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難病と闘った日々が導いてくれた「外国人実習生」の活用支援

ライフ・マネー 投稿日:2017.12.07 11:00FLASH編集部

難病と闘った日々が導いてくれた「外国人実習生」の活用支援

写真:AFLO

 

「子供のころに受けたいじめの経験が、自分の生き方に影響を与えている」と話すのは鳥居賢一さん(46)だ。鳥居さんは横浜の生まれだが、小学4年生のときに父親の実家がある岩手県の岩泉町に引っ越した。岩泉は本州でいちばん面積の広い町で、神秘的な美しさの龍泉洞が有名だ。

 

「引っ越したとき、方言による言葉の違いがあり、集団でのいじめに遭いました。負けず嫌いなので言い返す。するとよけいいじめられる。非常に辛い経験でした。だからこそ自分は人を幸せにする、笑顔にすることをしたいと思うようになりました」

 

 首都圏の大学を卒業して選んだのは、ファッション事業などを展開するAOKIホールディングス。経営理念に「ビジネスでもビジネス以外でも世の中の役に立つ」とあった。子供のころからの思いもあって、その言葉に共感して会社説明会に参加すると、どの企業より人事の人たちが輝いていた。それで就職を決めた。

 

「AOKIには約20年。ファッション事業と、子会社でカラオケ店などを展開しているヴァリックに各10年。職種は営業と人事・教育畑をやはり10年ずつ。

 

 挫折や辛い日々などもありましたが、たくさんの経験をさせていただいたことに感謝していますし、今の自分があるのは、この20年間の経験が大きい。少しでも恩返しをと20年は勤めようと決めて仕事に励んだ」

 

 鳥居さんはAOKI時代の30代前半、人生の大きな転機を迎えていた。病気だ。突然41~42度の高熱が出ると同時に、下半身を中心に潰瘍ができてそれがものすごく痛い。熱と痛さで一睡もできないような日が1週間ぐらい続いた。

 

 最初に行った病院では原因がわからず、2週間たって大学病院に救急搬送されて入院、検査。それで難病のベーチェット病だと判明した。原因が不明の病気で、日本人の発生率はおおよそ7000人に1人だ。失明の危険と一生治らない恐れがあった。

 

「社会復帰は難しいのではと思っていましたし、何もできないことが本当に無念でした。病院に2カ月半、自宅で1カ月半、約4カ月の闘病生活でした。

 

 ある日、先生が『奇跡です。もう大丈夫』。ただただ嬉しかったですね。そのときにこの命はいただいた命、一人でも多くの人を幸せにするために使おうと誓いました」

 

 43歳のときAOKIを辞め、昔の上司がいた人材派遣会社の海外事業部に入った。海外の人材関係の仕事を1年間やり、めどがついたところで、上司とともに人材派遣の関連会社を立ち上げた。

 

 そして2年たった2017年の4月、ひとつの事業を譲り受けて、(株)オリーヴを設立した。

 

「今のメインの仕事は、技能実習制度で来日する外国人を採用し、日本人の介護をおこなう人材サービス。特に勤勉なベトナム人実習生の活用支援です。

 

 ベトナムには、280ほどの日本語学校を兼ねた現地送り出し機関があり、たくさんオファーをいただきますが、うちは1社としか契約をしていません。

 

 外国人実習生、介護事業者様、施設を利用される高齢者の方々がそれぞれ幸せにならなければ、やってはいけないというのが私の理念。妥協はしたくない。契約できる会社があと数社あればいいのですが……」

 

 介護業界は、いずれスタッフの半分を外国人に頼ることになるといわれる。働き手の不足は深刻だ。しかし技能実習制度には、制度を悪用する人がいることも事実だ。

 

「貧しい暮らしから家族を救おうとする外国人と、その家族が幸せになる制度にしたい」

 

 また鳥居さんは先の話として、愛着のある岩泉町をはじめとする地方を活性化し、日本を元気にしたいと考えている。その基本は暮らしやすい環境を整えて、住民を増やすことにある。誓いを守るべく、鳥居さんは長い道のりの第一歩を踏み出した。
(週刊FLASH 2017年12月19日号)

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