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危ない「土砂災害特別警戒区域」は日本全国に36万カ所

ライフ・マネー 投稿日:2018.05.16 08:00FLASH編集部

危ない「土砂災害特別警戒区域」は日本全国に36万カ所

 

「明け方4時前だ。いきなり家がガタガタ揺れて、ゴーッというすごい音で目が覚めた。地鳴りのような轟音が3、4回。すぐ後にジャーッと水が流れるような音も聞こえて、慌てて外に出たんだ。暗闇から『山が崩れた』と叫び声が聞こえた。山が唸ったんだよ」

 

 4月に発生した、大分県中津市耶馬溪町の山崩れ。現場近くの住民(60代)は、すぐに警察や消防、市役所に連絡した。だが「警察が来ても、夜が明けるまで、まったく手がつけられなかった」と肩を落とす。

 

 土砂にのみ込まれたのは民家4棟。犠牲者は合計6名にのぼった。亡くなった江渕優さん(21)の高校の担任教師だった中野聡明さんは、こう嘆いた。

 

「先日、職員が江渕さんと会ったら、『おなかに赤ちゃんがいて、近く結婚します』と打ち明けてくれました。頑張り屋で、高校は1日も休みまなかった。明るい表情が忘れられません。地元に残って頑張ろうという思いが強い子です」

 

 山崩れが起きた耶馬溪町金吉は、中津市の市街から車で約30分の山間部。切り立つ山と川の間の、狭い平地に民家が点在しており、崩落現場に似た地形が続いている。現地に調査に入った鹿児島大学の下川悦郎名誉教授は、崩落の原因を次のようにみている。

 

「通常は表層の土砂が崩れるが、今回は20メートルの深さから崩れた。この地域は、火山の噴出物が固まって出来た地形で、固結度が弱い。また、豊富な地下水が地盤に滲み出ていた。何かの拍子で山に亀裂が出来て、一気に崩落した可能性が高い」

 

 じつは大分県は、2017年3月に一帯を「土砂災害特別警戒区域」に指定していた。行政のウェブサイトで公開して注意喚起を促していたというが、肝心の地元住民には周知されていなかった。

 

「(現場の)行広・梶ヶ原地区は、全部で23世帯。特別警戒区域になっているとは誰も知りませんでした。たとえ知っていても、すぐに引っ越せるわけでもありません」(別の地元住民)

 

 数日前から、石ころが転がり落ちていたのが目撃されていたが、避難に結びついてはいなかった。
 九州大学の善功企名誉教授は言う。

 

「落石や水の濁り、地割れや山が膨らむなど、山の変化を察知したらすぐに自治体に連絡して、避難してほしい」

 

 国が指定する「警戒区域」は全国約51万カ所、「特別警戒区域」は、全国で約36万カ所に上る。

 

(週刊FLASH 2018年5月1日号)

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