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任天堂「Switch 2」の転売対策はなぜ成功したのか…アカウント連携による「所有者」の特定が奏功

ライフ・マネー 記事投稿日:2026.08.22 11:00 最終更新日:2026.08.22 11:00

任天堂「Switch 2」の転売対策はなぜ成功したのか…アカウント連携による「所有者」の特定が奏功

任天堂「Switch 2」(写真:Stanislav Kogiku/アフロ)

 

 転売対策が成功するとは、そもそも転売ヤーが商材として選定することが前提になります。転売ヤーが見向きもしない商品が転売をされなかったとして、それは転売対策の成果だとは言えないでしょう。

 

 ここで取り上げるのは、任天堂株式会社から2025年6月5日に発売された「Nintendo Switch 2」(以下、スイッチ2)の事例です。

 

 スイッチ2は任天堂が独自展開するゲーム機で、前身の本体であるスイッチのゲームも遊べるため、発売前から期待が高まっていました。

 

 しかし、スイッチはかつて発売日から入手困難で、コロナ禍のおうち時間と「あつまれ どうぶつの森」の発売により、高額転売が行われた事実もあります。子供へのクリスマスプレゼントにスイッチをお願いされても買えないということがニュースになったりしました。

 

 そのため、スイッチ2についても発売日が発表されてから、世の中には「転売ヤーに買われてどうせ買えない」といった声もありました。そのような状況の中、任天堂が行った転売対策がこれまでになく画期的でした。

 

 まず、販売形式ですが、日本国内と海外地域で販売するゲーム機の仕様を変えていました。任天堂のプレスリリースから、仕様や商品ラインナップに言及している箇所を見てみます。

 

《Nintendo Switch 2 は、日本、北米地域、欧州地域、豪州地域、アジア地域(中国を除く)での発売を予定しております。なお、日本以外の国と地域において販売する「Nintendo Switch 2」は、日本における「Nintendo Switch 2 多言語対応」と同じ仕様になります。

 

 国内の一般店頭・量販店・ECサイトでお買い求めいただける商品は、「Nintendo Switch 2 日本語・国内専用」(メーカー希望小売価格 税込49,980円)となります。

 

 なお、「Nintendo Switch 2 多言語対応」(メーカー希望小売価格 税込69,980円)につきましては、マイニンテンドーストア限定で販売いたします。

 

「Nintendo Switch 2 日本語・国内専用」は、本体の言語設定が日本語のみとなり、連携いただけるニンテンドーアカウントも、国/地域の設定を日本として作成したもののみになりますがお手にとっていただきやすい価格設定となっております。》
(任天堂「ニュースリリース 4月2日」より)

 

 このように、国内の需要に対応するためのゲーム機が海外へ転売されないような仕組みを構築したのです。これは近年の円安にも対応する、いい販売方法のように思えます。円安の状況では、日本のモノは安く買えますので、それを自国に持って帰り定価販売するだけでも利益が出ると考えられるからです。

 

 例えば、海外500ドル/日本5万円で販売されているものを、日本で購入する場合、1ドル150円で換算すると334ドルで購入できますので、その差、166ドルが利益となります。

 

 販売地域による仕様の差だけでなく、抽選方法にも転売対策が採られていました。まず、任天堂が行う抽選に参加するには、マイニンテンドーストアの会員であることが必須です。さらに、スイッチを遊んだことがあるユーザーに限定されていました。4月4日〜4月16日に行われた第1回目の抽選条件は以下の通りです。

 

・2025年2月28日時点で、Nintendo Switchソフトのプレイ時間が50時間以上であること ※体験版ソフト、無料ソフトは除く
・応募時点で「Nintendo Switch Online」に累積1年以上の加入期間があり、応募時にも加入していること
(マイニンテンドーストア「抽選販売について」より抜粋)

 

 以上の通り、実際にスイッチで遊んだことのあるユーザー、しかも短期的ではなくしっかりと遊んだことがあり、かつ、現在も遊んでいるユーザーに優先的に販売しようという姿勢が見受けられます。さらに、第5回目以降の抽選では次のような追加の条件が付されています。

 

・マイニンテンドーストアにおける第1回から第4回の抽選販売のいずれかに応募された履歴があり、一度も当選されていないこと
・本抽選販売への応募締め切り時点において、ニンテンドーアカウントにNintendo Switch 2 と連携した履歴がないこと
(マイニンテンドーストア「抽選販売について」より)

 

 1回目〜4回目の抽選までは、マイニンテンドーストアでの抽選に外れた人は自動的に次の抽選に応募されていました。しかしながら、第5回目の抽選においては、今まで継続的に応募をしたことに加え、自身のアカウントとスイッチ2の連携をした履歴のないことが追加の条件として付されています。

 

 スイッチ2を起動させると初回時に、アカウントの連携をするかどうかの確認画面が出ます。これは、スイッチ時代に購入したオンライン上のコンテンツがアカウントと紐づいて管理されているからであり、この連携を行えばスイッチ2でもスイッチのコンテンツを遊べます。

 

 当然ですが、そこでのアカウント連携は任天堂も把握しており、この連携を行った者=スイッチ2を保有している人との特定がなされます。この特定により、第5回目の応募ができないことの通知がメールで届く仕組みとなっており、転売対策の徹底具合が確認できました。

 

 これらの仕組みは労力とコストがかかっていると考えられるので、任天堂の転売対策の本気度がよくわかる事例です。

 

 また、このような任天堂の抽選を受けて、各種小売店や家電量販店の販売方法においても、単純な抽選ではなく各種の制限が設けられていました。組織的に転売活動を行わない限り、複数台の所持は難しい状況だったと思います。

 

 さて、このような対策を取られた結果、転売はなくなったのでしょうか。実は、そうではありませんでした。発売日にはフリマサイトに多くのスイッチ2が出品されていたのを確認できました。

 

 ただし、任天堂が行った転売対策は無意味だったとも思いません。高額で出品された商品をほとんどの人が購入しなかったのです。これは、任天堂の対策には、なるべく多くのユーザーにスイッチ2を届けるというメッセージが込められており、それをユーザー側がくみ取ったからだと筆者は考えています。

 

 転売対策がなされていることに加え、抽選の応募が当選するまで自動的に継続されるため、待っていればいつか購入できるだろうと多くのユーザーが考えていたのだと思います。結果として、転売ヤーから購入することを控え、転売ヤーにとって不人気商材となりました。

 

 このように転売対策を多くの人たちに知らせること、継続的に生産し続けることを徹底すれば転売は起きにくいといえます。供給されるということがわかっていれば、争って手に入れようとすることはないのです。

 

 しかしながら、これらの対策方法はコストがかかることも忘れてはいけません。任天堂は、「世の中の人々を笑顔にすること」「新しく面白い娯楽体験を提供すること」といった企業理念がありますので、これを実現するために転売対策を行ったと考えられます。

 

 現状では、数少ない成功した転売対策だといえます。

 

 

 以上、生島和樹氏の近刊『転売ヤーの会計学 儲からないのは理由がある』(光文社新書)をもとに再構成しました。ガンプラ、ポケカ、ゲームソフトやライブチケットなどの実例をもとに、転売の利益構造を会計学の視点で分析します。

 

■『転売ヤーの会計学』詳細はこちら

出典元: SmartFLASH

著者: 『FLASH』編集部

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