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100種類以上の仕事を経験して巡り合った天職は子供の支援活動

ライフ・マネー 投稿日:2018.01.18 06:00FLASH編集部

100種類以上の仕事を経験して巡り合った天職は子供の支援活動

『写真:AFLO』

 

 子供たちの成長を促す支援。天職に出会うまでに従事した100種以上の仕事は、無駄ではなかった。

 

 顔や雰囲気がドラえもんに似ていることから、「ドラ」と親しみをこめて呼ばれている井上知彦さん(42)は、『仁義なき戦い』で有名な広島県呉市の出身である。現在は呉や広島市で、おもに子供の支援活動をおこなっている。ドラさんは、これまでの人生で2度の転機を経験した。

 

「最初の転機は31歳のとき。僕の肝臓を母ちゃんに生体肝移植した。それで180度人生観が変わった。世の中の役に立つ男になろうと決めて、とりあえず11年間勤めた佐川急便を辞めた。そのときある人から言われた。『ドラも頼まれた仕事は全部受けてやりゃええ。天職に出会うじゃろ。頼まれたら断わるな』。それを守って、ずっとやっていたら、便利屋みたいになった」

 

 便利屋を8年ほど続けた。初めの数年は頼まれたことはなんでもした。薬を受け取りに行くことや草むしり、墓掃除、田植え等々。それこそいろいろな依頼が来た。

 

 ところがプロではないので通常の料金は取れない。田植えなら1反の相場が5万円。しかしド素人なので3万円程度で受ける。すると1反ではなく10反だったりする。それを3万円のままでしたから、やればやるほど貧乏になった。便利屋としておこなった仕事は約2500件、110種類に及んだ。

 

「便利屋を続けていたら、それを見た経営者から、おもしろいのでうちの社員研修で話をしてくれと頼まれるようになった。それで若い子たちとつながり、悩みの相談を受けることが多くなった。相談に乗っていると、今の若い子たちの扱い方がわかってきた。そこで今度は『若者のトリセツ(取扱説明書)』ということで、企業の中間管理職を対象に研修をするようになった」

 

 そんな折、一人の社長から「ドラ、お前なんでそんなに若い子たちの気持ちがわかるんや?」。ドラさんが説明をすると、「それを今の若い父ちゃん、母ちゃんたちに教えてやらんといけんのじゃないか?」。放っておけば問題のある子が増えるばかりというのだ。

 

 独身で子供もいないので「子育てセミナーなんかしたことないけ」としばらく考えた。しかし誰も来なくてもいいからとセミナーを開いた。それが、今は県外からも依頼されるようになった。

 

「子供たちが抱えている問題はたくさんある。そのひとつは失敗体験が少なく、失敗に対する免疫がないこと。怒られたこともない。だから、外の世界に出て失敗して怒られたときのダメージは半端ではない。

 

 そういうことが経験できる場を僕らが作らんといけんよね、ということで、2年前に広島市に『ライフアドベンチャー』というコミュニティを作った。山登りとかアウトドア型の自然体験ができる場所みたいなもので、これが2度めの転機となった」

 

 笑えるぐらい過保護で育った子供たちになんでも体験させる。そして達成感や失敗を味わわせたりして、そのフォローをしながら自分で考える力を鍛え、自己肯定感を高める。

 

 それが評判になり、1年半前には障害のある子供たちが通う「放課後等デイサービス」から「うちの子供たちにも体験させたい」と相談を受けた。今は発達障害の子も一緒になり、さまざまな自然体験や運動などミッションに挑戦している。

 

「40歳から子供たちに関わりだした。30代の便利屋時代は子供たちに何かを伝えるための、自分のスキルを磨いた期間だと思っている。今の仕事は本当に天職。日々、子供たちの成長を見て楽しんでいる」

 

 ドラさんの2018年の目標は、日本中に輪を広げることだ。そしてその先に世界を見据える。

 

「世界には障害者に対する考えや環境が日本より進んでいる国が多い。それに日本のおもてなしを融合させれば、日本発の素晴らしいメソッドが出来る」

 

 ドラえもんが四次元ポケットからなんでも取り出すように、ドラさんの願いも実現するといい。

 

(週刊FLASH 2018年1月30日号)

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