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予防のカギは「“アホの坂田”歩き」肝臓、膵臓、心臓、筋肉に溜まる危険な“第3の脂肪”「下戸」「普通体型」の男性こそ要注意

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2024.08.03 06:00 最終更新日:2024.08.03 06:00

予防のカギは「“アホの坂田”歩き」肝臓、膵臓、心臓、筋肉に溜まる危険な“第3の脂肪”「下戸」「普通体型」の男性こそ要注意

故・坂田利夫さん(右)。秋津壽男医師(左)の提唱する「反対の手を後ろに引く」歩き方にそっくり!?

 

「すぐに検査に来てください」

 

 Webマンガ『沈黙の肝臓』の著者で、接客業の「すな」さん(48)。2018年、会社の定期健康診断を受けたあと、電話で病院に呼び出された。

 

「肝機能の数値が、肝硬変レベルまで悪化していたのです。医師には30代なかばから『脂肪肝だ』とは言われていて、ガンマGTPは3桁ありましたが、自覚症状はなく放置していました。その結果、その年の数値は729まで跳ね上がっていたんです」

 

 医師は、すなさんに即刻禁酒と、甘いものと揚げものを控えるよう申し渡した。

 

「当時の僕は166cm、85kg。たしかに体重は多めですが、手足が細く、見た目ではそこまで太っている自覚はなかったんです。さすがにマズいなと、その日から、毎日350ml缶で2本飲んでいた酒をやめ、大好きな肉を減らして納豆や野菜中心の生活に切り替え、ウオーキングも始めました」

 

 

 一方、174cm、65kgの標準体型で飲酒もしない本誌記者のA(55)も、医師から「肝臓のまわりに脂肪がべっとりとついています」と宣告されて以来、20年にわたって脂肪肝と闘っている。

 

「僕はお酒をいっさい飲まないですし、当時は週に1回、サッカーをしていました。両親も太ってはいないのですが……」

 

 だが、『本当に怖いのは、第三の脂肪』(幻冬舎)の著書がある秋津医院の秋津壽男(としお)院長は、こう警鐘を鳴らす。

 

「Aさんのような人が、いちばん困るんです。見るからに太っている方は本人に自覚がありますし、医師としても検査をすすめることができます。しかし、『やせの大食い』タイプの人は、“第3の脂肪”がたっぷりついていて、脳血管の病気で倒れてから、それが見つかることがあるのです」

 

 じつは、脂肪には3種類ある。つまんでわかる「皮下脂肪」、CT撮影でわかる腸まわりの「内臓脂肪」。そして、“第3の脂肪”である「異所性脂肪」だ。

 

「これは臓器に少しずつ溜まっていく脂肪で、肝臓のほか膵臓、心臓や筋肉にもつくのです」(秋津院長)

 

 わかりやすい例が、松阪牛の「霜降り」。肉の中に入った「サシ」がおいしさの秘密だが、これこそ、筋肉に入った異所性脂肪そのものだ。

 

「われわれ人間の体にとって、心臓や膵臓や肝臓によけいな脂肪が溜まると、そのぶん、大事な筋肉の組織が追いやられ、それぞれの臓器の力が落ちてしまいます。必要以上に臓器が大きくなることで、代謝に負担がかかるのです。また、大動脈の血管の壁に脂肪が溜まると、脳梗塞、心筋梗塞など血管の病気のリスクとなる動脈硬化になります。臓器脂肪が出始めた人は、血管の脂肪も増えていると考えていいでしょう」(秋津院長)

 

 異所性脂肪は酒の飲みすぎが原因となるケースが多いが、A記者のような例もある。

 

「『非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)』といって、お酒を飲まず、肥満ではない人が脂肪肝であることがあります。異所性脂肪で怖いのは、脂肪肝から肝硬変、肝臓がんへと進行すること。もうひとつは、心臓に脂肪が溜まることで、心筋の動きが落ち、心不全を起こすことです。また、膵臓に脂肪が溜まった場合、インスリンを作る働きが低下し、糖尿病の悪化が懸念されます」(秋津院長)

 

 秋津院長は、やはりA記者のような“隠れ肥満”の場合もあるので、定期検査を受けることが重要だと話す。

 

「自覚症状がないので、検査をするしかないんです。できれば腹部のCTやエコーを受けたり、血液検査で中性脂肪の値を調べたりしてください。検診の結果と見た目がアンバランスな人は、異所性脂肪のリスクが非常に高い。やせていても、動脈硬化のひどい人は意外といるのです」

 

 見えない、自覚症状がないからこそ怖い異所性脂肪。防ぐにはどうしたらいいのか。

 

「マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸の摂取を控え、オリーブオイルを使うようにしましょう。そして、やはり運動が大事です。サラリーマンの方は、通勤で歩いていることが多いので、おへそから下の筋肉はけっこう使っているんです。逆に、あまり使っていないのが上半身。若いころと体重が変わっていないといっても、お腹が出ていて上半身が貧弱だなという方は要注意です」(秋津院長)

 

 そんな人は、昔ついていた筋肉が、脂肪に取って代わられている可能性が高い。秋津院長がすすめるのが、独自の大胸筋のトレーニングだ。

 

「“アホの坂田”の愛称で親しまれた故・坂田利夫さんは、上半身を大きくひねりながら歩くでしょう。あそこまで極端である必要はないのですが(笑)、歩くときに『腕を振り上げる』のではなく、『反対の手を後ろに引く』イメージで、大胸筋を意識して歩くんです。すると、自然と胸が開き、肺に酸素を多く取り入れられますし、背中の僧帽筋についた脂肪を燃焼できます。背中や肘にも適切な負荷がかかり、肩こりに効果的です。私も実践していますが、うっすらと汗をかきますよ」

 

 先に紹介したA記者は、10年かけて筋トレに励み、一時は体脂肪を12%まで絞った。しかし、6月に受けた検査では、医師から「うっすらと脂肪肝になっている」と言われてしまったという。

 

「すな」さんは、病院に呼び出された直後から食生活と運動習慣を見直し、2週間でガンマGTPは206に回復。現在は2桁の正常値に戻った。

 

「当初は、健康診断の数値が回復すると安心してしまい、間食を再開することもありました。そんなときは、肝硬変の恐ろしさをネットで調べて誘惑に打ち勝ちました」

 

 2023年の正月、缶ビールに口をつけてしまったが、「もう自分には必要ないな」と痛感したという。そして、明るい口調でこう語ってくれた。

 

「脂肪燃焼のためにとウオーキングを始めましたが、その後、現在はロードバイクに乗るようになりました。今日も100km走ってきたんですよ。そして今度、初めてレースに出るんです」

 

 手遅れになる前に“第3の脂肪”を減らすことができれば、充実した毎日が待っている。

 

写真・福田ヨシツグ、伊ケ崎光雄

( 週刊FLASH 2024年8月13日号 )

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