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なれなれしく異性を口説くのはもはや “犯罪” の時代…辛酸なめ子が知りたい「令和のマッチング事情」

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記事投稿日:2025.10.18 11:00 最終更新日:2025.10.18 11:00
出典元: SmartFLASH
著者: 『FLASH』編集部
なれなれしく異性を口説くのはもはや “犯罪” の時代…辛酸なめ子が知りたい「令和のマッチング事情」

写真AC

 

 ランチタイムのレストランで、初対面っぽい男女の会話が聞くとはなしに聞こえてきました。2人とも有能そうで、男性は中学受験塾やコンサルの会社を経て今は金融系の仕事をしていて、課長補佐から課長代理に昇進する見込みだそうです。

 

 女性は人事と総務と労務とシステムをひとりでやっていた経歴があり、早口で頭の回転が速そうでした。お互いの仕事について自己紹介がてら語り合っている様子から推測すると、マッチングアプリで知り合ったのでしょうか。お互い「ご苦労様」とねぎらい合って笑っていました。

 

 男性が「会社で部下をごはんとかに誘わないようにしてる。パワハラになっちゃうから……」ともらした言葉が印象的でした。昨今はコンプライアンスやハラスメント意識が高まり、仲良くなりたい人や気になる人を気軽に誘えなくなってしまっている、という現状があります。相手が不快に感じるとハラスメント認定されてしまいます。

 

 すこし前にも、海外のイベントで女性スタッフをスキンシップしながら口説いていた男性が、翌日その女性が警察に駆け込んだことで逮捕され、帰国できないまま判決を待っている、という恐ろしいニュースもありました。

 

 なれなれしく異性を口説く、という昭和の人が普通にやっていたことが、状況によっては今や犯罪と判定されかねない世の中。ナンパも「ストリートハラスメント」と呼ばれているようです。

 

出会いツールの栄枯盛衰

 

 異性を誘いにくい昨今、ニーズが高まっているのがマッチングアプリや相席ラウンジといった出会いの形態です。マッチングアプリ「Dine(ダイン)」を立ち上げた、株式会社Mrk & CoのCEO、上條景介さんに、昨今の出会いや恋愛事情についてお話を伺いました。

 

「出会いの、最短距離。」を掲げる第三世代の恋活・婚活マッチングアプリ「Dine(ダイン)」は、日程調整や飲食店の予約までアプリで完結できるのが特長です。誘っても良いし誘われても良い男女が集っているのでお互いに安心です。

 

 最近の出会いの傾向にはどんな変化があるのでしょうか。恋愛事情に精通している、笑顔がさわやかなCEO、上條さんに伺うと……

 

「5年、10年経つと恋愛の主要プレイヤーが入れ替わってくるので、ツールも変わってきてるな、という印象です。10年以上前だと、出会いの場は学校や職場、サークルなどが主流でした。今は職場で誘いにくくなっているというのもありますし、コロナ禍もあって、若い世代は合コンをしなくなっていますね」

 

 とのこと。若者は合コン離れしているそうですが、10代20代と合コンを経験してきた身としては淋しいものがあります。今、合コンがエモい、みたいになってリバイバルする可能性は……。

 

「ないですね。20代前半の人にアンケートをすると、合コンなんてやったことがない、という人が大半です。今の子たちがどうしているかというと、メインはマッチングアプリ。業界団体としても浸透するようがんばって、市民権を得てきた。マッチングアプリに比べると規模は小さいですが、相席ラウンジも出会いの機会として提供されてます」

 

 そういえば14、15年前には街コンブームというのもありましたが、今はほとんど見かけません。アプリが一番合理的ということになったのでしょうか。相席ラウンジも、街コンのあとに流行りましたが、女性は飲食代無料というのが逆に申し訳なくて利用できなかったです。

 

■合コンと一緒に失われたもの

 

「でも、合コンは楽しいじゃないですか。それがITの発展でより効率的になったのがアプリだと思っています。合コンは個人が開催するものであるがゆえに、2つのネガティブポイントがありました。

 

 1つは、相手を事前に選べない。幹事が友だちを連れてくるので、幹事が一番かわいい、みたいなこともありました。好みの人が来るかわからないのに2時間拘束されます。

 

 もう1つは、そもそも幹事をやるのがめちゃくちゃ面倒くさい。会場を探してセッティングして、人数を集めないといけない。文句も言われるし、バイト代をもらいたいくらいです。僕も20代前半は合コンしていましたが、持ち回りで幹事をするのが面倒でしたね」

 

 と、遠い目で当時を語る上條さん。たしかに幹事は、精算のときのポイントを全部自分のポイントカードに付与させてもらっても割が合わない労力です。

 

「この問題点を解決しながら、合コンを源流に発展したのがマッチングアプリと相席ラウンジです。マッチングアプリは事前に相手のことがわかるのが一番の強みで、合コンに比べて優位性があります。面倒くさいセッティング問題を解決したのが相席ラウンジで、店に行くだけで合コンが始まる。

 

 お店の人が職人技で、合いそうな2人組をアテンドしてくれます。この2大勢力が出てきたので合コンが廃れたんです」

 

 と、上條さんは分析。

 

 個人的に合コンがまだ捨てがたいのは、逆に誰が来るかわからないワクワク感や、失敗しても話のネタになるところだったりしますが、タイパを重視する若者はムダだと感じるのでしょうか。

 

 20歳前後での経験しかないですが、男性側の失礼な態度に怒った女友だちが割り箸を折ったり、東大を目指す男子校の男子が急にドリンクに醤油を注いでくる意味不明ないたずらをしかけてきたり、東大生だと言っていた人がじつは専門学校生だったり、ちょっとした事件がつきものでした。恋愛は芽生えませんでしたが、人間性を見極める訓練や人生経験にはなったと思います。

 

「マッチングアプリにも、詐欺に遭う可能性などデメリットもありますが、そこは各社で対策しています。ナンパだって同じことが言えるし、そもそも出会いにはリスクがあります。

 

 マッチングアプリも相席ラウンジも完璧ではないですが、個人に任せるよりは良いと思います。Dine(ダイン)でラインナップに入っているレストランは独自の審査を通っています。店員さんがしっかりチェックして、無理強いやセクハラのような行為がないように気をつけています」

 

 適度な距離感でお店の人が見守ってくれているのなら安心です。

 

■中高年向けアプリのリアル

 

 ところでマッチングアプリの懸念点の1つなのですが、知人の同世代の女性が中高年向けのマッチングアプリに登録したところ、いかにも介護してくれる女性を求めている60代70代の男性たちからたくさんオファーが来たそうです。

 

 彼らのプロフィールにはだいたい「家庭的な人」を求めていると書かれていて、家事や身の回りの世話をしてほしいという思惑が感じられたとか。そんな大人世代にとっても、マッチングアプリは希望や可能性があるのでしょうか。

 

「世代の問題はある程度あります。でも、マッチングアプリでは40代50代にも多大な選択肢があると思います。働き方も、昔は終身雇用が前提でしたが、今は40代50代で会社を辞めても転職できます。

 

 同様に、結婚しても今は約3割が離婚するので、40代50代の独身があふれかえっているんです。20代や30代と付き合うのは難しいですが、同世代だったらすぐ出会えますよ」

 

 それならわざわざ年齢層が高い人向けのアプリに登録して、介護要員候補にされる必要はなさそうです。

 

「今でももちろん年の差婚はありますが、選択肢が多くなった中、若者は年上の人よりも同世代の人からのお誘いを受ける傾向にあります。40代50代も、何十年か前は自分の周りのコミュニティやお見合いしか出会いの場がなかったのが、今は全国の人から選べる状況です」

 

 ちなみにマッチングアプリで初デートするときの会話はどんな内容が良いのでしょう?

 

「1個のことを深掘りしていくのが良いです。会話が下手な人にありがちな失敗が、『趣味はなんですか?』『何々です』『そうですか。休日は何してるんですか?』と、広く浅くまんべんなく展開してしまうことで、これって絶対会話が続かないんです。一問一答形式だと盛り上がらないですね。気になった1つのテーマに絞って深掘りしていくのがおすすめです」

 

 つい陰謀論や都市伝説を深掘りして、ロマンスが生まれる空気がなくなってしまいそうですが……。

 

 

 以上、辛酸なめ子氏の新刊『世界はハラスメントでできている 辛酸なめ子の「大人の処世術」』(光文社新書)をもとに再構成しました。上手な世わたり3歩手前。令和を生き延びるための処世エッセイ。

 

●『世界はハラスメントでできている』詳細はこちら

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