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年間200億円の赤字も先行投資「AbemaTV」がテレビの常識を破る

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.02.15 16:00 最終更新日:2018.02.15 16:00

年間200億円の赤字も先行投資「AbemaTV」がテレビの常識を破る

『サイバーエージェント藤田晋社長』

 

ーー10年後はどうなっていますか?


 本誌の問いに、制作陣から「日本を代表するマスメディア」との声が上がる。

 

AbemaTV」をご存じだろうか。約25チャンネルを24時間無料放送するインターネットテレビ局だ。一部の番組は放送後も無料で視聴でき、PCからもスマホアプリからも視聴可能だ。

 

 元SMAPの香取慎吾、草彅剛、稲垣吾郎が出演した『72時間ホンネテレビ』が大きな話題を呼び、藤井聡太四段を見出した将棋特番『炎の七番勝負』、元ボクシング世界王者の亀田興毅・大毅、元横綱の朝青龍を看板にした『勝ったら1000万円』シリーズなど、大胆な企画で世間の度肝を抜き続けている。

 

 このサービスの仕掛人はサイバーエージェント藤田晋社長(44)。24歳で創業、アメーバの芸能人ブログなど、時代の潮流に乗ってさまざまなコンテンツを生み出してきた敏腕経営者だ。

 

 IT業界の「革命児」といわれた藤田氏が次に目をつけたのは動画事業。テレビ朝日と共同出資してAbemaTVを開局させたのは2016年4月だった。

 

「アメブロを国内最大規模のネットメディアに育てたメンバーが、未知の領域だったAbemaTVの幹部として再集結しました。人が集まるメディアを作れば最初は赤字でも収益は後からついてくるという確信があり、年間200億の赤字も先行投資ととらえています」

 

 サイバーエージェントの新入社員時代から大好きな藤田社長の下で働いていた藤井編成制作本部長(34)はこう語る。赤字を恐れぬこの藤田イズムがAbemaTVの原動力である。

 

■チャンネルの入れ替えが激しい「AmebaTV」

 

 入社直後は社長の運転手だった藤井編成制作本部長が言う。

 

「藤田がテレビ朝日さんの番組審議委員として参加していた。そこから、当社と新しい動画事業をやりませんか、 とお声がけしました。当社の社員はもともとエンタメ好きが多いので、モチベーション高くやれると思い、テレビというジャンルを選んだ次第です」

 

 現在約25あるチャンネルの編成も、開局以来柔軟に変化させている。

 

「チャンネルの入れ替えは激しい。開局から現在まで半分くらいが入れ替わっています。立ち上げのときは、自然科学や人体科学をテーマにしたチャンネルを作ろうとした案もあった。今考えるとやめて正解でした(笑)」

 

 チャンネルを新たに立ち上げるときは、実際にスマートフォンで番組の動画を視聴してみて、魅力的に感じるか確かめ、違和感があれば再考する。

 

「まずは人を多く集めて使ってもらえるメディアを作る、というアメブロの考え方で取り組んでいます」

 

■高純度のバラエティできわどいテーマに挑戦

 

 AbemaTV開局のためテレビ朝日から出向してきた宮本博行ゼネラルプロデューサー(38)は藤田社長についてこう語る。

 

「内容がよくないときには藤田社長に『とらえどころのない番組でしたね』と言われます(笑)。今までテレビビジネスをやったことがないのに核心を突く指摘をされる。現場感覚が強いんです。社長との雑談から生まれたような番組はとらえどころがあった」

 

 情報性や有益性まで欲張らず、笑いに集中する「純度の高い」バラエティを作りたいという。

 

「『地上波でできないことを』という逆張りではなく、ひとつに突き抜けておもしろいことをやろうというのがウチ。結果的に『「ブス」テレビ』のように地上波では難しいタイトルのものもあります。番組タイトルについては社長と相談し、こだわってつけています」

 

 AbemaTVが目下注力している企画のひとつが、1月スタートの新ドラマ『やれたかも委員会』だ。

 

「今、なりきりコントで話題のロバートの秋山さんが主役で、おもしろくなりそうですね。これも地上波では難しいタイトル。きわどいテーマはAbemaTVでは、いい意味で勝負の場なんです」

 

 では、勝負する相手は誰なのか。

 

「世の中のAbemaTV以外のおもしろいもの全部かな。『この番組観たさにAbemaTVを観る』という強い番組を作っていく必要がありますね。今はまだ1個のアプリですけど、もっとたくさんの人に観ていただきたい。

 

 地上波やBSとは敵同士ではなく、互いに補完し合えるような関係性を築いていきたいと考えています。そのための知名度を含め、まだまだ道半ば。試行錯誤しながら右肩上がりになってきたけど、ゴールは遠いです」

 

■担当業界を巻き込んでブームを狙う仕掛人

 

「社長の麻雀はここぞ、というときの大胆さは凄い。でも、足元を固めるときは手堅い。繊細だけど大胆。仕事も同じだと思います」

 

 麻雀、将棋チャンネルの担当プロデューサー塚本泰隆さん(30)さんは、もともとプロ雀士で、藤田社長の麻雀仲間だった。


「麻雀と将棋のチャンネルを立ち上げるとき、社長にスカウトされて入社しました。趣味系のチャンネルなので、どういうおもしろさがあるのかを伝えるための企画作りから毎回スタートします。将棋連盟とは密に連絡をとってキャスティングを吟味しています」

 

 じつは塚本さんは、2017年将棋界の話題を独り占めした藤井聡太四段をスターにした仕掛人だ。

 

「『炎の七番勝負』という企画は彼のデビュー前から動いていました。『14歳の中学生で最年少記録を更新してプロになった藤井くんという棋士がいるよ』と言われて、まだ一局も指さないうちからオリジナル企画を詰めていた。放送のタイミングが29連勝の最中になったのは偶然。神風が吹いた。運命でしたね」

 

 番組作りでは「わかりやすさ」を心がけている。

 

「たとえば、解説の方が『いま6対4で藤井くんのほうが優勢ですね』とおっしゃるのをテロップで出したりとか、工夫をしています」

 

 塚本さんは麻雀、将棋業界の将来にも目を向けている。

 

「番組制作を通じて、麻雀や将棋の業界と手を取り合って一緒にブームを起こしていきたいです」
(週刊FLASH 2018年1月30日号)

 

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