
手慣れた所作で犯人確保の動きを再現する“ラーメン刑事”こと小川泰平氏(写真・木村哲夫)
豊富な現場経験を武器に、様々な事件の背景や犯人像をわかりやすく伝えてくれる、警察OBの解説者・コメンテーターたち。犯罪ジャーナリストとして活躍する小川泰平氏も、その一人だ。
愛媛県松山市出身の小川氏は、「警察官になったのは高校の恩師のひと言がきっかけだった」と振り返る。
「担任の先生が『柔道二段で勉強もある程度できるから、警察官に向いてるんじゃないか』と提案してくれたんです」
だが、地元の愛媛県警は狭き門で合格せず、警視庁と神奈川県警に合格した。
「東京は大きすぎて怖いと思った反面、海があり山があり温泉があり、私の故郷の松山に環境が近いと思って、神奈川県警にしたのです」
スタートは川崎市の川崎警察署。以降は神奈川を代表するような歓楽街を管轄する署に配属されていった。
「当時、川崎署の管轄には暴力団事務所が28カ所もありました。競輪に競馬、野球の川崎球場もあり、毎日のように事件が起こっていました。だから、柔道有段者である私が配属されたのでしょう」
■週8ラーメンで“任意聴取”
国際捜査課に配属され、韓国警察庁との共同捜査にも携わったことは、警察人生のハイライトのひとつだ。
「国際運転免許証やソウル大学の卒業証書など、韓国の偽造団の摘発に携わった。そのことをのちに日本の週刊誌記者に話したところ、本を出さないかと誘われたんです」
退職した1年後、実際に本を出版することになった。
「自分のやってきたことをまとめた『現場刑事の掟』(イースト・プレス)という本を書いたのです。当時は元警察官が本を出すことがほとんどなかった。それを読んだテレビ局のディレクターから電話があり、番組に出てほしいということになった。最初は『はなまるマーケット』(TBS系)に『夏休みの防犯対策』というテーマで出演しました」
以来、テレビで事件の解説をする元警察官として引っ張りだこに。多いときには1日で生放送7本に出演したこともあったというが、小川氏の「とにかく現場を大事にしたい」という気持ちは変わらない。
「北海道から沖縄まで、現場に出向きます。それが強みでしょうね。現場では所轄署の署長が会いたいと言ってくることもあります」
こうして全国を飛びまわる小川氏は、一方で「ラーメン刑事」の異名も持つ。警察手帳ならぬ、分厚い「ラーメン手帳」をいつでも持ち歩き、プライベートでも捜査さながらに綿密なメモを取っている。
「ラーメンが大好きで、今でも1週間に8杯ぐらい食べます。年間で400杯ぐらい。ただ美味しいかどうかだけでなく、たとえば豚骨に鶏ガラ、魚介の出汁、野菜が入って臭みが少ないスープに仕上がっているとか。オーナーの出身地、スープや麺へのこだわりなど“任意聴取”に協力いただくこともあります」
YouTubeも積極的に活用している小川氏のもとには全国からさまざまな相談が来るというが、「時間が許す限り、極力対応しています」。
事件あるところ、敏腕警察OBあり。
写真・木村哲夫
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