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遺伝ガンは患者全体の5%「チェックリスト」で確認を!
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.01.22 16:00 最終更新日:2018.01.22 16:01
「国民の2人に1人がかかる」といわれるガン。生涯でなんらかのガンと診断される確率は男性で62%、女性で46%。まさに誰が罹ってもおかしくない国民病だ。
そんななか、2013年にアメリカで、大きなニュースが注目を集めた。女優のアンジェリーナ・ジョリーが、乳房の切除手術を受けたというのだ。
遺伝子検査で、乳ガンになる可能性が非常に高いという診断を受けての決断だった。彼女の母親や近親者らも、若くして乳ガン・卵巣ガンで亡くなっている。
「BRCA1/2という遺伝子が生まれつき変異している方は、6~8割が乳ガンになります。彼女の場合も、この遺伝子の変異が検査で認められました。今後、日本でも同様に、ガンになる前にリスクのある部位を取り除く、という選択を迫られるケースも出てくるでしょう」
そう語るのは、国立がん研究センター中央病院・遺伝子診療部門長の吉田輝彦医師。長年、ガンと遺伝について研究してきたスペシャリストだ。
吉田氏によれば、ガンとはそもそも「遺伝子の病気」なのだという。
「人間は生きている限り、細胞を分裂させていきます。細胞分裂の際、遺伝子を保持するDNAもコピーされていきますが、その際に遺伝子に傷がつくことで、ガン細胞となります。こうしてできたガン細胞が増殖し、周囲へ広がっていくのが、ガンです。よって、細胞分裂する回数が多い臓器のほうが、ガンになりやすいのです」
ガンになる要因は、大きく分けて3つある。「生活習慣・環境要因」「加齢」そして「遺伝」だ。生活習慣・環境要因には、食生活や運動不足、そしてそれが原因の肥満などのほか、感染症や職業、放射線などの影響も含まれる。
また日本では1981年以降、ずっと、死因のトップはガンとなっているが、その背景には平均寿命の延長、高齢化がある。つまり「加齢」によるガン患者が増えているのだ。
「残るは『遺伝』です。親から、ガンになる原因となる遺伝子変異を引き継いだ人のなかには、生活習慣や加齢などにあまり関係なく、ガンを発症する可能性が高くなる人がいます。
比率としては、ガン患者全体の約5%です。こうしたガンを『遺伝性腫瘍症候群』と呼び、代表的なものに『遺伝性乳がん・卵巣がん症候群』、そして『リンチ症候群』などがあります」
「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」は、女性だけでなく男性にも関係がある。親から遺伝子変異を受け継いだことで、男性でも前立腺ガンなど、ほかの部位のガンになるリスクが高まるからだ。乳ガンのような男性には比較的珍しいガンも、遺伝子変異を持たない場合に比べて発症するケースが多い。
「リンチ症候群」も、同様に遺伝子変異が原因のガンで、おもに大腸ガンという形で発症する。しかし胃ガンや子宮体ガン、脳の悪性腫瘍などが発生する場合もある。またこうした遺伝性腫瘍症候群では、異なる臓器に重複してガンが発生することもある。
「一般に、肺ガン、胃ガン、肝臓ガンなどは、遺伝よりも生活習慣や環境に影響を受けやすいと考えられていま す。しかし、どんなガンであっても遺伝的要因で発症する可能性はあるというわけです」
どんなガンにも遺伝の可能性があるーーそう考えると恐ろしいが、遺伝性腫瘍症候群には、家族の病歴などに特徴が現われやすいという。
「自身の家系に若年性のガンにかかった方、一人で複数のガンになった方、『希少ガン』と呼ばれる珍しいガンになった方などがいる場合、遺伝性のガンを疑ったほうがいいでしょう」
遺伝性腫瘍症候群が疑われる特徴について、チェックリストにまとめてみた。ひとつでも当てはまる人は注意が必要だ。
【「遺伝性腫瘍症候群の可能性を疑う特徴」チェックリスト】
●父方、または母方の血縁者のどちらかに集中して、同種類のガンが多発している。あるいは乳ガンと卵巣ガン、大腸ガンと子宮体ガンなど、特定の遺伝性腫瘍症候群において併発することが知られているガンが多発している。
●家系内に希少ガン(患者数が少なく、発生がまれとされるガン)が多発している人がいる。
●自分、あるいは自分の血縁者に、50歳未満の大腸ガン、40歳未満の乳ガンなど、若年でガンを発症している人がいる。
●自分、あるいは自分の血縁者に、多発ガン、重複ガン(※)が認められる人がいる。
●自分、あるいは自分の血縁者に、男性の乳ガンなど、通常、見られないガンの発症が認められる人がいる。
※多発ガン……同一の臓器に発生する複数の原発ガン。
※重複ガン……複数の異なる臓器に発生する原発ガン。
(原発ガンとは、転移ではなく最初からその臓器に発生したガンのこと)
(週刊FLASH 2017年12月26日号)