国際自動車工業連合会(OICA)の速報値では、2017年の世界の自動車(四輪車)販売台数は、約9680万台。2016年と比べて約3%、約290万台増加した。欧米や日本など、先進国での伸び率は鈍化し、各メーカーは次の時代に向けた模索を始めている。
世界の自動車メーカーが積極的に進めている提携も、そのひとつだ。日本だけでなく海外のメーカーも含めた最新の自動車業界の相関関係について、フリーランスライターの田畑修氏に解説してもらった。
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資本、技術、業務など、そのレベルはさまざまだが、最近は「大が小を呑み込む」という形より、お互いの欠点を補完し合う、というような提携が目立っている。
日本メーカーを見ると、トヨタ自動車は完全子会社化したダイハツ工業のほか、日野自動車とも深い資本関係にあった。しかし近年、グループを維持しながらスバルやマツダに出資し、業務提携を発表している。
また、2015年にフォルクスワーゲングループ(VW)との業務提携を解消したスズキは、他社との資本提携こそないが、2017年2月からトヨタと業務提携を進めている。
日産自動車はルノーとの相互出資で提携を保ちつつ、2016年に三菱自動車に出資。その結果、2017年は全体でトヨタグループを凌ぐ販売台数を実現した。現状ではホンダだけが唯一、国内のほかのメーカーとの提携や、完成車の供給はおこなっていない。
欧米の有力メーカーも含めると、構図はさらに複雑になる。世界販売台数トップであるVWをはじめ、プレミアムブランドの世界でつねにトップを争うダイムラー、BMWといったドイツ勢は、豊富な資金力と技術力で、グループ内のブランド力強化を図っている。
しかし、両社は配車サービスのウーバーに対抗するため、モビリティサービスで提携するなど、互いのメリットになるところでは手を結んでいるのだ。
また、フランスのPSAグループは2017年、GMからオペルを買収。2014年にはフィアットがクライスラーを子会社化。のちにフェラーリが独立したが、現在でもジープやアルファロメオなど、多くのブランドを保有している。
そして、なにより気になるのが新興国のメーカー、とくに中国とインドだ。
中国の浙江吉利控股集団(ジーリーホールディンググループ)はフォードからボルボを買収し、マレーシアのプロトン、その傘下のロータスへ出資している。さらに2018年、ダイムラーの筆頭株主になったことが明らかになった。
インドでは、3大財閥のひとつであるタタ・グループが、ジャガーランドローバーを買収。伝統ある英国プレミアムブランドをインド資本が手に入れたと話題になった。
これら新興国の出資を受けたメーカーは、財務の安定により本業に専念できるせいか、皮肉にもヒット作を生み出し、業績は順調だ。
20年ほど前は、自動車業界では「再編」という言葉が盛んに使われ、いくつかの巨大グループに集約されると予想されていた。
しかし、いまや大手メーカーも中堅メーカーも得意分野を生かして対等に渡り合い、必要なところでは手を結ぶといった、柔軟で多様性に富んだ関係構築が進んでいる。
既成概念にとらわれない決断の早さや、発想の柔軟性が生き残りには欠かせない。時代の変化をいち早くキャッチし、対応できる企業こそが、規模にかかわらず、今後さらに続くであろう「再編」をリードしていくことになる。
(週刊FLASH 2018年5月29日号)