沖縄では、神が宿るとされているヤシ科の植物「クバ」。古くから民具や祭祀品などに用いられてきたそのクバを使い、オブジェやバッグなどを創作しているのが、バスケットアーティストの小川京子さんだ。
彼女のアトリエでは、「ミロのヴィーナス」にちなんで名づけられたという、ねこの「ミロ」が出迎えてくれる。
「2017年、友人が『子ねこが生まれたから引き取って』と、連れてきたのがきっかけです。ミロがやってくると、アトリエの隣で暮らす要介護の母が笑顔になりました。ミロもすぐにここでの生活に慣れました」(小川さん・以下同)
アトリエでは、小川さんは幼いミロを作業着の胸元に入れて育てた。作品や荷物などがたくさん置いてあり、ミロが動き回って壊したりするのを防ぐためだ。だが、じつはもうひとつ、抱っこして育てたのには理由があった。
「私だけでなく、誰にでも愛されるねこになってほしいと思って。お客さんにも『かわいいでしょう?』と、抱っこしてもらっていました。かわいさの押し売りですね(笑)。
おかげで、ミロは知らない人でも、服の中に入れられるとおとなしくしています。抱っこした方も、すごく喜んで帰っていきます」
小川さんは、ミロを抱っこしてくれた人たちを写真に収めており、その数、現在30以上。
「『ミロコレクション』って呼んでます。もっと写真がたまったら、ここで展示会でもしようかしら」
ひなまつりの日に1歳を迎えたミロは、やんちゃざかり。最近では抱っこしてもじっとしていないときもあり、アトリエ内を探検しながら元気に走り回って遊ぶ毎日だ。
しかし機敏に動き回っていたかと思えば、電池が切れたように、急にカゴの中で眠ってしまうことも。「そういう姿がまた愛おしいんですよね」と、小川さんは目を細める。
(週刊FLASH 2018年3月27日・4月3日合併号)