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29歳で起業失敗、出直しIT起業で現在の目標は売上10億円

ライフ・マネー 投稿日:2018.02.08 06:00FLASH編集部

29歳で起業失敗、出直しIT起業で現在の目標は売上10億円

『写真:アフロ』

 

 ITの風にうまく乗った。長かった不遇時代の経験を生かし、少数精鋭で利益の拡大を目指す。

 

 挫折の多い人生を語る佐藤浩一さん(48)の口調は軽妙で、ぼやき漫談を聞いているかのようにおもしろい。佐藤さんはIT企業の社長だが、大学に入る前は弁護士から政治家になるという「よくわからない野望」を持っていた。

 

「高校は中退。グレたわけじゃなく、一流大学へ行きたいのにこんなアホな高校にいられるかって、調子に乗って1年でやめちゃった。家で勉強して大検に合格して、結局入ったのは三流大学の法学部。

 

 高校じゃトップだったので、そのままいけば推薦でもっと有名な大学に入れたはずなのに、アホだった。起業したら大学なんてまったく関係ないけど、そのころは大学にこだわっていた」

 

 弁護士から政治家のコースは大学に入ってすぐやめた。まず、司法試験が無理だとわかった。こんなに難しいことで人生を棒に振りたくないと思った。
「最近は、何もできないくせに意識だけ高い奴が多いけど、自分もそれに近かった」

 

 卒業後はカー用品販売の大手に入社。ところが、大卒なのに店舗勤務。なんだよ! と思いながらもけっこう楽しく働いたが、このままでは、と異動願いを出した。

 

 受理されずもう辞めようと思ったころ、やっと本部へ異動。車のメンテナンス場所や店のレイアウト等々を作り、地方のフランチャイズ店のオーナーに提案する仕事。

 

 しかし、給料が安すぎて29歳のときに辞めた。そして、友人に誘われて広告代理店を立ち上げ、営業を始めた。

 

「一緒にやった奴は金持ちのボンボンだから平気なんだけど、仕事がすぐあるわけじゃないし、こっちは給料もらえないんで、生活できない。

 

 そんな状態が半年ぐらい続いたかな。仕方ないので会社から離れて、派遣でエクセルのデータ入力なんかの仕事をした」

 

■1日かけてやっていたデータ集計をプログラミングで解決

 

 佐藤さんは現在の会社を設立するまでの約5年間を派遣社員やフリーとなり、職場を転々として糊口を凌いだ。もともとコンピュータを部品から組み立てるぐらい好きだったが、仕事としてのITに興味があったわけではなく、IT企業からの就職の誘いも断わったほどだった。

 

「派遣先の企業でデータの集計をしているときに、毎日同じことをやっているのがアホらしくなって、自動的にできないかなと思って調べたら、プログラミングでできることがわかった。

 

 で、それまで1日かけてやっていた作業を、ボタンひとつでできるようにした。暇になっちゃって何か勉強をしようと思って本を見たら、データベースの技術者が稼げるとあった。

 

 これだと思い、資格を取ろうと考えて本屋に通い続けた。金がないので高価な資格本が買えない。本屋にある関連本を読みつくした。そのころってインターネットは今ほど充実していないし、情報収集がすごく大変だった。学んだのはオラクルのデータベース」

 

 資格を取り技術者らしくなってきたときに、小泉政権時代の政策で資本金1円で会社を設立できるようになった。2003年に資本金100万円で起業し、派遣先で知り合った友人と2人で始めた。

 

 3年めにシステム開発を含めた大きな仕事の依頼があり、3人の会社で年商が8000万円近くになった。開発はよかったのだが、保守が大変だとわかり、以後縮小へと舵を切った。

 

「現在はオラクルのデータベースを基本に、インフラ関係を中心とした仕事を請負でやっている。ITの世界はうちのような弱小の会社が、大手に逆に大きな仕事を発注することもできる。

 

 今後の目標は会社の売り上げを10億円にすること。それを多くの社員でやっても意味がないので、10人の社員でやりたい。1人1億円。それには営業の強化が鍵だ」

 

 佐藤さんの転機は起業に失敗し、生活苦から始めた派遣の仕事で目覚めたとき。苦労したことが今に生きていると言う。10人で10億円。IT業界の追い風に浮つくことなく、実質を重んじる佐藤さんらしいこだわりだ。

 

(週刊FLASH 2018年2月20日号)

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