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死亡者数が増え続けるニッポン「火葬場」が足りなくなる!

ライフ・マネー 投稿日:2018.05.25 11:00FLASH編集部

死亡者数が増え続けるニッポン「火葬場」が足りなくなる!

大阪「リレーション」の安置室

 

 多死社会ーー。死亡する人が増え、人口が減少していく日本。年間死亡者数は増え続け、2040年にはいまより40万人増え、約168万人が死亡するといわれる。そうなると当然、足りなくなるのは火葬場の数である。

 

「当初の想定より亡くなる人が増えてくると、対応が間に合わない。特に首都圏は人口が集中しているので、何日も待つ状況になります」と、一般社団法人・火葬研会長の武田至氏は話す。  

 

 火葬場不足となれば、火葬を待つ遺体安置場所が必要となってくる。その需要に応えつつ、家族葬式場など、新たな葬儀のあり方を提案しているのが、遺体安置ホテルとしての機能も備える、大阪・中津の「リレーション」だ。同社の栗栖喜寛社長はこう話す。

 

「これまでは亡くなってから葬儀まで十分に考える余裕のないなか、業者にすすめられるがまま、お通夜から本葬まで流れ作業のように終わってしまうことが少なくありませんでした。

 

 はたしてご家族の方が、満足してお別れができていたのか。大事な方が亡くなられ、すぐに決断することのできない精神状態に置かれているなか、葬儀の規模などを、ゆっくり考える時間を持ってほしいと思ったのがきっかけです」

 

 安置ホテルだけの利用は、実際には少ないが、安置だけなら1泊3000円。故人と家族が離れて暮らしている場合 は、駆けつけるまでに数日かかる場合も少なくない。親族が集まるまで、同所の宿泊施設で待ち、遺体を安置するケースもあるという。

 

 同社で葬儀をおこなう場合は、遺族は何日泊まっても追加料金は発生しない。火葬のみの場合は18万5000円、告別式と火葬を1日でおこなう1日葬は30万円。利用者の7割は火葬のみのプランを選ぶという。

 

「安いからといって手を抜くことはなく、真摯にお見送りさせてもらっています。同じご家族に二度、三度と、利用してもらうことが増えてきました。

 

 今までブラックボックスだった業界がネットによって可視化され、ご遺族自らが、葬儀会社を選ぶ時代になったのだと思います」

 

 開業から6年。今後については「火葬場不足の問題は地域差があり、大阪ではまだ危機的状況ではありません。ただ、今後、新たに火葬場が建設されることは考えにくいので、死亡人口が増えていくのに従い、遺体の安置場所がさらに必要になっていくでしょう」と言う。

 

 火葬場不足については、ここ数年、人口が集中している都市で懸念されている。前出の武田氏も「数を増やそうとしても、財政面、土地の問題、近隣住民の反対などから、火葬場を増やすのは難しいのが現状です」と話す。

 

 神奈川県横浜市も火葬場不足を抱えている。全国の政令指定都市のなかで、2番めに火葬炉が少ない。市は市東部の鶴見区大黒町に斎場を整備する予定。2025年度の供用開始を目指す。

 

 そんな横浜市の玄関口・新横浜駅から5分の立地にあるのが「ラステル新横浜」。遺体を安置する面会室があるのが特徴だ。

 

 ラステル事業部長の横田直彦氏は「数年前から火葬場がこんで何日も待つようになり、自宅にご遺体を安置できないご家族は『どんなふうに安置されているのだろう』と不安な思いをされていた。そんな思いを解消できればと、面会室を用意しました」。

 

 2室ある面会室の裏側が20体を安置できる大きな霊安室になっており、面会を希望すると棺が出てくる仕組みだ。部屋の準備が整うと灯りがつき、部屋の扉が開いて面会ができる。7部屋ある個室面会室は貸し切りなので、棺は部屋に安置されたままになる。

 

「お亡くなりになった直後は離れがたいお気持ちもありますし、遠方からご親戚が集まる場合は、個室のほうが時間を気にせず、面会ができます。

 

 亡くなった直後は個室で、落ち着かれたら面会室へ移していただく。あとで振り返って後悔しないように、最後のお別れをじっくり考えていただく時間も必要だと思います」

 

 安置料は1泊1万2000円(安置のみは非受付)。個室面会室はプラス1万円。面会時に料金を請求されることはなく、24時間、いつでも面会ができる。  

 

 もうひとつ、特徴的なのが「リビング家族葬」。2LDKの間取りの部屋が2室あり、リビングで通夜、告別式をおこなう。一晩、寄り添って過ごすことができるので、時間を気にせず、家族、親戚でゆっくりと故人を偲ぶことができると好評で、月の半分は予約で埋まっているという。

 

 ラステルは通夜、告別式をおこなわない直葬、家族葬がメイン。直葬は29万円、家族葬は56万円となっている。 

 

「後悔しない、いいお別れがどれだけできるか。葬儀は規模の時代から、質の時代に変わってきていると思います」  

 

 多死社会だからこそ、最後の時間をどう過ごすかが重要なのだ。
(週刊FLASH 2018年5月1日号)

 

 

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