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AI時代に生き残るための「三つの能力」とは…人間だけが発揮できる「六つの力」の確保が重要

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記事投稿日:2025.10.18 16:00 最終更新日:2025.10.18 16:00
出典元: SmartFLASH
著者: 『FLASH』編集部
AI時代に生き残るための「三つの能力」とは…人間だけが発揮できる「六つの力」の確保が重要

写真AC

 

AI革命が急速に進むこれからの時代に、
AIに仕事を奪われないために、我々は、
どのような能力を身につけていくべきか。
また、政府や企業は、
どのような能力を身につけた人材を育成していくべきか。

 

この問いに対する答えは、明確である。

 

それは、AIが圧倒的に優れている
「論理的思考」と「知識の活用」の能力ではなく、
AIに比べて人間が優れている

 

「直観的判断」(Intuitive Decision)と
「智恵の活用」(Wisdom Management)

 

の能力を、身につけ、磨いていくことである。

 

ここで、「知識」(Knowledge)とは
「言葉で表せるもの」であり、
書物や文献から学ぶことのできるものであるが、
「智恵」(Wisdom)とは
「言葉で表せないもの」であり、
経験や体験からしか掴めないものである。

 

すなわち、この「智恵」とは、
科学哲学者のマイケル・ポランニーが、
著書『暗黙知の次元』で定義した
「暗黙知」(Tacit Knowing)のことでもあり、
AIに比べ、人間が圧倒的な強みを持っている。

 

これに加えて、「直観的判断」の能力もまた、
経験や体験を積むことによって身体的に掴むものであるため、
本来、人間の方が優れた能力を持っている。

 

■AIが発揮する「直観的判断力」

 

しかし、実は、AIは、
この能力の初歩的なものについては、
すでに、その一部を代替し始めている。

 

例えば、これまで、永年の経験を積み、道路事情に詳しい
熟練のタクシー運転手は、
「この時間帯は、この道路を走ると、客を掴まえやすい」
という直観を発揮していたが、
日本のタクシー会社では、
過去の道路情報や乗客情報のビッグデータを活用して、AIが判断し、
新人のタクシー運転手に、どこを走るべきかの指示を出し、
実際に売り上げを増やしている。

 

また、米国の警察では、AIが、
「この曜日には、どの地域で、どの時間帯に犯罪が発生しやすいか」
をビッグデータを用いて判断し、
警察官にパトロールの指示を出すことによって、
犯罪の検挙率や抑止率を高めている。
これも、かつては、熟練の警察官が直観的に判断していたものである。

 

このように、いまや、AIが代替する仕事は、
「簡単な知識労働」のレベルに止まらず、
直観的判断が求められる「高度な知識労働」の領域にまで
広がっていることは、知識労働者にとっては、
将来の大きな脅威である。

 

■AIでは代替できない「三つの能力」

 

では、これからの時代、
「AIによっても代替されない、人間だけが発揮できる能力」とは、
具体的に、どのような能力か。

 

筆者は、世界経済フォーラム(ダボス会議)の
Global Agenda Councilのメンバーを務めていたが、
この会合でも、この問題について、様々な議論がなされてきた。
そして、この議論を通じて、多くの専門家は、
次の「三つの能力」が、AIでは代替できない能力であるとの考えで、
一致している。

 

第一 ホスピタリティ
第二 マネジメント
第三 クリエイティビティ

 

しかし、

 

では、これら「三つの能力」が、さらに具体的に、
どのような能力によって支えられているか。
これら「三つの能力」を、どのように身につけ、磨いていくか。

 

については、あまり深く議論されていないので、
本書では、筆者の考えを、簡潔に述べておこう。

 

■「ホスピタリティ」の二つの力

 

まず、最初の「ホスピタリティ」については、
受付サービスや案内サービスなど、
「言語的コミュニケーション」に基づく定型的なサービスは、
AIが簡単に代替してしまう。
従って、人間は、もっと高度なホスピタリティの能力を
身につけなければならない。
そのためには、これからの時代、特に、次の「二つの力」が重要になる。

 

第一は、「非言語的コミュニケーション力」である。
すなわち、ビジネスの顧客や職場の同僚など、相手の無言の声に耳を傾け、
その気持ちを推察し、また、言葉を超えて、
こちらの温かい気持ちを伝える力を磨いていく必要がある。

 

第二は、「対人的深層共感力」である。
これは、相手の立場に立って物事を考え、感じ、共感する能力であるが、
非言語的コミュニケーション能力を最高度に発揮するために
最も大切な力である。
そして、言うまでもなく、この「非言語的コミュニケーション力」と
「対人的深層共感力」は、
AIでは決して代替できないものである。

 

■「マネジメント」の二つの力

 

次に、「マネジメント」については、
財務や資材や人材、プロジェクトなどのマネジメントの仕事は、
これから、AIが人間以上の能力を発揮して代替していく。
従って、人間は、AIでは代替できない高度なマネジメントの仕事に
向かう必要があるが、そのためには、
特に、次の「二つの力」が重要になる。

 

第一は、「成長マネジメント力」である。
これは、組織のマネジャーやリーダーとして、メンバーが能力を高め、
プロフェッショナルとして成長していくことを支える力であるが、
その力の基本となるのは「コーチング力」である。

 

第二は、「心理マネジメント力」である。
これは、組織のメンバーが、対人関係などで精神的な問題を抱え、
悩み、苦しむとき、そこから立ち直ることを支える力であるが、
その力の基本となるのは「カウンセリング力」である。

 

この「成長マネジメント力」と「心理マネジメント力」もまた、
AIでは決して代替できないものであり、いずれも、
これからの高度知識社会においては、組織のマネジャーやリーダーには、
極めて重要な力になっていく。

 

■「クリエイティビティ」の二つの力

 

最後の「クリエイティビティ」については、
「革新的な技術の発明」や「斬新なデザインの発案」などの天才的能力は、
AIでは決して代替できないものであるが、
一方、そうした能力は、誰もが発揮できるものではない。
では、AI時代に、誰もが発揮できる「クリエイティビティ」とは、何か。
それは、次の「二つの力」である。

 

第一は、「集合知マネジメント力」である。
これは、組織のメンバーが集まり、それぞれの知識と智恵を出し合い、
議論し、そこから新たな知識や智恵が「創発」(Emergence)してくる
プロセスを促す力である。
そして、この力を発揮するためには、
組織のメンバーがわくわくするような魅力的ビジョンを語る
「ビジョン・メッセージ力」と、
メンバーが小さなエゴを超えて、互いに協力し合える場を創る
「エゴ・マネジメント力」が求められる。

 

第二は、「組織内アイデア実現力」である。
これは、組織において、単に新たなアイデアを「発案」するだけでなく、
そのアイデアを周囲に魅力的に説明し、上司をうまく説得し、
組織を円滑に動かすことによって、そのアイデアを「実現」する力である。
実は、企業や組織において真に求められる「クリエイティビティ」とは、
単なる「新規アイデア発案力」ではなく、
これら「集合知マネジメント力」や「組織内アイデア実現力」であり、
この「二つの力」もまた、AIでは決して代替できないものである。

 

■人間だけが発揮できる「六つの力」

 

このように、これからの時代に、AIでは決して発揮できない能力、
人間だけが発揮できる高度な能力として、次の「六つの力」が挙げられる。

 

第一 非言語的コミュニケーション力
第二 対人的深層共感力
第三 成長マネジメント力
第四 心理マネジメント力
第五 集合知マネジメント力
第六 組織内アイデア実現力

 

従って、これからのAI革命の時代には、政府や企業は、
知識労働者の大量失業を防ぐために、国民や社員が、
こうした能力を身につけ、磨くことを支援する必要がある。
また、我々個人も、AIに仕事を奪われないために、
こうした能力を高めていくことが、極めて重要な条件になっていく。

 

 

 以上、田坂広志氏の新刊『[新版]未来を予見する「五つの法則」~世界はどこに向かうのか~』(光文社新書)をもとに再構成しました。パンデミック、AI、遺伝子工学、宗教、科学、アート、そして「不死」の未来を縦横に語ります。

 

●『[新版]未来を予見する「五つの法則」』詳細はこちら

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