では実際、糖質制限はどのように役立っているのだろうか。医療の現場では、すでに有効な治療方法として活用されていた。
「糖尿病と、合併症のせいで要透析になる患者さんは、年々増え続けています。治療方針が正しい方向に進化しているのであれば、患者さんは減るはずですよね。
いままでの治療では糖尿病がよくならなかった人も、私が糖質制限を指導すると、すぐに改善します。糖尿病治療ではカロリーと脂質を抑えた食事をガイドラインにしていますが、これが間違いなのです」(宗田先生)
糖尿病に並んで糖質制限を取り入れているのが、ガンの治療である。
「私がふだん対面するのは、ステージIVのガン患者さん。実際におこなっている食事療法は『スーパーケトジェニック』といい、糖質を95%制限します。糖質はガンの栄養素ですから、断つことでガンの縮小と消滅を狙うのです。
この治療法は、私が治療をしたステージIVの方の83%に効果がありました。ただ、ここまでの制限を一般の方が1年以上おこなうと、動脈硬化のリスクが高まるなどの影響が出ます。普通の方は糖質を1日130グラム程度に抑える『ロカボ』レベルで十分です」(古川先生)
なお2017年、食事の本を刊行して話題になったサッカーの長友佑都選手がおこなっているのは「ロカボ」のひとつ上のカテゴリー「セミケトジェニック」で、1日の糖質摂取量は80グラムまで。
「ガンなどの予防にかなり効果があり、継続しても問題ありません」(同前)
予防という観点からいえば、意外にも認知症対策に効果があるそうだ。
「ケトン体はすでにアルツハイマー病の治療にも使われ、効果があったという論文がいくつも発表されています。いま、糖質制限の認知症予防効果に注目が集まっていますよ」(宗田先生)
いくつもの分野の治療で、効果が実証されている糖質制限。「専門医のもとでの治療がうまくいかず “駆け込み寺” として相談に訪れる患者が、たくさんいます」と夏井先生は語る。
「糖尿病で『脚を切断するしかない』と言われた人、膝の火傷治療で『背中から皮膚を移植します』と言われた人が、ネットで検索して私のところに来ます。そして糖質制限をしたら……治るんです。
治療法を学会ガイドラインに頼るだけの専門医に、患者さんが通わなくなる時代が、もうすぐ来ると思いますよ。
最近、私のまわりでは、歯科、内科、精神科、整形外科といった分野で、柔軟な医師たちが、糖質制限を治療に取り入れて成果を挙げています」
ダイエット、病気の予防、治療、さらに代替療法まで。いいところだらけに思える糖質制限だが、実際に生活に取り入れるときは注意が必要だ。
「糖質の処理能力には個人差があります。また、ただ『ご飯を抜けばいい』と単純に考えている方が多いことが問題なのです。炭水化物を抜いたら、代わりにタンパク質やビタミン、ミネラル、食物繊維を摂ってください。
そしてなにより、糖質制限の専門書を一冊読んで勉強し、自分に合った糖質制限を知ることが大切です」(麻生先生)
印象だけで自分勝手におこなう “糖質抜き” は危険なのだ。
(週刊FLASH 2018年5月29日号)