のメカキングギドラの部品を使用している。四代目で身長は100m。小顔で精悍な顔立ちをしているイケメン
<『ゴジラ2000ミレニアム』/1999年>
ゴジラミレニアムシリーズの第1作。作中には怪獣・オルガが登場する。五代目で身長は55m。背ビレはとげとげしい。ワニのような大きな口と、やんちゃで挑戦的な表情が特徴的だ
<『ゴジラ モスラ キングギドラ大怪獣総攻撃』/2001年>
ミレニアムシリーズだが、初代『ゴジラ』以外との繋がりはなく、造形も大きく異なる。六代目で身長は60m。白目しかないことが印象的で、突然襲ってきそうな獣性を前面に出した造形だ
<『ゴジラ FINAL WARS』/2004年>
ゴジラ生誕50周年作品。当時は最終作とされ、15体の怪獣が登場している。軽快なアクションシーンが特徴的。五代目と同じく爬虫類顔だが、目が赤くなり、顔立ちは精悍になった印象だ
<『シン・ゴジラ』/2016年>
12年ぶりの作品で、着ぐるみは使用されなかった。驚くべきスピードで変態を続けるという特徴がある。小顔だが、表情は初代に似て不気味。オオサンショウウオのような小さな目がかわいい
やまざきたかし
1964年生まれ。2000年、映画『ジュブナイル』で監督デビュー。2005年公開の映画『ALWAYS 三丁目の夕日』では、日本アカデミー賞12部門で最優秀賞を受賞。『永遠の0』(2013年)、『STAND BY MEドラえもん』(2014年)、『アルキメデスの大戦』(2019年)ほか数々の話題作を監督している
写真・木村哲夫(山崎監督)
※『ゴジラ−1.0』(全国東宝系にて公開中)(C)2023 TOHO CO., LTD.