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古い保険では戦えない! 50代の「がん保険」通院保障はある?支払い免除はある?専門家が人気9商品を串刺し診断

「治療をやめて、子供のランドセルや成人式の着物を用意して旅立つ方々がいる」
3月5日、医療費の患者負担に限度を設けた「高額療養費制度」の見直しをめぐり、参院予算委員会に出席した全国がん患者団体連合会の轟浩美理事は、石破茂首相にがん患者の現状を訴えた。
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結果、今年8月の自己負担上限額引き上げの実施は見送りとなり、今秋に再検討されることになった。これは対岸の火事ではない。なぜなら国立がん研究センターによると、男性のがんの罹患率は50代半ばから急上昇することがわかっているからだ。
早速、 “がん保険に強い” ファイナンシャル・プランナー5名に、前のめりで相談した。
「まずは落ち着いて、今加入している保険の保障内容と、年収により上限額が変わるので高額療養費の所得区分、勤務先に付加給付の有無を確認してください」と言うのは、がんサバイバーのFP・黒田尚子さんだ。
「一般の病気は、手術入院のころが負担額のピークになることが多いけれど、がんの場合は手術が入口です。加入している保険の内容が、今のがん治療に対応できているかが大事になってきます」と話した。
2年前に2つめのがんを手術したFPの辻本由香さんは、自身の経験からがん治療の現状を話した。
「今は、昔と比べて入院は数日、抗がん剤治療は通院、というパターンが増えてきています。私が2つめの手術をした際も、入院は4日間でした」
厚生労働省の調査でも、がん患者の平均入院日数は2002年の35.7日から2023年は14.4日と激減している。今のがん治療では、入院よりも通院の日数が多くなっているのだ。
「今やがん治療は、抗がん剤や放射線治療法など、外来でおこなわれるのが主流となっています。古いがん保険だと、通院保障がないタイプがほとんどです。最近のがん保険は、抗がん剤とか放射線などの治療に対して、月額5万〜20万円の治療給付金が受けられる特約を付加した商品が多く、見直しのポイントのひとつとなっています」(黒田さん)
だが、新たに加入・見直す場合、50代は保険料が高くなってしまう。スタートアップ企業の経営者としての顔も持つFPの工藤崇さんは「がんの罹患率が高くなってくる50代は、どうしても保険料が高くなります。すべての保障をつけるフルスペックよりも、必要な保障だけをつける自由設計型の保険を選ぶことで、保険料を安くできます」と話す。
つまり、自由設計で必要な保障だけをつけることで、コスパがいい「がん保険」を手に入れることができるのだ。
自由設計型で選ばれたのは、アフラック「ミライト」、メットライフ生命「ガードネクスト」、チューリッヒ生命「終身ガン治療保険プレミアムZ」、ネオファースト生命「ネオdeがんちりょう」の4商品。
『NEW よい保険・悪い保険2025年版』を執筆したFPの横川由理さんは「3月に発売された『ミライト』は、主契約の保障を絞り、多くを特約にした、自由度が非常に高い保険です。
『上皮内新生物』の診断給付金は、『悪性新生物』の10%が基本ですが、100%を選べるようになったことも大きいですね。他社と比べて保障範囲が広いことや相談サポートに力を入れているため割高感がありますが、必要な特約を吟味することで保険料を抑えられます」と推した。
辻本さんは、父親を肝臓がんで亡くした経験から、「『ガードネクスト』の重度ガン治療特約に注目しています。在宅医療も保障対象なのは心強いですね。がんが進行すると、やはり費用がかさみますから」とコメント。
さらに、「今の医療保険に上乗せする形で考えるなら、『終身ガン治療保険プレミアムZ』も選択肢に入ります。特約の種類が多く、自分に必要なものだけを選べるため、保険料もある程度抑えられます」と続けた。
主契約の自由度が高く、保険料の安さで選ばれたのは「ネオdeがんちりょう」。
「すでに加入している医療保険に合わせて足りない保障だけを入れることが魅力です。上皮内がんでも保障されるので人気の商品です」(工藤さん)
がん保険の特約のなかでも人気なのが、がんと診断されたときに給付金が出る「がん診断特約」だ。給付金が高額になると、そのぶん保険料も高くなる。そこで、黒田さん、辻本さん、大手生命保険会社に勤務経験があるFP・一色徹太さんが紹介したのが、FWD生命「がんベスト・ゴールド」。主契約を診断給付金に絞ることで保険料を安くしたものだ。がん診断時に一時金100万円を、支払事由に該当する限り、年1回だが何回でも受け取ることができる。
「がんは治療費だけでなく、通院費やウイッグなど、公的保険では補えない出費も多い病気です。病状が進むと体力や気力が低下し、手続きを誰かに頼めない場合、保険金の請求自体が負担になることもあります。その点、診断一時金は一度の手続きで受け取れるため、経済的・身体的負担の軽減に役立つ保障といえます」(辻本さん)
■がん保険の「待機期間」に注意
がん保険で気をつけなくてはいけないのが、多くの商品で90日間の「待機期間(保障されない期間)」が発生することだ。一色さんはここに注目し、SOMPOひまわり生命「健康をサポートするがん保険 勇気のお守り」も紹介した。
「業界で初めて、保障開始までの3カ月(待機期間)は保険料が発生しない仕組みを取り入れた商品です。
また、たばこを過去1年間吸っていない方や禁煙に成功した方は、保険料が割安になります」
黒田さんが「選択肢のひとつとして考えられる」と言うのが、SBI損保「がん保険」だ。
「がん治療は日進月歩で、将来どんな治療が主流になり、それがいくらかかるのかわかりません。その点で『がん保険』は、実額保障で自由診療も1000万円までカバーしてくれます。ネックは定期保険で、更新するごとに保険料が上がるということですね」
今回、紹介してもらったがん保険で異色なのが、還付金がある東京海上日動あんしん生命「がん診断保険R」だ。
「がん保険は、掛け捨てが多く基本的には保険料は返ってきませんが、『がん診断保険R』は保険料が返ってきます。50代前半で入った場合は、75歳まで返ってこないですが……」(工藤さん)
以上、さまざまながん保険を紹介してきたが、全FPががんになったとき「必要な特約」があると話した。
「『保険料免除特約』です。所定のがんになった場合には、保障は続くが、その後のがん保険の支払いが不要になるという特約です。
がんになってから保険料の負担はかなり大変ですし、一度がんになったら基本的にがん保険には入れません。免除特約は、保険料を上乗せする価値があります」(黒田さん)
もしものとき丸腰では戦えない。これを機に保険の見直し・加入を検討してみてはどうか。